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「全領域異常解決室」〜日本の神さまたちの…

 興味深かった。

 

「全領域異常解決室」 2024年10〜12月 フジテレビ水曜夜10時

脚本/黒岩勉 

出演/藤原竜也 広瀬アリス 福本莉子 迫田孝也 ユースケ・サンタマリア 成海璃子 他

 

 わぁ、なんというか、このドラマ、そういうドラマだったんだ、と半分ほどが過ぎてからようやく分かった。

 アメリカのドラマ「スーパーナチュラル」みたいにまともに超能力、超常現象の捜査と戦いなのか?と思って見始めたところ、超常現象に見えるけど実はしっかり根拠のある普通に解決できる事件という話なのか?と思い、次に、世には出せない奇っ怪で解決のつかない事件を隠す役目を持っているという「全領域異常解決室」という警察の部署だということなので、じゃあ「Xファイル」みたいな感じと思って見ればいいのか?とあれこれ感じつつ見続けた。

 ところがどっこい、なんと「全決」のメンバーは「神」なのでした。

 え?神…って?「スペック」みたいに超能力者というのならまだ分かるが、神とは。

 謎の死を遂げた人たちも自分たちも「神」です、という興玉雅(おきたまみやび/藤原竜也)のなんとも無感情な雰囲気の告白を聞いたとき、わ、なんだそれは、と自分のなかの「神」の概念をひねくり回してなんとか納得しようとする視聴者としての自分がいた。

 

 う〜ん、これはこれでよかったのだろうか。

 脚本が黒岩勉という、昨年ひどく感動した「ラストマン–全盲の捜査官–」(2023年TBS日曜劇場/福山雅治 大泉洋)を書いた人だし…。

 上に書いたとおり、超常現象に見間違うような特異な事件を解決していく、言ってみれば「ガリレオ」的なドラマなんだなと、私ははじめは理解していた。

「ヒルコ」という事件の声明を出してくる存在も、テロリストの位置づけなのか、と。

 

 興玉の「神さま」宣言以降、視聴者としての私は、いささか戸惑いながらの視聴となる。

 そして人間だと思っていた室長の天野小夢(広瀬アリス)が、「事戸を渡され」て神としての記憶を消されてしまった悲しい過去を持つ神、 天宇受売命(アメノウズメノミコト)だったことが判明してから、俄然、面白くなった。

 

 すなわち、この日本の神さまたちは、人間の姿を借りて日本の人々を見守っているらしい。彼らは、ず〜っと生きてきた。肉体を乗り換えて。

 ところが、神の仲間たちが次々と殺される事件(不審死事件)が発生。「全領域異常解決室」が内閣官房の命を受けて動き出す。

 どうやら、興玉たちを消そうと企んでいるのが「ヒルコ」らしい。

 

 興玉たちのグループは人間をあたたかく見守ってくれているが、クソ人間たちのクソな事件が多すぎる、と思ってしまうのも無理がないほど、クソなことは多い(現実世界でも)。ゆえに、警視庁捜査一課ヒルコ専従班の二宮のの子警部補(成海璃子)の正義感は理解できる。

 だが、この正義感が、最終話では徒となる。ヒルコ側の何かに乗っ取られてしまったように私には見えた。

 神々の世界の明と暗の戦い、なのだろうか。キリスト教で言えば、ミカエル対ルシフェル的な。

 

 日本の神さまはほんとうにいっぱいいて、それぞれがそれぞれに個性的な能力を持っている。

「全領域異常解決室」の面々も、個々の能力を発揮して協力し合って悪と立ち向かう。そういう設定のドラマや映画はいっぱいある。「アベンジャーズ」とか、古いところでは「サイボーグ009」とか。RPGゲームの世界もそうだ。

 私は思う。人間もこうあるべきだ、と。べき、というか、それが本来の姿ではないか、と。さすれば、人は争わないはずだ。彼らのように協力する。

 

 ちなみに「神さまカード」というオラクルカードがあるのだが、これが面白い。そしてこれ、けっこう当たるのである。いや、当たるというか、教えてくれる。カードを切っているとぽろっと一枚落ちてくる。怖いくらいにあまりにスルッとすり抜けてくるので、占い師の私でも最初は驚いたほどだった。

 

 ほんとうに日本の神さまは大勢いて、全部覚えるのは不可能だ。そのうえ、漢字とその読み方が特殊なので、日本史が不得意な私にはなおのこと、難しい。

 ゆえにこのドラマでも、欲を言えば、もう少し丁寧に神さまたちのことを描いてほしかった。そう思うのは私だけかもしれないが、上に書いた「これでよかったのだろうか」は、そういうことである。

 これ「神さま」宣言の前に、1〜3話くらいで脱落した視聴者もいるように私は感じている。

 意外性やミステリー要素を勘案すると、謎をほのめかして残していくのは優れた手法なのかもしれない。が、例えば、1話目の冒頭で、日本の神々について端的な解説や紹介を入れておくなどがあっても良かったのではと、私は思う。凡人発想だろうか。

 私としてはあの興玉の「神さま」宣言が、なんとなく唐突すぎて、ちょっと受け入れ難いのである。「神さま」を信じないとか、受けとめきれないとかではなく、ドラマのワンシーンとして。

 

 さて、主演の藤原竜也も広瀬アリスもたいへん良かった。

 私が注目したのは、豊玉姫花(豊玉毘売命/トヨタマビメノミコト)を演じた福本莉子だ。ちょうど一年前「ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ」(2023年フジテレビ)で、立葵査子を生き生きと演じていた。今後に期待!と思っていた。存在感があると思う。

 芹田正彦(猿田毘古神/サルタビコノカミ)を演じた迫田孝也、荒波警部役のユースケ・サンタマリアは、すでに貫禄である。

 

 最終話が、すっきりしない匂いを漂わせているので、シーズン2があるのだろうか。

「ラストマン」のシーズン2も期待しているのだが…。

 

 ちなみに「全領域異常解決室」とは、「2023年にアメリカの国防総省で実際につくられた組織」だそうです。

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