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「虎に翼」〜おもしろい!〜寅子の「はて?」は現在に通じる〜第1週

 これはおもしろい!!

 日本にもルース・ベイダー・ギンズバーグがいたんだ。

 

「虎に翼」NHK朝ドラ2024年前期

脚本/吉田恵里香

出演/伊藤沙莉 石田ゆり子 岡部たかし 土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス

          仲野太賀 松山ケンイチ 小林 薫 他

語り/尾野真千子

 

 いやぁ〜おもしろい!

 どんなもんかな、と第1話を観た。もう途端に面白かった。

 前の作品「ブギウギ」が面白くなかったので(ごめんなさい)、よけいに心が踊る。「らんまん」も最初から面白かったが、「虎に翼」はそれ以上かもしれない。もちろん単純には較べられない。「らんまん」の主人公は男性の研究者。「虎に翼」の主人公は女性弁護士(判事)。

 

第1週「女賢(さか)しくて牛売り損なう?」

女が利口なようすをしてでしゃばると、かえってその浅知恵を見すかされて物事をやりそこなうことのたとえ。(デジタル大辞泉

 

 猪爪寅子(いのつめともこ/伊藤沙莉)のモデルは、三淵嘉子(1914〜84)。日本初の女性弁護士のひとりで、戦後は裁判官になり、女性ではじめて裁判所長となる。

 

 猪爪寅子は、五黄の寅年に生まれたので「寅子」と書いて「ともこ」。「トラ」とか「トラちゃん」と呼ばれている。

 ちなみに「虎に翼」とは

ただでさえ強い力をもつ者にさらに強い力が加わることのたとえ(韓非子

(goo辞書)

 という意味。

 この言葉、恥ずかしながら初めて聞いたが、馴染の言い方だと「鬼に金棒」ということかな。

 

 女学校に通う寅子は、母(石田ゆり子)からお見合いをすすめられるが、3回つづけて断られる。それもそのはず、寅子には結婚する気はさらさらない。見合いの最中に居眠りをしたり、社会的な話題を主張したり……。

 寅子は、結婚することが女性の幸せだとはどうしても思えないのだ。

 男性のなかにいるとき、あれこれ世話をしている女の人たちが「スン」としているのが気に食わない寅子。私もなんとなく分かる。すなわち、我慢しているというのか、そうせざるを得ないからそうしているというのか…、言ってみれば男尊女卑。

 どうして女性ばかり我慢しなければならないのだろう、寅子の心の声は叫ぶ。

 ちなみに、寅子の心の声は、尾野真千子のナレーション。これがまたいい。ドラマの魅力をさらに増してくれる。

 

 第1週は、結婚と女性の幸せについての考察だ。

 ある日、猪爪家の書生で法学生の佐田優三(仲野太賀)(昼間は寅子の父親が務める銀行で働き、夜は大学に通っている、今で言うところの司法試験浪人)におべんとうを届けるために大学へ赴く寅子。教室の前に立つと、講義の声が聴こえてきた。

「それは婚姻状態にある女性が無能力者だからです」

「はて?」

 この「はて?」は、寅子が疑問を感じたときに発する言葉。これがまた、正鵠(せいこく)を射ており痛快だ。おそらく視聴者も「はて?」だろう。

「女性が無能力者ってどういうことだろう」

 そこへ遅れてやってきた穂高教授(小林薫)。これは怒られるやつだ、と萎縮していた寅子に穂高は話を続けさせる。

「女性が無能ということでしょうか?」

「そうではない、結婚した女性は準禁治産者と同じように、責任能力が制限されるということだ」

 穂高の代理で講義をしていた桂場裁判官(松山ケンイチ)が答える。

「財産の利用、負債、訴訟行為、贈与、相続、身体に規範を受くべき契約」これらのことを妻が行なう場合は夫の許可が必要である、ということだ、と。

 すっきりとしない様子の寅子に、座って講義を聞いていくよう促す穂高

 そして学生たちに言う。

「これが世の女性の反応だ。法律とは全ての国民の権利を保証すべきなのに、君たちはこれをどう捉える?」

<戦後、この民法は大きく改正されることになります(ナレーション)>。

 

 結婚に心躍らないこと、女が損なことなど、自分が漠然と嫌だと思っていたことにつながる理由があったのだ、と寅子は合点がいく。

 そして寅子は、穂高教授から明律大学女子部法科へ入学するよう誘われる。

 

 母(石田ゆり子)には内緒で、父(岡部たかし)の応援を得て、寅子は願書を出す。

 寅子の父は、なかなか進歩的な人だ。無理やり結婚なんかしなくてもいい、という考えを持っている。

 さて、母に願書のことがバレた。そのとき寅子が言った次のセリフが印象的だ。

先生は私の話を遮らなかった。それどころか、もっと話をしろ、話を続けろって。そんなふうに大人に言われたことなんて今までいちどもなかった。それだけですごく嬉しかった。

 話を聞いてくれる人の存在は大きい。人は話を途中で遮られることでストレスをためていくのだと思う。そしてみんな我慢している。この時代の女性は特にそうだったのだろう。

 話をすることは、その人の能力、才能を閉じ込めないことにもつながっていく、と私は思っている。黒柳徹子もそうだったのではないか。公立の小学校を追い出されて「トモエ学園」を訪れた徹子の話を、園長は延々と聞いてくれた。

 男尊女卑、家父長制の世の中にあっても、穂高のような考え方の男性は、かなり少数ではあったろうが、確かにいた。それは今も同じかもしれない。こういう人(人権意識がもともと備わっている人)っているんだよね、必ず。

 そして、穂高や寅子のような人物が表に出てくることで、時代は変わっていくのだろうと思う。

 

 どうしても結婚させたい母。なんとか説得しようとする母の言葉のなかに、

頭のいい女が確実に幸せになるためには、頭の悪い女の振りをするしかないの。

 とあった。これは…辛いし、やっぱりおかしい。

私には、お母さんが言う幸せも、地獄にしか思えない。

 と、寅子はきっぱりと言い放つ。

 

 見合いのための振り袖を買いに行くために母と待ち合わせた甘味処で、寅子は桂場とばったり会う。挨拶は次第に言い争いになる。そこへやってきた母が桂場に言い返す。

女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰?男たちでしょう。

無責任に娘の口を塞ごうとしないでください。

 母はひどく悔しがり、そして振り袖ではなく、六法全書を寅子に買う。

「本気で地獄を見る覚悟はあるの?」と問い掛け、母は寅子の大学進学を許す。

 

 画面にときどき出てくる、寂しそうだったり大変そうだったり、泣いたりしている女性たちは何なんだろう。なにか伏線的意味があるのか?女性蔑視の象徴?

「虎に翼」 ©2024kinirobotti