ねことんぼプロムナード

新しいルネサンスの小径

「同期のサクラ」第5話〜自分の価値に気づくこと〜

青春ドラマみたいだな、と回を重ねるごとに思えてきた。

が、清々しくてよい。

 

「同期のサクラ」日本テレビ水曜夜10時

主演/高畑充希 脚本/遊川和彦

 

今話の主人公は、木島葵(新田真剣佑)。

2013年。社長賞を最年少で受賞(ただし立候補制)。

だが、都市開発部のプロジェクトが国交省からの鶴の一声で凍結となり、それを境に葵は、自分の無能さを思い知らされる。葵の父親と兄は国交省の高級官僚。こういうときにこそ役に立つだろうということを期待してのコネ入社だった、と部長から言われてしまう。

ある日、酔った葵を送っていき、葵の家庭の事情を知るサクラ。せっかくのチャンスだからと、着工延期となっているサクラの故郷の島に架ける橋のプロジェクト再開を望む島民全員の書名嘆願書を手渡す。

葵も、サクラにならって都市開発部のプロジェクトの素晴らしさを主張するが、父親は全く聞く耳を持たない。

 

自分は偽物なんだと嘆く葵は、翌日、死のうとする。

彼を助けたサクラは、いつもの喫茶店に昼休み、仲間たちを呼びつける。

黙りこくっている葵。

サクラは葵に次のように伝える。

あんた黙ってたらなんの価値もないから。

別にいいじゃない。心も中身もないって言われたって。

嘘も方便って言うけどさ、周りのみんなのために一生懸命言い続けたら、どんなに嘘っぽくたって絶対相手の心に届くよ。自分のためだけじゃなくて、人を幸せにしたい、希望や勇気を与えたいと思ってたら、絶対いつか本当の言葉になるよ。

 そしてあらためてこう言う。

「子どもたちの未来のためだけじゃなく、橋がなかったせいで命を落とした人のためにも、そして島で暮らす人たちが毎日橋を眺めるたびに胸を熱くするような、そんな願いを込めてつくりました」

これは、新人研修でこの5人のチームで橋をつくったとき、葵がプレゼン用に考えた文言だった。

私はあのとき、自分が言いたかった言葉を全部言葉にしてくれたあなたに、心が震えるほど感動した。

あなたが何と言おうと、あの言葉は私にとってここに響いた。とっても価値ある言葉だから。

あなたには素晴らしい才能があるんだよ。元手もかからずに、たくさんの人を動かせる力がある。そんな言葉を失ってどうするの。

じいちゃんが言ってた。

勝ち負けなんかにこだわらずに、自分の価値を知るほうが大切だって。

人はときに、自分の価値ではなく、他人からどう見られるかに重きを置いて生きてしまっていることがある。そんなときには、自分の本当の価値を忘れがちだ。誰かに認められるためではなく、自分が本当に善いと思うこと、心地よいことを誰もが選択して行動していくことが、すなわち、ノンストレス社会のはじまりになるのではないだろうか。

 

以下は、遊川お得意の社会批評性を伴うナイスなセリフ。

葵が、官僚である父親と兄に向かって言う。

あなたたちはそれでも国のリーダーですか?自分の身を犠牲にしてでもみんなを幸せにするためにがんばるのがリーダーじゃないんですか?

みんなが抱えている難しい問題を解決するために、誰よりも考え、誰よりも悩むのがリーダーじゃないんですか?

結局あなたたちは、自分たちのいいようにするから黙ってろ、お前らはこっちの言うとおりにしてればいいんだって言ってるだけじゃないですか。(略)

俺なんか何もしてないけど、都市開発部の人たちは、このプロジェクトに誇りをもって真剣に取り組んできたんです。

(略)

あなたたちは、自分たちのことしか考えてないじゃないですか。だったら教えてもらえますか。

お二人とも、なんのために官僚になったんですか。高い給料もらって民間に威張れるからですか?定年がきたら、何度も天下りしてその度に莫大な退職金をもらうためですか?

この国に暮らす人たちを、少しでもいいから幸せにするためじゃないんですか?

女王の教室(脚本・遊川和彦)」のときは、国はこうだからという断定だった事柄を、息子の立場から問いかけている。

父と兄に認めてもらおうとばかりしてきた葵だったが、「これから困っている人がいたら助けられる人間になりたい、こんな自分にも価値があると言ってくれた同期たちのためにも」と涙ながらに叫び、宣言する。

 

父親の浮気に耐えかねて家を出て行った葵の母親は、作文がうまいと葵をほめてくれていたそうだ。

パワーのある言葉を紡ぎ出すことができる人なのだろう。

ただし「心無い」というのが欠点のようなので、うっかりするとそれはサイコパスかもしれず……。けれども、葵の場合は、サクラとの出会いが「心」を与えてくれたのではないか、と思いたい。

 

青春ドラマなら、ここでハッピーエンドな状況に展開するところかもしれないが、遊川ドラマではそうはいかない。結局このあと、葵は土木部へ異動、サクラは子会社へ出向させられる。現実だったら、もっとひどいことになっているかもしれない。そもそもあんな演説、誰も聞いてくれないだろう。

 

サクラは今回、夢がひとつ叶った。

見送る同期の仲間たちこう言う。

私には一生信じ合える仲間ができました。

でも、私にはまだ夢があります。

ふるさとの島に橋を架けることです。

私には夢があります。

一生信じ合える仲間とたくさんの人を幸せにする建物をつくることです。

それだけはどんなことがあっても諦めるつもりはありません。

じゃ、またいつか。

 「またあした」じゃないんだな。

 

次回のお悩みは、人事部の火野すみれ(相武紗季)か。

ひとりひとりの問題と向き合って本人に気づかせるパターンは、「派遣占い師アタル」のストーリー展開と同じだ。

 

第5話じいちゃんFAX名言

「“勝ち”より“価値”だ」

 

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「同期のサクラ」 @kinirobotti