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「グレイトギフト」「となりのナースエイド」〜医療もの2タイトル〜謎解きも楽しめる〜続きはあるのか?

 刑事ドラマではないけれど、謎解きも楽しめたエンタメドラマだった。

 

「グレイトギフト」テレビ朝日木曜夜9時 2024年1〜3月

脚本/黒岩勉

出演/反町隆史 波瑠 佐々木蔵之介 津田健次郎 筒井道隆 尾上松也 他

 

 脚本が黒岩勉。昨年(2023年)TBS日曜劇場で放送された「ラストマン―全盲の捜査官」の脚本を手掛けている作家だ。過去の作品をたどってみると、刑事ドラマなどミステリー、推理ものを得意としているようだ。

「ラストマン」つながりなのか、津田健次郎がここでも起用されている。余談になるが、津田は昨今、声優だけでなく、俳優としても映像の世界で大活躍だ。「ラストマン」の役柄が印象深かったので、ついつい注目するようになった。声が抜群にいい。ついでながら、ラストマン主演の福山雅治も良い声の持ち主だ。

 

 病理医として明鏡医科大学付属病院に勤務している藤巻(反町隆史)は、ある患者の不審死をきっかけに、未知の殺人球菌「ギフト」を発見する。痕跡が残らず、心不全という診断になる。

 そこから次々と患者や政治家などが死んでいく。

 犯人を突き止めようと、病理部の検査技師である久留米(波瑠)が藤巻に協力を申し出る。久留米はギフトを培養し、ドラマ後半では、ギフトのカウンター球菌(特効薬)の開発を密かに行う。

 ギフトを手に入れた心臓外科の教授・白鳥(佐々木蔵之介)が、大学内の権力争いにからんで、ギフトを使っていく。

 藤巻の妻(明日海りお)と捜査一課の刑事・神林(尾上松也)の娘は、重い心臓病で入院していた。主治医は白鳥。藤巻と神林は妻と娘を人質に取られる形で、白鳥の命令に従っていく。

 いつも冷静で淡々としている久留米も、藤巻とともに白鳥たちに接近していく。

 殺人をやめさせたい藤巻と久留米。地位のため、金儲けのためにギフトを使おうとする白鳥たちは、ギフトに取り憑かれていく。

 最初に病院内にギフトを持ち込んだのは誰だ?

 二転三転するなか、いよいよ正体を突きとめた藤巻と久留米。

 その真犯人を、実は私は、ドラマが3分の1ほど進んだ辺りで予想していた。その通りだった。やっぱり!やったぁ〜。

 理由はよく分からなかったが、真相が明かされると、あ、そういうこと、と納得した(ネタバレになるので書きません)。

 さらに、最終話で藤巻と久留米を助ける側に回った3人(白鳥に服従していた)も、そうするだけの理由が理にかなっており、腑に落ちる展開だった。すなわち、藤巻と久留米は決して誰も殺そうとしなかった、と。

 

 腰の低い病院事務長・本坊(筒井道隆)が、柔らかい口調でさらっと「〇〇を殺しましょう」と言うのが、このドラマのなかでいちばん恐ろしかった。

 藤巻は、日々顕微鏡ばかり見ており、人と目を合わさない、弱々しくうだつの上がらない人物。反町隆史はこのような演技もできるんだ、と新鮮だった。その藤巻が、ギフトと対決しながら、次第に力強くなっていくところも見どころだ。

 そもそもこのドラマはなんで観ようと思ったかというと、波瑠が出演しているからだ。私は波瑠ファン。こういった役どころもvery goodでした。

 

 最後、え?この人も?そしてこれは誰?という思わせぶりなシーンで終わっている。シーズン2があるかの?それともホラー映画によくあるただの余韻?

 

 

「となりのナースエイド」日本テレビ水曜夜10時 2024年1〜3月

脚本/オークラ 原作/知念実希人

出演/川栄李奈 高杉真宙 水野美紀 矢本悠馬 吉住

   古田新太 成海璃子 瀧本美織 小手伸也 

 

「ナースエイド」とは看護助手のことだ。ああ、あの人たちのことかなぁ、とかつて入院したときのことを思い浮かべた。当時は「ナースエイド」などと呼んでいる人は誰もいなかった。

「トラベルナース」とか「ナースエイド」とか、近頃は新しいネーミングや働き方がどんどん出てくるな。

 

 これも、なぜ見始めたかというと、川栄李奈高杉真宙が出演しているから。

 川栄は「カムカムエヴリバディ」からのファン。

 高杉は特別なファンというわけではないが、要所要所で良い演技をするし、なにより演技に対する、あるいは俳優としての心構えが潔い、と感じたことがあったので注目している。ここで演じる医師は、波瑠と共演した「わたしのお嫁くん(2023年フジテレビ)」での山本くんとはまったく違ったキャラクターで、しっかり別人に見えるところに高杉の演技力の高さがうかがえる。

 

 ほんわかした病院ヒューマンドラマかと思いきや、実はミステリー、謎解きドラマだった、という驚き。

 原作は、医師で小説家の知念実希人の小説。医師で小説を書いている人ってけっこういる。ネタに事欠かないのだろう。

 

 桜庭澪(川栄李奈)は、ナースエイドとして星嶺医科大学附属病院総合外科に配属される。実は桜庭は、優秀な外科医だったが、姉(成海璃子)の死をきっかけにPTSDを発症し手術ができなくなってしまい、総合外科の火神教授(古田新太)の誘いで、ナースエイドとして心のリハビリをすることとなった。

 竜崎大河(高杉真宙)は、天才外科医として名を馳せている。態度が冷たいので、意地が悪いかのように見えるが、その実は、患者を助けることと技術の腕前を上げることで頭がいっぱいのクソ真面目な医師。明晰な頭脳で、公平に出来事を観察している。

 その桜庭と竜崎が、桜庭の姉の死の真相にせまっていくことになる。

 病気を扱っているが、深刻でも感情的でもないドラマ。エンタメ性が強い。

 

 最後に、姉を殺した犯人が明かされるのではあるが、なんだかどうもしっくりこない。え?これで終わりなの?どんでん返しがあるんだよね?という疑問が渦巻く。

 私が推理していた犯人と違う、ということもある。いやいや、今でも私はそいつが犯人だと思っているのだが…。その上、あれ?あれはどうなったの?という事柄が残されていたりする。一応説明はあったけど…。

 加えて、最後の最後が「まだ解決してないよ」を匂わせる演出となっており、シーズン2がありそうな雰囲気を漂わせながら最終話が閉じる。

 

 小説を読んでいないので詳しいことは分からないのだが、ネット情報によると、小説でも明らかな解決には至っていないようだ。

 いや、そういう手法もある。ネイティブ・ケイパビリティ(不確かさのなかに留まる能力)。

 でも、なんだか妙にすっきりしない。映画などでも「まだ生き残ってました」的な終わり方をするホラー作品などもあるが、その場合、そこまで物語が一応の幕を下ろしているので、「The End」の感覚はとりあえず持つことができる。

 こういう例もある。アメリカのドラマ「クリミナル・マインド」でも、捜査官が車に乗り込んだら爆破して、というシーンでいきなり終わって次のシーズンへ、ということもある。が、それは次のシーズンがあると分かっているから、先が気になってももやもやはしない。

 う〜ん、何ですかね。まだ終わってないよねこのドラマ。シーズン2があるのか?

 

 それから、劇伴(劇中伴奏音楽)のなかに、綺麗な良いメロディのものが2〜3あった。ちょっとこうバロック風な。そのなかでひとつ、妙に気になる曲があった。

 その曲自体は明るくて可愛らしいのだが、その曲のイメージ通りのシーンで流れるのではなく、むしろ問題ありなシーンで流れるので、変な怖さを感じた。微妙な恐怖というか、ちょっと言語化するのが難しい独特の感覚。洗脳されそうな…。内臓にやんわり染み込むような…。そういう意味では、このドラマ自体が、不思議な雰囲気を持っていたように思う。川栄(桜庭)と高杉(竜崎)のキャラクターも同様だ。

 

〜〜〜〜〜

「グレイトギフト」も「となりのナースエイド」も、シーズン2ならいいけど「続きは映画で」だったらちょっとがっかり。

 以前「SP警視庁警備部警護課第四係(2007年フジテレビ)」というドラマが「続きは映画で」になって、せっかく面白いドラマだったのに、なんだか話の内容が分からなくなって、結局つまらなかったという感想を持ってしまったことがある。「続きは映画で」にアレルギーがある。

「ミステリと言う勿れ」のように、まったく違うエピソードが映画になるのであれば、まったく問題ないのですが。

「グレイトギフト」久留米と藤巻 ©2024kinirobotti