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テレビドラマ「シッコウ!!〜犬と私と執行官〜」〜こういう仕事があるんだぁ〜伊藤沙莉がひたすらvery good

 とても面白かった!

 

「シッコウ!!〜犬と私と執行官」テレビ朝日2023年7〜9月/火曜夜9時

脚本/大森美香

出演/伊藤沙莉 織田裕二

 

カバチタレ(2001フジテレビ/常盤貴子 深津絵里)」「あさが来た(2015NHK朝ドラ/波瑠)」などの脚本を手掛けている大森美香の作品ということで、期待して視聴。

 

 執行官の取り扱う仕事内容は厳しいものなのだが、全体としてみればちょっとゆるめの正義ドラマ。

 ドラマや映画で初めて知る、という世の中のことって意外とあるけど、これはまさにどんっぴしゃりだった。

「執行官」についてよく知っている、という人はあまり多くないだろうと思う。

 番組サイトによると執行官とは、

地方裁判所に所属する裁判所の職員であり、裁判で出された結論が実現されない場合に、それを強制的に執行する仕事。
家の明け渡しや、貴金属などの動産の差し押さえ、子の引き渡しなど、その仕事は多岐にわたる。

 ということだ。

 しかもドラマのなかで知ったのだが、彼らの報酬は出来高制。サボってはいられない。サボられても困るが、どうしても強制執行に成功しなければいけないって仕事なんだろうなぁ、と想像できる。債権者としては最後の手段だろうから、また裁判所としても、なんとか解決してもらわないと困る。

 執行官は執行補助者という人々とともに強制執行に向かう、というのも「へぇ」なのである。執行補助者には、運送業、鍵屋、立会人、などがいる。

 運送の人はその場で家具などを運び出す係、鍵屋は、対象者がいなかったり、いても扉を開けなかったりするとき、その家の鍵を道具を使って開ける係。最終話で驚いたのが、鍵屋を演じる六角精児がコンピューターを使ってオートロックを開けていた。そんなことできるんだぁ。

 世の中にほとんどその詳細、あるいは存在自体知られていない仕事を知ることができるドラマは、新しい学び、新発見があって興味深いし単純に楽しい。主人公・吉野ひかり(伊藤沙莉)が暮らすアパートの大家も言っていた。自分のアパートに執行官が来てはじめてこの仕事のことを知った、と。そうだよねぇ。

 

 吉野ひかりは、信用金庫を辞めて憧れだったペットの仕事についたが、その会社が強制執行にあって社長が夜逃げしてしまう。ひかりは保護動物カフェでほぼほぼボランティアのアルバイトに就く。

 ひかりが安いアパートを探していたとき、そのアパートで執行の調査をしていたのが執行官の小原(織田裕二)だった。

 小原は犬が苦手。動物を容易く手なづけてしまうひかりをみて、執行補助を依頼する。執行先には犬がいることが多いので。

 

 ひかりは最初、執行の仕事が残酷だと感じて小原に突っかかってしまう。無理やり退去させたり、無理やりお金を出させようとしたり、財産を差し押さえたり…。

 ひかりは、なんとか債務者に寄り添おうとする。

 そしていくつかの執行業務の補助をしながら、ひかりは、ペットの仕事ではなく、いつしか自分も執行官になりたいと思うようになる。

 

 当たり前だが、債務者には債務者の言い訳がある。身勝手な人、悪質な人もいる。

 このドラマには、人生の背景を通していくらか同情できる債務者たちが登場する。なんだったら、悪人から債務者を守ってあげることだってあった。もちろんお金を返さなかったり、家賃を支払わなかったりすることは悪いことなのだが。

 執行官とともに、人生の再建に向かって進んでいくことができれば一番良いのだろうな、と思った。そんなことを上手に促してくれるのが吉野ひかりだ。

 とはいえ、この仕事に同情は禁物。ときに冷徹にならなければ、裁判所が出した判決の内容を実現できない。

 

 最終話では「子どもの引き渡し執行」がテーマだった。最も難しい執行、だそうだ。だよね。離婚する夫婦にとって、どちらも自分の子どもを手元に置いておきたいと思うのはごく自然のこと。ゆえに、ときに判決を無視して子どもを連れ去ってしまったりする。なんとも悩ましい問題だ。

 親の離婚は悲しい出来事ではあるが、このドラマの最終話では、母親も父親もともに娘を愛しているようなので、救われる。ときどき、世間体なのかなんなのか愛してもいないのに手元に置いておきたいと言い張る親もいる。最悪なのは、両親とも引き取りを拒否する場合だろう。

 おとうさんとおかあさんは離婚したけど、そしてあなたを取り合っていろいろ揉めたけど、それは、あなたがおとうさんからもおかあさんからもすごく愛されている証拠なんだよ、とこの少女に言ってあげたい気持ちになった。

 

 伊藤沙莉は、「ミステリと言う勿れ」の風呂光刑事役もはまり役だったが、「シッコウ」の吉野ひかりも良い役をもらったと思う。

 2017年、朝ドラ「ひよっこ」で米屋の娘・安倍よね子(さおり)をコメディたっぷりに演じ切り、その実力を発揮して一躍輝きをみせた伊藤沙莉が、なんと2024年前期の朝ドラ「虎に翼」で主演するらしい。日本人初の女性弁護士のひとりで、のちに判事となる三淵嘉子(1914~84)がモデルだそうだ。これはたいへん楽しみである。

 

 このドラマのなかの織田裕二も好感がもてた。こちらもはまり役と言っても良いのではないだろうか。

 

 シーズン2を望む。

「シッコウ!!」吉野ひかり(伊藤沙莉)a la TsuTom ©2023kinirobotti