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「虎に翼」第2週〜裁判官の心証は世を変える力がある

第2週「女三人寄ればかしましい?」

《「女」の字を三つ合わせるとやかましい意の「姦」の字になるところから》女はおしゃべりで、三人集まるとやかましい。(デジタル大辞泉

 

「虎に翼」NHK朝ドラ2024年前期

脚本/吉田恵里香

出演/伊藤沙莉 石田ゆり子 岡部たかし 土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス

          仲野太賀 松山ケンイチ 小林 薫 他

語り/尾野真千子

 

 引き続き女性の権利を考察する。

 無事、明律大学女子部に入学した寅子(伊藤沙莉)。年齢も背景(境遇)も様々な女性たちが、夢を持って勉学に励む。男子学生は、女子部を魔女部などと呼んで幼稚に見下す。

 

 ちょっと余談になるが、今からすると、当時の校風のほうが自由だったようにも見える。男女格差など「不適切にもほどがある」的な問題は多数だが、年齢も背景も様々な人たちが通っている。特に年齢。日本の大学の場合、年齢の高い学生の姿は珍しい。昭和、平成、令和と大卒の女性はすっかり増えたが、大学に通う30代40代…の学生は、男女ともに寅子の時代よりも不自由になったのかもしれない。最近はリカレントなどと言って学び直しが推奨されてはいるが。

 

 寅子が親しくするようになった女性たちはそれぞれ個性的。なかでも山田よね(土居志央梨)は男装の麗人、そして常にピリピリとしている。

 そんな山田よねと丁々発止あり、よねが学校を飛び出していく。それを追う寅子。行き着いた先は東京地方裁判所だった。

 そこで裁判を傍聴することになる。

 原告・峰子は7年前に被告・東田と結婚。東田に日常的にひどい暴力を振るわれ、実家に逃げ帰った峰子は離婚裁判を起こした。裁判は勝訴したが、東田が控訴。その裁判とは別に、峰子は結婚のときに持参した品々の「物品返還請求」の訴えを起こした。東田は嫌がらせ的に絶対に返さないと言い張ってやまない。

 母から受け継いだ着物をどうしても取り返したい峰子。

 寅子は、傍聴席から峰子に向かって「がんばれ」と声をかける。

 よねは、着物なんて取り返せるわけがない、ときっぱりと言う。法に従えば、着物は夫のものだから。

「女は常に虐げられている。その怒りを忘れないために私はここに来ている」と、よねは裁判傍聴をする理由を寅子に話す。

 

 控訴されているので、離婚は成立していない。

民法第八百一條 夫ハ妻ノ財産ヲ管理ス」

 結婚したら妻は夫の管理下に置かれる。「今の日本では結婚するとはそういうことだ」と寅子に話す優三(仲野太賀)。

罠だよ。結婚って罠。結婚すると女は全部男に権利を奪われて、離婚も自由にできないって誰かに教えてもらった?教えてもらってないよね。

 居間にいる家族に向かって、寅子は鼻息荒く言い放つ。

 確かに、寅子が「罠」と言うのも無理はない、そんな民法だ。

 

 翌日、寅子は穂高教授(小林薫)にこの裁判について尋ねる。どうしても納得でない。どうしても取り返せないのか、と。

「法廷に正解というものはない」と教授。そして「きみたちならどう弁護するか、どう判決が出るか考えてみるのはどうだろうか」と提案する。

 家父長制のもとで、女性は社会的に不利、本当に本当に参政権からなにからあらゆる権利を認められていなかったんだな。でも、まさかここまでとは、知りませんでした。勉強不足です。いや、なんだったら、寅子が言うように、教えてもらっていなかった。歴史の授業か何かで知る機会があってもよかったのにと思う。

 

 先週も出てきた「無能力者」というのは、妻を保護する意味があるということもあるらしいのだが、穂高教授は、「しかしこれは、妻を一個の人格者として考えるならば恥ずかしい保護と言わねばならない」と本に書いているそうだ。

 でも、その恥ずかしい保護を受けなければ女には茨の道が待っているのだ、と涼子(桜井ユキ)は言う。

 この裁判について学び、議論した結果、原告敗訴という結論に至る学生たち。

 寅子は「法律とは自分でみつけるもの 自分なりの解釈を得ていくもの」という優三の言葉を思い出す。

 寅子は教授に促されて意見を言う。

民事訴訟法第百八十五條

裁判所ハ判決ヲ為ス二當リ、其の為シタル口頭辯論ノ全趣旨及び證據(しょうこ)調ノ結果ヲ斟酌シ、自由ナル心證(しんしょう)二依リ事實上ノ主張ヲ眞實ト認ムヘキカ否ヲ判斷ス

「法律や証拠だけではなく、社会、時代、人間を理解して、自由なる心證のもとに判決をくださなければならない」そういうことですよね、と寅子。

 そして寅子は、判決を見に行こう、と学生たちを促す。「裁判長の自由なる心證」に希望を託すしかない、と。

 教授とともに、裁判傍聴へ向かう学生たち。

 そして、裁判官は画期的な判決を下す。

「主文 被告は原告に対し 目録記載の物品を引き渡すべし」

 元夫の行動については、「権利の乱用、妻を苦しめる目的」と断じた。 

人間の権利は法で定められているがそれを乱用悪用することがあってはならない、新しい視点に立った見事な判決だったね。こういった小さな積み重ねが世の中を変えていくのではないかね。

 と、感想を述べる穂高教授に対して、よねは「甘すぎる、あの男は何も反省しない、また同じことをする」と言う。

 確かにそうかもしれない。だが、穂高の言うように、このような新しい小さな積み重ねがあちらこちらで起きていくことで、世の中は変わっていくのだろう、と私も思うし、それを期待するしかないし、そうしなれければならない。寅子たちが裁判官の心證に結果を委ねたように。一方で、裁判官の思想、信条によって判決が変わったりするのは、ときに危険なこともある。

 

「法律は悪い人を殴る武器だ」と、よねは言う。

「法律は弱い人を守るもの、盾とか傘とか温かい毛布とかというものだ」と、寅子は言う。

 

 峰子は、寅子の傍聴が心強かった、と礼を言い、まだまだ裁判は続くが最後まで戦う、と決意表明をして去って行った。

 

 心 証(しんしょう)

人の行動や言動が心に与える印象。

例文: 粗雑な言葉が心証を害した。


(法律) 審理において裁判官が抱く認識や確信。
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。(民事訴訟法第247条)

Wikipedia

 この法は昔も今も変わっていないのだな。 

 裁判官の判決というのは重大なものなのだな、とあらためて分かった。

「裁判官の心證(心証)」によって、出来事は解釈され、判断されていく。そしてそれは世の中を変える力となっていく。判事という仕事、三権(立法 行政 司法)分立の大切さが身にしみる。

 

 このドラマは、ちょうど現在の日本にマッチしているかもしれない。

 女性が無能力者だとか、女性の権限が制限されるとか、男性の許可が必要だとか、これらは、戦後に改正された民法だ。が、現在(2024年)取り沙汰されている「共同親権」という法案が、時代を逆行するかのような内容であることに驚く。

 

 X(旧Twitter)より

しお@sodium4月10日
共同親権とか夫婦別姓とか、避妊・中絶関係や、養育費とか全部そうなんだろうけれど、とにかく女を男から自立をさせたくない・切り離したくないんだろうなと思う。 
これら全部つながってて、女は男の支配下で男に管理されるべきという考え方が政府の根底にあるんだよね。…

 

スズメ応援団@Passerm0ntanus4月11日
知らない人多いけど

父親が認知届出すのに母親の同意は必要ない

妊娠知ってバックレた男が、数年後にちゃっかり認知届出して共同親権を主張されても通ってしまう可能性あり

しかも共同親権に養育費を支払わせる仕組みは存在しない

要するに孕ませたもん勝ち

 

ガイチ@gaitifuji4月9日
どこまでも男が透明化されるなと。逃げた男の責任が問われず、残された女性にその全てが追わされる。福祉が届くまえに警察が来てしまう。こうした日本社会のシステムを問題ではないのかね。構造の問題を個人の話に帰結させるな、としか言いようがない。それでは何にも変わらない。

 

野生のサツマイモ研究家@parfaitthestudy4月9日
産み捨てた女は逮捕するぞ、かんたんに離婚できないようにするぞ、離婚しても共同親権で逃がさないぞ…

中絶禁止が次にくるのではないかと、アメリカの地獄を見ながら思うとき

「妊娠すること」がこれほどのリスクになった世の中でどうしたら国民が増えるというんだろか

 

せやろがいおじさん@emorikousuke4月12日
結局、今対峙すべきは日本社会に巧妙に組み込まれ市井の人々の無意識に刷り込まれてる家父長制的なもので

今の自民党はまさに家父長制的な価値観を良しとして、逆行、もしくは維持している。裏金で作った組織票、宗教票で固めた数の力で。

この状況が続く限り、日本は家父長制から脱却できない。

「虎に翼」 ©2024kinirobotti