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2022年夏ドラマ(上)〜「競争の番人」「テッパチ」「家庭教師のトラコ」「石子と羽男」

2022年7月〜9月夏ドラマが始まった。

 私が視聴を続けているドラマは以下です。

 

「競争の番人」月曜夜9時フジテレビ

出演/杏 坂口健太郎 小池栄子 大倉孝二 加藤清史郎 寺島しのぶ

 公正取引委員会を舞台に、下請けいじめとも言える優越的地位の乱用など、企業の悪を調査し、あぶり出し、取り締まっていくコメディタッチの社会派ドラマ。元刑事の白熊楓(杏)からすれば、逮捕権を持たない公取はとてもひ弱に見え、またそれが焦れったさでもある。現実の私たちの社会でも、これは明らかにあちらでもこちらでも起きている理不尽な社会構造と人間の邪悪だ。

 ひとつの事件を3話に渡って解決に持っていくところが、ドラマの手法としては1話完結よりも見応えがある。

 白熊のバディである小勝負勉(坂口健太郎)は、20歳で司法試験に合格し、東大法学部を主席で卒業したというツワモノ。あえて公取に就職したのには理由がありそうだ。

 実は小勝負は、一度見た文面や光景を忘れないというスゴ技を持っている。これは、今期のドラマ「石子と羽男(金曜夜10時TBS)」の羽男(中村倫也)と同じ性質だ。羽男のほうは高卒だが、その特技があるので司法試験に合格している弁護士。こういったシンクロは同じ時期のドラマで意外と起きがち。

 大倉孝二の演技が面白いのは今にはじまったことではないが、加藤清史郎がしっかりと大人の俳優になっているのを確認できるのもまたよい。杏、小池栄子は安定の演技。

 全員適役だと思う。

 

「テッパチ」水曜夜10時フジテレビ

出演/町田啓太 佐野勇斗 北村一輝 白石麻衣

 フジテレビのサイトによると、一部と二部でキャストが多少入れ替わるようだ。

 陸上自衛隊を舞台にした青春ストーリー?

 ちょっと訳ありの青年たちを、3等陸佐で教官の八女(北村一輝)が街なかでスカウトしてきた。彼らを脱落者なしで育てあげようとしている。その自衛官候補生たちの「訳」が一話ごとに明かされ、そしてそれを乗り越えていく。

 とても残念なのは、候補生たちの訓練と生活がどのような順番で展開していくのかを、ストーリーとともに上手に見せてほしかった。これだと候補生たちの個人的な心情のほうばかりが目立っている。訓練というのはこんなふうにはじまって、こんなふうに進んで成長して、そして彼らはこんなふうに生活しているのかぁ、という知的好奇心を満たしてくれない。報道番組などで自衛隊候補生の密着取材がたまに放送されるのを見ることがあるが、かなり厳しい環境、規則、訓練だった。

 同じ自衛隊ものでは「空飛ぶ広報室」(2013年TBS/脚本 野木亜紀子新垣結衣 綾野剛)があった。これはけっこう面白かったと記憶している。こちらは新人の訓練ではなく、航空自衛隊員たちの姿とその広報部、テレビ報道、震災を絡めたドラマで、普段では知り得ないことも教えてくれていたように思う。

 加えてもうひとつ注文をつけさせていただくと、2等陸尉で教官の桜間冬美(白石麻衣)にどうも違和感を覚えてしまう。紅一点的な立ち位置になっている(主人公である国生宙(町田啓太)が一目惚れする相手なのだが、こういった恋愛表現必要かな)。この役に違和感なのか、俳優に違和感なのか。

 チープな物語展開と演出がいささか残念だが、最後まで視聴してみよう。

 第5話では、女性候補生・隊員たちに適用されるルールについて知ることができたのはよかった。妊娠出産子育てに関する環境は整っているようだ。

 第二部はどのような展開になるのかな。工藤阿須加も出演するようなので楽しみだ。

 

「家庭教師のトラコ」水曜夜10時日本テレビ

脚本/遊川和彦

出演/橋本愛 中村蒼 美村里江 板谷由夏 鈴木保奈美

家庭教師のトライ」をもじったタイトルなのだろう。

 遊川作品のファンなので、楽しみに視聴している。上の「テッパチ」と同時刻の放送なので、どちらかを録画で観ることになる。

 奇妙な家庭教師根津寅子(橋本愛)が、3家族とその子どもたちに関わって大切なことを教えていく(?)物語。

 同じ遊川作品の「女王の教室」「家政婦のミタ」的なのかな、とも思って視聴しているのだが……。遊川作品のファンとしては、ものすごくはまれるかといえば…そうでもない…というのが今のところの感想。

 今年(2022年冬ドラマ)1月から3月まで放送されていた「となりのチカラ」(テレビ朝日/主演 松本潤)があまりに良い作品だったので、ちょっと見劣りしているだけなのかもしれない。

 その都度伝えようとしていることは分かるのだが、なんとなく納得感が少ないというのか、共感要素に欠けるというのか、社会性もあるのだがしっくりこないとでもいうのか……。

 いずれにせよ、トラコは何やら目的があってやっていることらしいので、とにかく最後まで見届けようと思う。

 

「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」金曜夜10時TBS

出演/有村架純 中村倫也 さだまさし

 けっこう面白い。

 羽男こと羽根岡佳男(中村倫也)は高卒の弁護士。石子こと石田硝子(有村架純)は東大卒のパラリーガル。東大法学部を主席で卒業したがすでに4回も司法試験に落ちており、恐怖心から5回目は受験できずにいる。羽男は、見たものを写真を写すように記憶できる「フォトグラフィックメモリー」という特性を持っている。ゆえにそれだけで試験に合格できたんだ、と話す。

 上に書いた「競争の番人」の小勝負勉(坂口健太郎)を二分割したような二人だな。東大法学部を主席で卒業。見たものを正確に記憶できる能力。こんなふうにシンクロされると、両方視聴して楽しんでいる私としてはいささか物語が混乱する。

 それから、ドラマチックにする設定上致し方ないのかもしれないが、東大法学部主席卒業という背景に魅力を感じない。なぜなら、東大卒の官僚や政治屋たちが平気で嘘をついたり、公文書を改ざんしたりして国民を欺き、保身のことしか考えていない存在になっていることもあって、本当に優秀な人たちなんだろうかという疑問が脳裏を過るからだ。

 というか、すでに優越証明にはならなくなりつつあるのではないか。だったら、ドラマというのは言葉や習慣を含めた社会のあり方の最先端、あるいは牽引という側面を持っているのであれば、率先して価値的倫理的表現を刷新していくことは使命と言っても過言ではないのではないか。

 例えば「主人」という言い方をやめて「夫」とした坂元裕二の「カルテット(2017年TBS)」。相手の配偶者を呼ぶときに「夫さん」を使用。非常によかったと思う。私も倣わせてもらった。相手の夫を呼ぶときに「あなたの夫は」と言うと失礼な感じがしていたので「夫さん」はいいなと思った。慣れるまで時間がかかったが。

 例えば刑事ドラマ。どうして男ばっかりなのか。女がいても紅一点的扱いが多い。主要メンバー以外の背景的刑事たちのなかにも、女性を入れてほしい。海外の刑事ドラマを観たあとに日本の刑事ドラマを観ると愕然とするだけではなく、その光景に気味の悪さすら感じることがある。もちろんそれは警察に限っていない。会社も同様だ。

 話がすこし逸れてしまったが「石子と羽男」、社会性たっぷりで、なかなか見応えのあるドラマだ。コメディタッチなのも良い。

 石子の父親が営んでいる法律事務所に羽男がやってきたところからドラマは始まる。

 第1話ではパワハラが問題になっていた。AがBを告発し、BがC(上司)を告発し、そして羽男はその上司のCにさらに上層部を訴えることを進める。あなたも強いられていたのでしょう、と。私も常々、訴えの連鎖を起こしていけば真実(根元)に辿り着くと考えていたのでこの展開は爽快だった。

 羽男も育った環境(父は判事、姉は検事)からトラウマを抱えているようだし、石子も今後司法試験を受けるのか受けないのか、気になるところだ。二人は、自身の持っていないものを互いを学び合うことで弱点を克服していく、のかな?

 

「2022年夏ドラマ(下)」へ続く

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