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「虎に翼」第3週〜男装の麗人よねの背景と仲間への理解〜そして女性として

第3週「女は三界に家なし?」

《「三界」は仏語で、欲界・色界・無色界、すなわち全世界のこと》女は幼少のときは親に、嫁に行ってからは夫に、老いては子供に従うものだから、広い世界のどこにも身を落ち着ける場所がない。(デジタル大辞泉

 

「虎に翼」NHK朝ドラ2024年前期

脚本/吉田恵里香

出演/伊藤沙莉 石田ゆり子 岡部たかし 土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス

           仲野太賀 松山ケンイチ 小林 薫 他

語り/尾野真千子

 

 女子部の学生が減っている。退学する者も多く、加えて、新入生も減少している。

 女子部の宣伝のためも兼ねて、明律祭の催し物に女子部で法廷劇をすることとなった。婦人が法律に携わることの意味を伝えよう、と。

 実際の判例をもとに、台本は書かれた「毒饅頭殺人事件」。

 女給の甲子は、カフェの客で7歳下の医学生・乙蔵と恋に落ち、生活費は全て甲子が負担。乙蔵は結婚しようと言っていた。医者になった乙蔵は結婚の約束を破棄した。甲子は乙蔵宅に防虫剤入りの饅頭をそっと届ける。それを食べた一家のうち、祖父が死亡。

 この時代、甲子が訴訟を起こしたとしても婚姻予約不履行は認められない。

 

 法廷劇本番の最中、男子からの野次をきっかけに騒動が起きる。「だから女は」と言う男子学生の股間に、よねが蹴りを入れてしまう。その様子は取材に来ていた記者によって新聞の記事に。

「なぜ自分たちが罰せられるのか」と問いかける上級生の久保田(小林涼子)。

「これからは女らしく…」などと言う学長(うっかり口にしてしまう「女らしく」)

「自分だけを処分しくれ」と言うよね(土居志央梨)。

 そして腰を痛めたよねを、よねが住み込みで働くカフェへと送っていく寅子(伊藤沙莉)たち。

 そこで寅子たちは、よねの生い立ちを知ることになる。

 マスターが話して聞かせようとすると、

よねさんの話を、よねさんがいないところで、よねさんじゃない人から聞くのは違うと思うんです。

 と言って断る寅子。

 この寅子の反応は素晴らしい。確かにその通りだ。寅子の正義感、心の態度が滲み出ているセリフだと思う。

 そこへ、店の準備があるだろう、と現れたよねが、あれこれ詮索されるのは嫌だからと、自分の口で語りだす。

 

 自分は百姓の次女。朝早くからねえちゃんと二人で働き詰め。なんでもやった。

 ねえちゃんは15で売られ、東京で女郎に。このままだと自分も売られる。そこで女であることをやめる、と宣言するが、(もちろんそんなことは)認められない。

 そこで家を逃げ出し、このカフェでボーイとして受け入れてもらった。

 しばらくすると、ねえちゃんが置屋に騙されていたことが判明。体を売った金をずっとごまかされていた。取り戻す方法を調べた。人に話を聞き、本を読んだりしたが、ガキの付け焼き刃じゃどうにもならない。

 そんなとき、ひとりの弁護士が助けてあげようと近づいてきた。お金はいいからと(このときはっきりとは描かれていないがよねはこの弁護士に体を委ねたのかな)。弁護士は、金を取り戻してきてくれた。「法に勝る力なし」と。

「体を売る行為は、公序良俗に反する行為であり、それに関連する契約は全て無効とみなされるから、金銭請求などしても敗訴する場合が多い」

 本来なら泣き寝入りのところを、この弁護士は「法」の力で助けてくれた。

 けれどもそのことでねえちゃんは置屋を追い出され、終いには男をつくっていなくなった。

 葛藤していたよねは、「女子のために 法科の専門部」という新聞記事を偶然みつける。「なめ腐ったやつらを叩きのめす力が欲しい」。必死に勉強して、明律の女子部に入った。(取り戻した)ねぇちゃんの金で。

 

「あたしとあんたらは違う」

あたしにはお付きの子もいない。日傘や荷物を持たせたりしない。

おにぎりを人に施す余裕も、

働かなくても留学させてくれる家族もいない。

昼休みに泳いだり歌ったりもしない。

一日も大学も仕事も休まずに必死に食らいついてる。

 これは、上から涼子(桜井ユキ)、梅子(平岩紙)、香淑(ハ・ヨンス)、寅子への批判。

 

「お尋ねしたいのだけど」と寅子がよねに問い掛ける。

寅子 一日も大学を休んでいないと言っていたけど、お月のものが来たときはどうしてるの?頭やおなかは痛くならないの?

よね 別に。

寅子 そうなの?いいなぁ。私はお月のものがはじまると4日は寝込んでしまうの。はじまる前からもう体が重くて頭が痛くて。

 月経についての描写を出したのは、良い配慮ではないだろうか。生物学的には男性と女性は明らかに違う。男女平等といっても、なにもかも同じではない。互いを思いやりながら、いわゆる「ケアの倫理」を体現しつつ、男尊女卑ではない社会をつくりあげていく、それに尽きるように私は思う。

 残念ながら「男女平等」を盾に取って(言い掛かりの材料として)、無謀で乱暴で非道な言動をする輩もいる。

 

 法廷劇のとき、怒りをのみこまずに立ち向かったよねにほれぼれしたという涼子。自分は周りの目を気にして何もできなかった、自分もそうなりたい、と。

 法廷劇の再検証を寅子の家ですることに。

 饅頭づくりをする寅子たち。こんなに手間のかかるもに毒を入れるのか。

 おまんじゅうで人を殺すには無理がある。殺意があったのか?

 すると、涼子が突然謝罪する。実際の判例を調べてみたところ、学長が法廷劇用に内容をあらためていたことが分かった。

 事件を起こす前に甲子は損害賠償を求める民事訴訟を起こし、婚姻予約不履行で乙蔵が敗訴して7000円を支払っていた。それに、甲子の職業は女給ではなく、医師。饅頭に盛った毒はチフス菌。

 医者より女給、無知な女のほうが同情を集められるだろうと、学長は内容を改変したのだろう。

私たちはいつの時代も、こんなふうに都合よく使われることがある。

(ナレーション)

 無意識に女を舐めている学長。そう、「次からは女らしく」なんて言っていたし。

 無意識がいちばん怖いのは、今も昔も同じだな。

 

 自分は戦わない女の側だ、と言って泣き出す花江(森田望智/兄嫁・寅子の親友)。

 花江に向かって「自分で好きで選んだことだろう」と厳しく言い放つよね。

 そしてよねは次のように言った。

この人は、家事や育児をしながら学んでいる。

この人は、国をはなれて言葉の壁もある。

この人は、常に周囲に見張られて自由もなく、いろんなものに縛られて生きてる。

そいつは、誰よりも熱心に授業を聞いてるのに、月のものが重くて授業を休まないといけない。愛想を振りまいてるから何でもおしつけられる。

どいつもこいつも恵まれて生ぬるい。

でもこれだけは言える。辛くない人間なんていない。

ここにいる誰も弱音なんてはかない。

 上から、梅子、香淑、涼子、寅子のこと。「恵まれて生ぬるい」とは言っているが、カフェでの物言いはネガティブだったが、今、寅子の家ではポジティブな評価になっている。というか、この発言は、寅子たちのことをよく理解している内容だ。加えて、みんな辛いことを抱えているんだ、と自分も含めた全ての人を肯定している。

 だが、寅子は言う。「弱音は吐くべきだと」と。

だからって何もできないけど、弱音を吐く自分を、その人をそのまま受け入れることのできる弁護士に、居場所になりたいの。

 素晴らしい。私は占い師だが、私もそういう占い師でいようと心がけている。

 私の父は弁護士だったが、私は占いをはじめたとき、なんだか父の仕事と似ているな、と思った。おそらくカウンセラーもそうなんじゃないかな。医師もそうあってほしい職業だ。宗教者や教師もそうだよね、本当は。

 

 そしてこのあと、みんなでそれぞれの弱音(不満)を語る。

 

 花江は、お母さま(石田ゆり子)がほめてくれないのがいやだという。料理を一度もほめてくれない。いつもお砂糖を足してしまう。

 そこへ帰宅した寅子の兄で花江の夫の直道(上川周作)。

「母さんの味付けは甘め。丸亀の味。分かる。自分は花江ちゃんの味方。だからこの家を出ていく」と言う直道。このままでは二人が互いを本当に嫌いになってしまう。それは嫌だ、と。

「思っていることは口に出していかないとね」と兄が話をまとめ、その場は和む。

 大団円なその様子を見て、よねはあっけに取られる。おそらく、よねとしての予想をはるかに超える展開だったのだろう。

 直道は、なんだか一風変わった男性だが、父親と似ているのか、進歩的な考えをする人間のようだ。すなわち家父長的ではない。加えて、母よりも妻を大事にする様子もみせてくれた。

 

 直道を演じる上川周作だが、「まんぷく」に出演していた。主人公・福子(安藤サクラ)の義理の兄で画家の忠彦(要潤)の弟子・名木純也。何かあるとすぐに泣く、これも一風変わった青年だった。この人、こういうコメディ演技の人なんですね。そうそう、「ダブルチート 偽りの警察官」にも出てます(現在シーズン1放送中 テレ東金曜夜8時)。主人公(向井理)と同じ交番に勤務する警官。やはり、特徴ある演技。

 

 翌日、よねは、店のおねえさんたちに聞いたという、月のものの痛みに効くツボ三陰交を寅子に伝授した。

「虎に翼」 ©2024kinirobotti