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「パリピ孔明」「ONE DAY」「ゆりあ先生の赤い糸」「フェルマーの料理」「トクメイ」「うちの弁護士は手がかかる」〜オープリングとエンデイングがナイスになった〜2023年秋ドラマ

 深く語るほどではないが、楽しく視聴できた2023年秋シーズン(9〜12月)のドラマをまとめてご紹介。

 

パリピ孔明」フジテレビ水曜夜10時

原作/四葉タト(原作) 小川亮(漫画)

脚本/根本ノンジ

出演/向井理 上白石萌歌 森山未來

 すでにアニメが人気となっている作品。アニメファンたちにはどう評価されたか分からないが、加えて原作のコミックも読んだことのない私ではあるが、このドラマ、なかなか面白かった。期待せずに観た分、余計に面白く感じたということもあるかもしれない。

 自分に絶望したアマチュアミュージシャン英子(上白石萌歌)が、ライブハウスのオーナー小林(森山未來)に命を救われ、そのライブハウスでアルバイトをしながらプロを目指す。

 なぜか現代に蘇った諸葛孔明もライブハウスで働きはじめ、英子の歌に魅了され、英子を売り出そうと「軍師」を申し出る。すなわち、英子のマネージャーとなる。

 諸葛孔明の有名な兵法を次々と繰り出し、英子を成長させていく。

 実際のプロミュージシャンやダンサーも出演し、パフォーマンスが素晴らしい。上白石萌歌の歌唱も負けていない(と私は感じた)。

 孔明はいささか突飛で過激な手法を使うものの、英子のライバルたちを傷つけることはしない。むしろ、勇気づけたり、本心に気づかせたりして助力となっていく。その辺りが、令和時代の平和的表現として好感が持てた。

 

「ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜」フジテレビ月曜夜9時

脚本/徳永友一

出演/中谷美紀 大沢たかお 二宮和也 江口洋介 佐藤浩市

 実験的ドラマだったのだろうか。トリニティなストーリー展開。しかもたった一日のこと(クリスマスの日)を全11話で描く。

 3つの視点は、横浜テレビのキャスター倉内桔梗(中谷美紀)、フレンチレストランのシェフの立葵時生(大沢たかお)、逃亡犯(刑事)の勝呂寺誠司(二宮和也)。舞台は横浜。

 勝呂寺が殺人犯として追われるという謎からはじまり、それを追ってスクープを取ろうとする桔梗、そこに不本意にも深く関わってしまう立葵。勝呂寺はあちこち移動し、桔梗はテレビ局と現場などを行き来する。立葵の登場場所はほとんどがレストランで、ソムリエやギャルソンたちとの絡み合いが、ちょっとしたシットコムの雰囲気を醸し出している。

 話が3つの視点を交差して飛ぶので付いて行きにくいと言っている評論家がいたが、私としては、けっこう面白く視聴できた。謎解きと予想を楽しみながら。

 ただ、こんなことを言っては身も蓋もないのだが、1日のなかでこれほどのことができるかな、といういささか意地悪で現実的な疑問は浮かんだ。

 まあ、それはいいとして、謎が謎を呼んで、結末でちゃんと全て回収されるというきっちりとした因果関係に落ち着き、やっぱりこれは全体でシットコムだった、のかな。

 立葵シェフの娘で横浜テレビの新人記者・査子を演じた福本莉子が良かった。これからが楽しみな俳優だ。

 

「ゆりあ先生の赤い糸 まとめてみんな愛してやる。」テレビ朝日木曜夜9時

脚本/橋部敦子

出演/菅野美穂 田中哲司 松岡茉優 鈴鹿央士 三田佳子

 橋部敦子脚本作品は好きで良く観ている。というより、「あ、いいドラマだな」と思うと「橋部敦子か」ということが多かったかもしれない。

 今回は、脚本が橋部敦子だし、菅野美穂が主演だし、って感じで観はじめた。正直なところ、タイトルと宣伝からあまり魅力を感じなかったので。

 で、どうだったかというと、面白くなくはなかった。

 物語の設定がかなりぶっ飛んでる(ドラマとはそういうものだが)ので、いささか腑に落ちない場面もあった。

 ゆりあ(菅野美穂)は刺繍の先生。作家である夫・吾良(田中哲司)が、外出先で倒れて意識不明になる。そのときいっしょにいた青年・稟久(鈴鹿央士)が、夫の恋人だと判明。さらに吾良をパパと呼ぶ女性みちる(松岡茉優)とその娘たちまで現れる。

 正義感が強く、困っている人を見捨てておけない性格のゆりあは、稟久とみちる親子の面倒をまとめてみるという決意をする。それは、いっしょに家で吾良の介護を手伝うという提案でもあった。

 足を開いて座るなどの振る舞いに、ゆりあの男っぽさが現れている。他人を放っておけないお節介な一面は、「曲げられない女(2010年日本テレビ 脚本/遊川和彦)」で菅野が演じた荻原早紀(弁護士を目指している)のキャラクターと、私のなかではかぶった。菅野はこういう正義感溢れる(しかも悩んだり悔しがったりしながら)役どころがうまい、とあらためて思った。

 好きな人ができた、とかなり年下の男性・優弥(木戸大聖)と付き合いをはじめ、一度は別れる決心をするが結局最後は戻っていく(意識を取り戻した吾良は、実家の旅館を継ぐことになった稟久のもとへ送り出す)。このエピソードが、申し訳ないが、私にはちょっと理解しがたい。そこだったのか?それがゆりあ自身の幸福だったのか?そしてみんなの幸福でもあったのか?いや、みんながそれぞれ自律(自立)したので、ゆりあも自分の幸せを選択した(優弥を幸せにしてあげたいという願望)、ということか?理由はさまざま推測できるが、それでも、この選択がゆりあらしいとは思えない、というのが私の個人的な感想。

 もうひとつ、稟久が最後までゆりあに心を開かなかったのも、私としてはあまり良い印象を持つことができない。気持ちは分かる。ゆりあは稟久にとって、吾良を挟んで敵対する立場にいる人物だから。稟久という人物が、良い人なのか悪い人なのか、本当のところが分からない……まま終わった。

 ということは、要するに、ゆりあと吾良という夫婦は一体何だったんだろう、という疑問が残った。

 

フェルマーの料理」(TBS金曜夜10時)

原作/小林有吾

脚本/渡辺雄介 三浦希紗

出演/高橋文哉 志尊淳 小芝風花

 突飛と言えば、私が視聴した2023年秋ドラマのなかでいちばん突飛、というか…ある意味ファンタジーだったのはこのドラマかもしれない。

 北田岳(高橋文哉)は、幼い頃から数学の天才だったが、高校3年生のときの数学オリンピックで他の天才に圧倒され、数学の道を諦めてしまう。そんなときカリスマオーナーシェフ朝倉海(志尊淳)と出会い、岳は料理人の道へと引きずり込まれていく。

 数学的能力を発揮して、次々と新しい料理を創造していく岳だったが、海の背景は謎めいていた。

 物語中盤が終わるまで、海の様子は頑なで、なんだか怖い印象。だが、その理由も終盤で判明し、最終話は打って変わってとても柔らかく明るい様子で終わっている。

 この二人にあとどのくらいの時間が残されているか分からないが、岳は海を支えながら、太陽がいっぱい降り注ぐ南仏のような雰囲気の店で、天才的な料理を振る舞っている。そこに、救いも感じると同時に、あれほど厳格な雰囲気からすると、まったく別世界のような拍子抜けの感も受ける。私が子どものころに読んだ少女漫画に、こんな感じのストーリーが多かったような気がする。なんとなく懐かしい終わり方。

 それぞれの料理人たちの背景もさまざまで、スリルのある物語展開で面白かったのだが、ピリピリとした空気、謎めいた演出が、上にも書いたがファンタジー過ぎて奇妙ではあった。

 唯一の女性シェフ蘭菜役の小芝風花は、これまでにない(と思われる)新しいキャラクターを演じており、小芝の演技の幅の広さと深さに感心させられたドラマでもあった。

 

「トクメイ 警視庁特別会計係」フジテレビ(カンテレ)月曜夜10時

脚本/荒木哉仁 皐月彩

出演/橋本環奈 沢村一樹 佐藤二朗 松本まりか JP 徳重聡 前田拳太郎 鶴見辰吾

 特別会計係の警察官「一円」と書いて「はじめまどか」(橋本環奈)は、所轄署の経費削減という特命を携えて万町(よろずまち)署へやってくる。捜査のための経費を容赦なく使う強行犯係の刑事・湯川(沢村一樹)に、まどかは目をつける。

 事件を通して刑事が使う経費の何たるかを描きながらのコメディー、に終始するのかのような序盤だった。が、中盤あたりから警察内部の黒い影が見え隠れし、その黒幕を暴いていくというクライマックスへとサスペンスさが増していく。

 実は刑事になりたかったまどか。数字に強いという特殊能力を発揮してユニークな視点から筋読みをし、事件解決への手がかりを見つけ出し、思わず知らず強行犯係に協力することとなる。

 出演者全員、役にはまっていたと思う。

 橋本は、こういったコメディタッチの役柄が似合う。変な恋愛ものよりもずっといい。「警視庁いきもの係(2017年フジテレビ)」の警察官役もたいへん良かった。このドラマ、面白かったので続編を期待していたが、今のところ放送されていない。

 犯人逮捕時などの器物損壊は、警察の経費から弁償することなどが分かって勉強になった。まどかがその出費を気遣いながら犯人と格闘するシーンは、これまでにない犯人逮捕のシーンとなっていた。

 

「うちの弁護士は手がかかる」フジテレビ金曜夜9時

脚本/おかざきさとこ 神田優

出演/ムロツヨシ 平手友梨奈 村川絵梨 日向亘 松尾諭 戸田恵子 江口のりこ

 人気女優(吉瀬美智子)を30年間サポートしてきた敏腕マネージャー蔵前(ムロツヨシ)が、突然解雇されてしまうところからドラマは始まる。ひょんなことから新人弁護士・天野杏(平手友梨奈)のパラリーガルとして香澄法律事務所で働くこととなる。天野は、最年少で司法試験に合格した天才。だが、人付き合いが苦手で、ちょっと横柄な変わり者。

 蔵前がそんな非常識な天野の面倒をみながら案件に取り組んでいく、というコメディ。コメディだが、描かれている内容は時代にマッチしたけっこうシビアな内容が多かった。いじめやパワハラや親子関係など、問題提起を含んでいたり、人間の機微に触れるエピソードもあったり、案件は時事的にも多彩だった。

 異母姉の天野さくら(江口のりこ)との対立が、中盤から物語に別軸の謎を投げかける。この二項対立はさほどどろどろしておらず、視聴中のストレスは少なかった。弁護においても、さくらが送り込んでくる相手側の優秀な弁護士に負けていない天野杏と香澄弁護士事務所の面々と蔵前、その正義感の勝利が描かれているのも痛快だった。

 平手友梨奈は、天野杏を上手に演じきっていたと思う。ムロツヨシも当たり役ではないだろうか(もちろん、他にも素晴らしい役はたくさんあるのだが)。

 江口のりこは、このドラマでは陰湿な人物の役だったが、「ソロ活女子のススメ(テレビ東京2021〜)」などのコメディな役から今回のような不気味で嫌な感じの役まで、幅広く、本当にうまい!

 このドラマも、配役はベストだったと思う。

 ナレーションの時任三郎もよかった。

 主題歌「アングリー」がローリング・ストーンズの新曲だそうで、これがオープニングとたいへんマッチしており、いち視聴者として満足できた。

 

追記

 少し前まで、ドラマのテーマソングや劇伴が、とても煩くて嫌悪するほどだった。

 ところが、最近、なんだか良くなってる?

 今シーズン(2023年9〜12月)は特に、その良さが目立った。

 ここにあげた全てのドラマでそれが言える。

 また、前回の記事であげた「下剋上球児」、次回アップする予定の「いちばん好きな花」も然りであった。

 オープニングやエンディングが、洗練されたというか、煩くなかった頃に戻ったと言ったほうがいいのか…。物語とは全く合っていない曲を、歌手やグループの宣伝として使っていた(と思われる)時代は終わった?のかもしれない。そうだといいのだが。

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