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占い師サリーが語る2023年冬ドラマ終①〜「女神の教室」「忍者に結婚は難しい」「100万回言えばよかった」「リエゾン」「Get Ready」〜

「女神(テミス)の教室〜リーガル青春白書〜」月曜夜9時フジテレビ

出演/北川景子 山田裕貴 及川光博

 終わってみれば、まあまあ面白いドラマだった、と言えるかな。

 ドラマスタート時点でも書いたが、前半は学生たちの雰囲気が妙に鬱陶しかった。中盤からはそれぞれの悩みの解決と理解ともにチームの結束と思いやりが高まっていくというお決まりなパターンによって、鬱陶しさは半減してはいった。が、この学生チームの有り様と友情(?)に対する私の違和感は、最後まで消えなかった。

 同時に初回にはられていた伏線が、サスペンスとしてひとつの仰天な事件に発展するが、まだ司法試験に合格していない学生たちの興味関心と活躍によって、ある意味で良き結実をみる。

 全体としては、法曹界の人間として、定量的な判断ではなく心を大切にした仕事をすることの意味、意義を、裁判官からロースクールの教師として呼ばれた柊木雫(北川景子)が学生たちに伝えていく、というのが大きなテーマだったと思う。

 

 繰り返すが、登場人物たちをもう少し魅力的に描くこともできたのではないかと考えるとちょっと残念だ。法曹界を描いたドラマは数多くあるが、最近では、マチ弁の葛藤と活躍を描いた「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?(2022年TBS)」裁判官の活躍と正義を描いた「イチケイのカラス(2021年フジテレビ)」は、満足度の高いドラマだった。

「女神(テミス)の教室」がこれらと違うのは、プロの弁護士や判事、検事を描いているのでははく、学生を描いているところ。だとしたらせっかくなので、どのような経緯で弁護士、判事、検事になっていくのかを、大卒、社会人、高卒など、さまざまな人々が辿る学びと試験の経緯を、段取り良く分かりやすく挿入してもよかったと思う。昔とはシステムがだいぶ変わってしまっているし、また今後も変わる可能性はあるのだが。にしても、けっこう複雑なシステムになってしまったようで、別の見方をすれば、ロースクールに入学して卒業するということは、なんのために大学に法学部があるのか分からない、というのが古い人間である私の混乱である。

 副題の「リーガル青春白書」は、ちょっと不似合いかな。

 

「忍者に結婚は難しい」木曜夜10時フジテレビ

出演/菜々緒 鈴木伸之

 これはこれで十分よくできたドラマと言ってよいかな、と思う。

 伊賀忍者甲賀忍者の結婚。普通の人と結婚したいと思っていた二人が結婚した相手はなんと忍者だった。しかも敵対する流派の。蛍(菜々緒)と悟郎(鈴木伸之)が互いの正体に気づいてからは、互いを思いやる気持ちを持ちつつ、政治の世界で起きた事件の解決へと走り出す。

 単純に面白かった。コメディとしてもよくできていた。ラブシーンもあっさりしていて(「100万回言えばよかった」と違って)よかった。

 いちばん頼りなさそうだった郵便局の新人、宇良くん(藤原大祐)。実は彼が、もしかしたらいちばん強くて仕事がはやくて気が利く忍者だったんじゃないか、とドラマも終盤に近づくにつれて思わざるを得なくなるシーンが増えた。最後は、伊賀の良い出自だと判明する。そして彼の親が、伊賀の封建的で古臭いシステムの立て直しを開始し、宇良くんも大喜びだった最終話。よかったね。

 私のなかでは合格点のドラマでした。

 

「100万回言えばよかった」金曜夜10時TBS

脚本/安達奈緒子

出演/佐藤健 井上真央 松山ケンイチ

 幽霊ものなので確かにファンタジーなのだが、なんとなく不満足の残る作品だった。「当たり前のことは決して当たり前でない、というメッセージを込めたドラマ」という謳っていたが、そのような印象はまったく受けなかった。

 前半の何がかったるかったかと言えば、直木(佐藤健)と悠依(井上真央)のいわゆるラブシーン。回想シーンで出てくる。ストーリーの説明として必要だったのかもしれないが、私としては不要だったと思うし、見事に緩慢なシーンだった(同様の意見を述べているドラマ評論家もいる)。

 中盤からは、直木を殺害した犯人の捜査が本格的にはじまる。そのなかで過去から続く謎の提示もあり、後半になると猟奇的な犯人たちの側面があらわになってサスペンス的展開のほうがラブストーリーに勝っていく。

 そしてなにより解せないのは、最終話。今までずっと悠依には見えなかった直木が、事件が解決したとたんに、成仏するのではなく、実体化して悠依の前に現れる。その経緯がよく分からず、いくらファンタジーといえども不可解すぎだ(私が見落としているのであれば申し訳ない)。どうやら最後の時を過ごすことを、誰にか分からないが許されたようで、その時間も、直木に「一日くらい?」と言わせて済ませているところが安達奈緒子にしてはお粗末な脚本のように感じてしまう。

 肯定的に解釈すれば、まだ心残りがあるがゆえに成仏できない、ということなのだろう。すなわち「100万回言えばよかった」というドラマタイトルに通ずる、直木から悠依への「愛してる」。直木という人物は、シャイなのかなんなのか、とにかく自分の気持ちを素直に言わない、ぶっきらぼうな性質だ。悠依にちゃんと言葉で気持ちを伝えなかったことが心残り、殺人事件の犯人を思い出して逮捕に導くことよりも「やり残したこと」というのは、それなりに納得はできる。が、それにしても実体化させるって、どういった意図だったのだろう。どういった層へのアピールだったのだろう。

 加えて、回収の仕方に難があったように思う。たくさんのエピソードを詰め込み過ぎたのかもしれない。

 香里奈が演じる莉桜(事件に巻き込まれている)が、実は幼い頃から悠依を守ってくれていたのだと、大きな愛の存在を悠依が知り得ていくくだりは、直木と悠依の冗長なラブシーンよりも感動的かもしれない。私としては、ここを中心テーマにしてくれたほうがより堪能できたと思う。

 

リエゾン こどものこころ診療所」金曜夜11時15分テレビ朝日

出演/山崎育三郎 松本穂香 栗山千明 志田未来 風吹ジュン

 とても期待して見始めた。良いドラマだったと思う。さまざまな症状を抱えた子どもとその親が毎回登場する。

 最近はこのように発達障害など生きづらさの原因に名称がつけられているが、きっと昔からそのような人はいたのだが、誰もそのことに気づいていなかった。

 例えば、クラスで読み書きが苦手だったり、話すがの困難だったりする子はいるものだ。それをただ「できない子」として扱っていることは多々あったと思う。もしかしたらどう対処していいか分からなくて、その子は勉強が嫌いになっていったかもしれない。そんなことを思いつつ、自分の小学校時代を振り返ったりした。

 良いドラマだったのだけど、ちょっと不満が残った。アメリカ版の「グッド・ドクター」のようにはできなかったのかな。研修医の志保(松本穂香)の混乱と成長を「グッド・ドクター」のショーン先生(自閉症サヴァン症候群の研修外科医)のように描くこともできたのではないか、と思った。志保が自身の発達障害を乗り越えていく様や失敗、悩み、葛藤をもう少し多く描いても良かったと思う。舞台が小さなクリニックなのでそこまで描くのは難しいのかもしれないが。

 最後は、クリニックの佐山院長(山崎育三郎)の親(大病院の院長)との確執が描かれて、ドラマのテーマはそこに集約されていく。

 実は佐山も発達障害。なので、子どもたちの事例とともに、佐山と志保の生き方ももう少しでいいのでより丁寧に描いてくれたら、もっと興味深く視聴することができたかもしれない。

 ドラマスタート時点では「いちばん楽しみなドラマ」と書いたが、途中から「毎週楽しみなドラマ」とはならなかった。

 志保の研修の後半は、佐山の実家の大病院で行うことになったので、そちらでの物語を「グッド・ドクター」のようなドラマにしてくれたらいいのに、と思ったりする。

 

「Get Ready!」日曜夜9時TBS

出演/妻夫木聡 藤原竜也 松下奈緒 日向亘他

 意外と面白かった。

 1話目あたりでは、どうかなぁ、といささか疑いつつ視聴をはじめたのだが、エピソードによってはなかなか素晴らしいストーリーもあったし、終わってみれば、全体としてよくできたドラマだったと思う。

 こちらでも突発的に記事を書いたが、「生命か才能か」の選択を冷酷に切なく迫ってくる第4話、私はこのエピソードがとても気に入った。今シーズンのドラマで、途中で感想を書きたくなったのはこのドラマのこのエピソードだけだった。

 

 全体としては、助からない命を助けるだけの価値があるのかを天才医師が問いかけながら、大胆に違法に手術を行って命を救う物語。そこに患者の背景が映し出され、加えて闇医者チーム4人の過去や事情も語られる。

 もうひとつのテーマが、言ってみれば復讐だ。天才医師エース(妻夫木聡)と彼の恩師、二人を陥れた千代田医科大学の院長(鹿賀丈史)への。

 物語クライマックスに、ついにその直接的なチャンスが訪れた。すでに手の施しようのない病状にある院長の娘を助ける条件に、かつての悪事を世間に公表しろと院長に迫るエース。院長はある学会で全てを告白する。

 この告白はこれまでのテレビドラマの歴史からすると(私の知る限りだが)、意外な展開だった。娘よりも大切なものはない、ということなのだろうが、これまでだと、家族よりも地位や名誉を優先する悪徳権力者が多かったように思う。

 次の記事で書く「罠の戦争(2023年フジテレビ)」もそうだった。大臣が自分の罪を告白、公表するというドラマでも現実でもまずないであろうシーンが描かれた。「エルピス(2022年フジテレビ)」も、これまでだったら追い詰めながらも権力が逃げ切る構図で終わってしまいそうなところが、そうではない描かれ方をしていた。

 権力を監視する立場を放棄しているかのような現在のメディアだが、ドラマを使って少しずつ抗ってはいるのだろうか。良い傾向?なのかもしれない。いや、そうなってほしいところだ。

 

 実は最近私のなかでは評価を落とし続けていた妻夫木聡だったが、このドラマで評価はあがった。

 ジョーカー役の藤原竜也は、彼は天才だという声を多く聞いてきたが私は良いと思ったことが一度もなかった。それが、このドラマで私ははじめて藤原竜也を良いと思った。CMで彼を見かけると「あ、ジョーカーだ」と言ってしまうほど。

 クィーン役の松下奈緒もスペード役の日向亘も含めて、4人共にはまり役だった、というのが私の感想だ。

ツトムとテレビ ©2023kinirobotti

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