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ドラマ「波よ聞いてくれ」〜ミナレは正義の味方だ〜「マーベラス・ミセス・メイゼル」のラジオパーソナリティバーション

 おもしろいコメディドラマだった。

 

波よ聞いてくれ」2023年4〜6月テレビ朝日 金曜夜11時15分

原作/沙村広明 脚本/古家和尚

出演/小芝風花 北村一輝 片寄涼太 平野綾 原菜乃華 小市慢太郎

 

 おもしろかったとはいえ、実はちょっと疲れた。

 若い年齢ではない私にとっては、このしゃべくりの多さとスピードが、いささか疲労を促すのである。

 いや、決して酷評しているのではない。むしろ称賛している。

 

 私は「あさが来た(NHK朝ドラ2015年下半期)」以来、小芝風花のファンである。小芝は最近、多種多様な役をこなしていて、その才能を惜しみなく披露してくれている。

 そんななかでも今回の役どころは、超ぶっとんでいる。

 

 鼓田ミナレ(小芝風花)は、ある日、彼氏に振られて金も騙し取られ、バーでやけ酒を飲んでいた。

 ちなみに、振られて金を取られるという状況設定は「妖怪シェアハウス」で小芝が演じた澪と同じだ。キャラクターは全く違う。容貌(メイク)も全く別人。

 そのバーでミナレは、円山ラジオのチーフディレクター麻藤(まとう/北村一輝)と出会う。麻藤は、ミナレの口から炸裂する淀みない失恋話を聞き、そこに才能を見出してスカウトし「波よ聞いてくれ」のパーソナリティーをいきなり任せる。

 ミナレはスープカレー屋のアルバイトを続けながら、(強引ではあるが)ラジオパーソナリティとしてデビューすることになる。

 

 番組内では、様々な事件や出来事、悩みなどを取り上げ、ミナレ独特のアプローチと爆裂トークが、そのまま解決へと導いていく。そこがミナレの真骨頂。

 ミナレが愚痴を言っても説教めいたことを言っても、そこには一本筋の通った正義と愛がある。それは持って生まれたものとしか言いようがない。訓練や台本でできることではないだろう。

 言ってみれば、騒がしい「正義の味方」ってところだろうか。色々と障壁が立ちはだかってもきっと負けないだろうな、良い方向が見出されていくだろうな、と視聴者に思わせるところは、まさしくヒーローものあるあるの流れ、ではないか?

 

 なんと言っても、ミナレすなわち小芝のセリフ回しがすばらしい。ラジオトークはもちろんのこと、普段の会話のなかでも、歯切れの良い早口で、力強く単語数の多い文章を飛ばす。

 最終話がとくにそうだったが、機転の利くしゃべりがこれだけできるというのは、これもまた、生来の才能としか言いようがない。プロの訓練も受けていないのにこれだけできるのだから。

 このトーク能力で思い出したのがマーベラス・ミセス・メイゼル」だ。アマゾンビデオで配信されたアメリカのコメディドラマ。シーズン5(2017〜23年)まで配信されている。

 ミリアム・メイゼル(レイチェル・ブロズナハン)は、ニューヨークに住むお金持ちのユダヤ人専業主婦。時代背景は1950年代末から1960年代前半。夫がコメディアン志望なのだが芽が全く出ず、妻のミリアム(ミッジ)に、スタンドアップコメディの才能があることが分かるところから物語がはじまる。

 実は夫の不倫に腹を立てたミッジが、酔っ払って、ガスライトというカフェでその顛末を爆裂トークでぶちまけたことで、ミッジ自身、自らの才能に目覚めていく。ガスライトは、夫が仕事のあとライブの舞台に立っているカフェだった。

 夫よりぜんぜんうまい。

 ミッジはしゃべくりが得意なのだ。男尊女卑や人種差別なども乗り越えながら、そしてそれらをネタにもしながら、ミッジはコメディアンとして活躍していく。

 スタートが男への恨み辛みを爆発させたトークという点でも、ミナレとミッジには共通点がある。しかも作り物ではなく、本当にあった話を軽快な高速口調で本気でぶちまけるところも、ミナレを見ながらミッジを思い出しても全く問題はないだろう。

 

 とにもかくにも、小芝風花の演技力にブラボー!のドラマだった。

 

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