2020春ドラマの新作がほとんどないなか、
このドラマは面白い。
ハリウッドも撮影が全てストップしていると、映画評論家の町山智浩が言っていたが、日本も同様。
撮影が済んでいた1話2話だけ放送した、という春ドラマもあった。
どの現場も、社会が通常に戻ったら大急ぎで間に合わせよう、間に合うだろうと思っていたのだろう。が、なんとこんなことになるとは……である。
とはいえ正直なところ、1話2話だけ放送した意味がよく分からない。放送開始までに十分に考える時間はあったのに。
アメリカではそもそも再放送ばかりしている期間が1年の内の一定期間あるそうだ。
これを機会に、日本でもそうしたらいいのではないか?
だいたい、次から次へと3ヶ月1クールで、せっかくつくったドラマをどんどんどんどん消費していってしまうのはもったいない。
最近はBSなどで全話一挙放送もしてはいるが。
どんどん消費するのはDVDを売るためなのかな。ドラマは儲からないので、DVDで儲けるという話を聞いたことがある。
DVDと言えば、日本のドラマや映画のDVDは高額だ。私も、もっと安かったら買うかもしれない。録画したものをコピーする作業は非常に面倒だ。
労働環境的にも良いのではないか?
ハリウッドでは、一日の撮影時間も決まっていて、再放送期間があるということは、休める時間、時期があるということだろう。
日本の場合は、ドラマやテレビの現場に限らず、あらゆる職種で、たくさん働くことが良いこと、徹夜することがよいこと、休みなく働くことが自慢、といった間違った優越感がはびこっている。
そんなに懸命につくっているわりには、決して質が高いと言えない作品が多い、多すぎる。
日本のドラマは幼稚すぎると何度も私も書いてきた。
もちろん、ハリウッドにだって駄作はたくさんあるし、ドラマには嗜好性が大きい。流れ作業でつくっていることが質の低下を招いているとも言い切れないのではあるが。
ひとつ言えるのは、日本のドラマは社会性が低い。これは確かだと思う。ハリウッドには自国の自慢や喧伝も兼ねた世界を見据えた部分があるのだとは思うが(昭和3,40年代くらいに日本に取り込まれたアメリカドラマにはそういった洗脳もあったように思うし、国民はまんまと乗せられた)、それだけではないカウンター要素もたっぷりある。
このカウンター要素が、日本のテレビドラマにはまずほとんど無い。映画も然り。これはドラマが果たす社会での役割としては少々弱いのではないか。
さて、「美食探偵」。
撮影開始が早かったということで、2020年5月中旬現在でも放送が続けられている。
最後まで撮影できているのかな?
最終話までこのまま視聴できるのかな?
内容が面白いだけに、ぜひ最終話まで観たい。が、
皆様へ
『美食探偵 明智五郎』は、
2020年1月から撮影しているため、
予定通り4月12日から放送を
開始します。
現在、ドラマの撮影は止めて
事態の推移を見守っております。
というツィートが4月3日にあったので……。
このドラマ、なんてことはないのだ。深い問いかけや時事的社会性やカウンター要素が組み込まれているわけでもなんでもない。
美食探偵を名乗る明智五郎(中村倫也)と、いつの間にか助手になってしまった移動弁当屋の小林苺(小芝風花)が活躍するコメディドラマ。苺は明智から、小林一号と呼ばれている。苺の友人、桃子(富田望生)が二号。
余計な詮索だが、明智と桃子の実家は大金持ちだが、苺の背景はいかほどなのだろう、とちょっと気になった。
犯人は分かっているので、推理する楽しさがある探偵ドラマではない。
シリアルキラーに変貌した明智の元相談者、マグダラのマリア(小池栄子)が明智に近づいてくる怪しさと、彼女がネットで毎回指示して手ほどきする殺人事件と明智たちとの駆け引きが、単純に楽しめる。
「クリミナル・マインド」の簡素版、といったところだろうか。いや、「クリミナル・マインド」に失礼か。こちらはFBIだ。
ドラマの世界も、COVID19の感染拡大が価値観変容の機会となっているのではないか、と思う。大きな出来事のなかでこそ人は気づき、発見する。何も変わらず全く元に戻るなら、そこには発展はなく、現状維持どころか後退があった、と理解するほうが正解なのだろう、と思う。
東日本大震災と原発事故のあとも、社会的変革の兆しをおそらくは多くの国民が感じていたと思うが、全く元に戻ってしまい現在に至る。いや、戻っただけではなく退化している。政治もこの間にすっかり劣化してしまったのを、コロナ禍の今、私たちは明らかに実体験することとなってしまった。
さまざまな無駄や不条理を飲み込みならが、ドラマはつくられてきたのだろう。
特にここ数年、事務所タレントありきの作り方をはじめ、日本のテレビドラマへの酷評は多かった。デーブ・スペクターは「日本はこれまで、アメリカのドラマから何を学んできたのか。しばらくドラマをつくるのをやめたらどうか」と、厳しいコメントをしていた。奇しくも今そうなっている。
ドラマフリークの私としては、ぜひとも現場の働き方、せめてハラスメント体質と時間の浪費は改善して、オーディションをしっかりやって、良質なドラマを世に出していってほしいと願っている。
そんなことを考える機会にCOVID19がなってくれればいいのだが。働き方は変容するかもしれないが、視聴率第一主義アイドルドラマからの脱却はできないだろう……な。
その他新ドラマとしては、テレビ東京の「サイレント・ヴォイス」、WOWOWの「鉄の骨」などを観ている。
これらはおそらく随分前に撮影が終わっているものなのだろう。
良くも悪くも、日本の新ドラマがほとんどないので、アメリカの「ブラックリスト7」「グッド・ドクター3」「FBI」を余裕で観ることができている。
ちなみに「グッド・ドクター」は日本版が今再放送されているようだが、アメリカ版のほうがはるかに面白い。オリジナルは韓国ドラマ。
「鍵のかかった部屋」の再放送も始まった。これはジャニーズ事務所の大野智主演でアイドル視聴率ドラマではあるが、この頃はまだ、こうした丁寧なつくりのドラマがあったのか、と私は評価している(今よりはいい、くらいかもしれないが)。
何をやっても同じに見える俳優が多いなか(特にアイドル)、中村倫也はカメレオン俳優と言われている。え?この人中村倫也?と途中まで分からないことがある。CMでも。
小芝風花。朝ドラ「あさが来た」では、あさ(波瑠)の娘、千代役だった。が、千代の学友、宣(のぶ)役の吉岡里帆、あさの実家の女中、ふゆ役の清原果耶のほうにより多くスポットライトが当たったように思う。その後、めきめきと実力を発揮。NHKドラマ10「トクサツガガガ」の主演も良かった。NHKEテレ「100分de名著」での朗読も素晴らしかった。
両人ともに、さらに役に恵まれることを期待しながら、中村、小芝ファンの私は「美食探偵」を楽しんでいる。