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「同期のサクラ」第7話〜おとなにならないと夢は叶わないのか?〜

「おとなになる」とは「嘘をつく」ということだ。

「おとなになれよ」という呪文が解ける日は、人類としてシフトアップするときなのかもしれない、とあらためて思う。

 

「同期のサクラ」日本テレビ水曜夜10時

主演/高畑充希 脚本/遊川和彦

 

2015年11月。

サクラ(高畑充希)の故郷の島に橋を架ける工事が始まることになった。

基礎工事の不備の噂が広まり、島民を説得して安心させてほしいと、サクラが土木部に駆り出される。安全基準は満たされているので全く問題はない、というのが会社の方針。

 

同期の仲間たちもいっしょに島へ行くことに。

 

住民説明会当日、コンクリートのセメント量の割合が少なく強度が弱くなっている、と葵(新田真剣佑)から聞かされるサクラ。上司に進言しても、大丈夫だと取り合わない。どこでも多かれ少なかれやっている、おとなになれ、と。

 

悩むサクラ。

正直に言ったほうがいい、でもそれじゃ夢が叶わない、と言い合いになる同期の仲間たち。

辛いだろうがサクラが決めるしかない、と。

 

じいちゃん(津嘉山正種)のところへ行くサクラ。

ねえ、じいちゃん、私はおとなになれんだろっか。

おめは、一生、おとなんなんかになれねんだて。なる必要もね。

 

住民説明会が行われる学校の前。

百合(橋本愛)が駆け寄って来る。

「サクラ、どうするか決めたの?」

「まだ迷ってって」

だよね。私もさっき、夢を叶えるためなら嘘ついてもいいって言ったけど、それが正しいか自信ないし。

でもさ、なんでサクラばっかりこんな目に合わなきゃいけないんだろうね。自分を貫いて生きる人間の宿命なのかな。だとしたら、神様ってひどいよね。

これは、脚本を書いている遊川の本音ではないか、と思う。

朝ドラ「純と愛」でもそうだった。純粋に生きているだけなのに、なんで?という不幸な出来事が次々と起こる。

 

「自分を貫いて生きている人間の宿命」が「辛い目に合うこと」だとしたら、神様は確かにひどい、と私も思う。けれども、そういったことは往々にしてある。うまいこと嘘をついて、調子よくやっている人や、悪知恵の働く人のほうが、いわゆる成功者となっていることが多いのがこの地球の仕組みのように見える。

アメリカのテレビドラマに「クリミナル・マインド」という犯罪捜査ドラマがある。FBIのBAU(行動分析課)の物語。そのなかのあるエピソードで、モーガン捜査官が「神様が犯人の味方をしているようだ」と言うシーンがある。犯人がうまこと逃げられるように偶然が重なったりするからだ。悪いことをしている人を応援して、善なる行動をしている自分たちを助けてくれない神様なんて信じられない、と。

 

「正直者がバカをみる」と言うが、確かにそのとおりのことばかり起きているように見える。

公文書の改ざんに耐えられなかった官僚、つまり嘘を突き通すことができなかった官僚は自殺し、平気で嘘をつき続けている官僚は出世したり、良いポジションを与えられたりしている。以前は、そういうことは隠れて為されたものだが、今は堂々と為されているので、市民にもよく見えるようになった。だが、サクラの上司の言うように、多かれ少なかれどこでも不審なことはやっている、と市民も思っている。

会社など組織のなかではまっとうな意見は言えない、というのがごく普通の習わしで、そんなストレスのなかで「おとなになれない」人たちは生きている。ときに心を病んだり、身体を壊したりしている。そして、ドロップアウトしていくしかない。純粋な人々は、自分の良心にさからって生きていくことができないのだ。引きこもりやニートと呼ばれている人たちのなかには、その類いの人々がいるはずだ。

「おとなになれない」と言われるだけではなく、「弱い人間」とか「怠け者」というレッテルすら貼られてしまう。

善悪で言えば、いったいどちらが善なのか。

 

すみれ(相武紗季)から応援の電話を受けるサクラ。

これからあなたが出した答えは、どっちにしてもあなた自身をひどく苦しめることになる。

そうなったら、いい?私や蓮太郎(岡山天音)くんたちを頼りなさい。ひとりで苦しまないで、みんなに助けを求めなさい。それだけは約束して。 

 

上司のスピーチに、島民たちは納得がいかない。サクラの話を聞きたいと言う。サクラが大丈夫だと言ってくれれば自分たちも信じる、と。

7年前の入社当時、新人研修でチームの仲間たちと橋をつくったことを語るサクラ。そのとき自分はこう言った、と。

私には夢があります。

故郷の島に橋を架けることです、

私には夢があります。

一生信じ合える仲間をつくることです。

私には夢があります。

その仲間とたくさんの人を幸せにする建物をつくることです。

2番目の夢は叶い、私にはすばらしい仲間ができました。

3番目の夢はまだですが、その仲間さえいれば、いつか必ず叶うと信じています。

でも、……いちばん最初の夢は叶いません。故郷の島に橋は架かりません。いえ、架けてはいけません。

だって、基礎の深さは十分に足りていないし、コンクリートの成分だって絶対に安全だとは言い切れないから。

ここにいる皆さんが命を落とすような可能性のある橋を絶対につくるわけにはいきません。

みんな、許してくんなせ。うちの島に橋を架けることはできねんだて。

(泣き崩れるサクラ)

自分で自分の夢をつぶすどうしようもないバカだと上司はサクラに言い放った。会社にもいられなくなるぞ、と。

同期たちはサクラを庇う。正しいことをした、と。

 

サクラが帰宅すると、

じいちゃんが

冷たくなって倒れていた。

目をさましてくれと泣き叫ぶサクラ。

 

東京のアパートへ帰ってくると、

そこにじいちゃんからのFAXが届いていた。

桜は決して枯れない

たとえ散っても

必ず咲いて たくさんの人を 幸せにする

サクラもFAXを送る。

じいちゃんに会いてぇ。

じいちゃんのつくったコロッケが食べてぇ。

…返事はない。家のなかをめちゃくちゃにするサクラ。

 

連絡が取れなくなったサクラを心配した百合がアパートを訪れると、サクラは薄暗い散らかった部屋で正座していた。



  

附記

このドラマでは冒頭に、サクラが街なかで、ルール・マナー違反な行為を指摘するシーンが毎回ある。今回は傘。

通行人に傘の持ち歩き方を注意するサクラ。

私も傘の持ち歩き方には一家言ある。

横に持って前後に振りながら歩いている人は意外と多い。横持ちではなくても、手の振りに合わせてなのか大きく前後に振りながら歩いている人もいる。

これは本当に危険だ。駅の階段でもやっている人がいる。そんなとき私はその人の後ろから逃げるようにしている。

傘の持ち方は、その人間の品位が現れていると私は思っている。きっちりと縦に自分の身体に寄せて持ち歩いている人は、良い家庭で良識を持った両親のもとで育った人なのだろう、と想像する。100%そうではないが。

傘の危険な持ち歩き方、

やめていただければありがたいです。

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「同期のサクラ」 ©2019kinirobotti