配信オリジナルストーリーがめっちゃ面白いじゃん。
これねぇ、もっとどうにかならなかったのかな。
「恋は闇」(日本テレビ水曜夜10時)
出演/志尊淳 岸井ゆきの 森田望智 白洲迅 望月歩 浜野謙太 猫背椿 西田尚美 萩原聖人 他
主演の志尊淳と岸井ゆきの、どちらも好きな俳優。他の出演者たちも好きな俳優ばかり。上にあげた人たちは全員好きです。とても魅力的。っていうか、脇役が主役級ばかりの役者ぞろいじゃん。ぜひ観たかった。なのに、残念。
え?そうなんですよ。観てないのです。なのに、なんか偉そうに堂々とドラマエッセイを書こうとしている。それにはもちろん理由がある。
犯人探しの推理を楽しめるサスペンスなんだな、ということはすぐ分かった。ところが、ドラマタイトルに「恋」とある通り、志尊と岸井の恋愛が思い切りからんでいて、もうどうにもこうにも耐えられず、1話目で退場。同様のことを言っているドラマ評論家もいたので、自分だけの偏見ではなさそうだなと自分を慰めつつ。というわけで、放映時間が重なっていた「Dr.アシュラ」(テレビ朝日)のほうを私は観た、という経緯。
脚本の渡邉真子の作品としては、同じ日本テレビで放送された「ムチャブリ! わたしが社長になるなんて(2022年 出演/高畑充希 志尊淳)は面白かった。これも恋愛シーンは入っているが、あっさりしていてさほど気にならなかった。むしろ仕事のなんたるか、に焦点が置かれていた。
いや、「恋は闇」だって、テレビの報道番組と週刊誌を舞台に、報道とは何か、伝えるとは何か、真実とは?という重いテーマを抱えていたと思う。私は全話を観ていないので、言う資格はないかもしれないが、それを上回る恋愛ドラマが展開されていたような、いや、そういう予感がしたからこそ視聴を中止したのだ。
お気づきかもしれないが、私は恋愛ドラマが苦手なのである。日本の場合、あらゆる物語に恋愛をぶっ込んでくるが、それ必要?と感じるものも多い。もちろん必要なものもある。すべては人間ドラマですからね。
さて、そうは言っても1話目を視聴してしまった私は、犯人が気になっていた。そこでhuluで最終話を観ることにした。真犯人は、初回から匂わせていた設楽浩暉(志尊淳)ではなかった。夏八木唯月(望月歩)という青年だった。
最終話は、設楽、筒井万琴(岸井ゆきの)、夏八木の異様な場面からはじまった。設楽が万琴にナイフをつきつけて、夏八木と対峙している。これは、設楽の策略だ。
設楽は殺人犯ではなかったが、夏八木の手伝いをしていた。共犯といえば共犯だが、すべては病気の妹のためだった。そして設楽の母は、夏八木に殺害されたという重大な事実もあった。
ここで全てが暴かれて、定番どおり最後は警察が登場し、事件は解決。万琴も殺されずに済んだ。
ところが、警察が夏八木を連行したあと、この現場で夏八木に刺されて命を失いかけている設楽と、そのそばに寄り添う万琴のラブシーンが、長い!思い出まで辿ってる。その間警察も誰もここに来ない。そもそも警察といっしょに、救急車も来てないのか?ふつう来てるよね。まあ、ドラマの演出だからしょうがないかと思いつつも、アメリカの刑事ドラマを見慣れてるので、このテンポの悪さが気持ち悪い。
この瀕死のなかでの好きだと言い合う恋愛コミュニケショーンシーンは何分続いたかな、もう途中で観るのやめるか、スキップしようかと本気で焦れったかった。スキップの操作をするのも面倒で、我慢してなんとか最後まで流した。
さて最終話が終わると、「Huluオリジナルストーリー#02」ってのが配信されていることが分かった。「過去の闇、未来の光ーある殺人鬼の始まりと、2人の恋の行方ー」というタイトルだ。え?「ある殺人鬼の始まり」?私の食指が動いた。「2人の恋の行方」はどうでもいいが。
はい、これは面白かった。すっごく面白かった。私っていい勘してる。
どうしてこれを配信にしたのか。もったいない。真琴と設楽の恋愛物語よりも、夏八木唯月物語のほうが見応えがある。
そうです。夏八木はサイコパスのシリアルキラー。
アメリカのテレビドラマ「クリミナル・マインド 」(2005年〜2020年、2022年)では、この類いのシリアルキラーはお馴染みだ。BAU(FBIの行動分析課 Behavioral Analysis Unit)が舞台。犯人をプロファイリングして心理を読み解き、事件を解決していく。この「オリジナルストーリー#02」で描かれているようなことを、BAUのメンバーたちは捜査の過程で読み解いていき、犯人の行動を割り出し、逮捕に至る。
「過去の闇 ある殺人鬼の始まり」では、裁判を通して、プロファイリングが視聴者に示される。上手に描かれていると思う。
これは、番外編にせずに、本編にしっかりと組み込んでほしかった。1話目でその雰囲気が漂っていたら、私は最後まで視聴したと思う。恋愛を絶対に入れるなとは言わないが、そちらのほうを添え物にしたほうが、精神性レベルの高いドラマとして成立したのではないか。でもきっとおそらくそれだと、視聴率が取れない、と会議で判断されるのかな?でも、「恋」とか入れれば視聴率が取れるという思い込みも、そろそろ古いのでは?と私は思うのだが…。
夏八木唯月の生い立ち、心が壊れていく過程、強烈な母への愛、猟奇的心境などが、すごくよく描かれている。
証言席での唯月は、母(太田美恵)と二人きり仲良く暮らてきたと嬉しそうに話す。
被告席で母の証言を聞いている唯月は、母の証言が自分の思いと食い違っていると、いら立ち、声をあげる。
なぜ母を守るためだけのはずだった殺人が、連続殺人に姿を変えていったのか。そのあたりもこの母と息子の証言からはっきりと見えてくる。
当然ながら、母親は自分の育て方が悪かった、自分のせいだ、と深い悔悟の念を抱く。母親は息子の犯行を知っていたのだ。
証言台で崩折れた母のもとに、被告席を乗り越えて唯月が飛び出してくる。そして母の首を締める。これは、母親の口から自分の幸福と違うことが語られるのを阻止するためだ。すごい。
裁判所での夏八木唯月の態度、あそこまで強烈に演出できるなら、こちらの話を軸に、報道と週刊誌と警察が犯人を探って追い詰めていく、という物語にしたほうがよかったように思う。設楽と万琴のラブシーンは必要最低限にして。
せっかくの興味深いドラマも、冗長な恋愛シーンがあることで退屈なドラマに変質してしまう、そんなドラマを過去にも観てきた。
猟奇的殺人という観点から比較すると、「天国と地獄〜サイコな2人〜」(2021年TBS日曜劇場 脚本/森下佳子 出演/綾瀬はるか 高橋一生 柄本佑 迫田孝也 他)が面白かった。これには、いわゆるラブシーンはなく(夫婦の会話はある)、真犯人を推理していく過程が非常に興味深いものだった。いっけんコミカルだが、家庭環境や兄弟関係など、プロファイリング的要素や、人生のなんたるかまで描かれていて、殺人事件なのだけれど、そこには兄弟の苦悩と悲哀が広がっていた。犯人の心の叫びと、犯人を守ろうとする人間の痛々しさ、そして愛が、絶妙に混じり合う。
そういえば、岸井ゆきのもこのドラマに出演していた、確か。
こういった深刻な物語は、コメディタッチも入れないと厳しい面があるかもしれない。「恋は闇」では、それが恋愛ストーリーだったのかもしれない、が……。
夏八木を演じた望月歩、ますます成長した役者ぶりを見せてくれた。「虎に翼」の新潟地家裁三条支部の書記官の素朴さとはまったく違う役柄。映画「妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-」のAITO役も良かった。まだ若いが、すでに実力派俳優の貫禄すらある。今後に期待。
余談ですが、「虎に翼」に出演していた俳優が4人もいました。森田望智、名村辰、小林涼子、そして望月歩。
白洲迅は刑事役、多いですね。似合ってるし、上手い。
いやぁ、繰り返しますが「恋は闇」、ほんとうにいい俳優だらけ。浜野謙太も演技力すごいし。「問題物件」(2025年1〜3月フジテレビ)でも、ものすごく愉快な役、演技でした。
いろんな意味で、返す返すももったいないドラマでした。私にとっては。

©2025kinirobotti
追記
夏八木唯月について、どのような伏線がはられていたのだろうと気になって、9話と6話と7話(だったかな?)を観た。
こうしてながながと思うところを書いているのだがら、本当は全話通して観るのが礼儀なのは分かっている。しかしやっぱり、あまりに苦痛で観ることができない。一日は24時間、他の観たいドラマを優先せざるを得ない。ラブシーンと恋バナがくどいし、なんというのか、これは日本特有なのか…、ほんとうにほんとうにもっともっとあっさりさせてほしいと強く願う。いや、だが、上にも書いたが、このドラマのコンセプトが恋愛模様にある、と考えると、私の願いは的外れ、ということになろう。
ということで、限定的ではあるが、ここで気づいた点をすこし。
夏八木唯月は、フードデリバリーで、各所に出入りしており、テレビ局員にも警官にも顔見知りで、その人懐っこさからみな親しみを感じている。
自分が殺してしまった刑事の葬式で涙を流し、その息子に慰めの言葉をかけるのは、すでに真犯人を知っている視聴者には不気味なシーンとなるし、最終話で思い返してぞっとした人もいるだろう。
夏八木唯月が怪しそうだ、と思わせようとするシーンもカメラワークもなかった。初回から、そもそも設楽浩暉が抜群に怪しいよ、犯人だよ、という設定、物語の進行になっており、途中途中に不審人物の思わせぶりもいくつか描かれるなか、夏八木唯月にはそのような不確かさを演出する様子はないように思う(ただし、全話観ていません)。
そこはうまく表現されていて、いちばん怪しくない人物が真犯人という、もしかしたら推理ドラマのセオリーに、視聴者はまんまとはめられた、のかな。
とはいえ結局は設楽浩暉もシロではなく、重罪の共犯者だったわけで、そのあたりは動機も含めて、ユニークではある。
一番怪しい人間と一番怪しくない人間が、共犯関係だった。
このドラマのなかで起きている事件はどうやら、それぞれがそれぞれに家族を思い遣る気持ち、家族への愛から引き起こされた出来事の連なりで成り立っているようだ、ということは分かった。設楽浩暉と両親(父親の冤罪も含む)、異母妹との関係、夏八木唯月と母親の関係。愛が複雑に深く絡み合う。
設楽浩暉の母の殺害、それが連続殺人のはじまりだった。浩暉の母はエリート、高圧的でプライドが高く、他人を平気で見下す人間。浩暉も幼いころからコントロールされてきた。すなわち「毒親」だったわけだ。父もそんな母に嫌気がさしたのだろう。にしても無責任だが。
夏八木唯月の母は、大人しい性格のようだ。元凶は父親のDVだった。ゆえに、唯月はずっと母と2人で暮らしてきた、と裁判で言っている。彼のなかに父親はいない(ようにしている)。あるときスーパーのレジで、唯月の母親は浩暉の母親から蔑まれた。ゆえに、唯月は直接の復讐を果たしてから、高学歴の女性を狙う。この復讐は、唯月からすれば母を守るための行為、なのである。
シリアルキラーは、一定の法則、こだわりで動く。ゆえに、FBIのBAU(上に既述)によるプロファイリングが犯人を追い詰めていくことができる。
9話での、設楽の筆(記事)による煽り方は、夏八木には抜群の効き目があった。サイコシリアルキラーの自己顕示欲、名誉欲を刺激する方法を設楽は知っているのだろう。すなわち、手柄を奪う言動。夏八木は、設楽に手柄を横取りされたくないので、犯罪を自白してしまう。これも「クリミナル・マインド」にはよく出てくるシーンだ。
これが映画だったら、恋愛場面は少なくあっさりしたものになったに違いない。そのほうが海外でも受けるような気がするけど(ごめんなさい、素人のたわごとです)。
でもね、よかったですよ、最後、小峰正聖(こみねまさきよ/白洲迅)と内海向葵(うつみあおい/森田望智)が結ばれて。
真琴は浩暉の出所(懲役15年)を待つらしい。ちなみに夏八木唯月は死刑判決です。
そうそう、妻(浩暉の母)殺害の冤罪で服役していた浩暉の父を演じた萩原聖人は、こういう役をやらせるとうまい。「あいくるしい」(2005年TBS日曜劇場 出演/神木隆之介 萩原聖人 綾瀬はるか 他)で萩原が演じた元ボクサーを思い出す。落ちぶれてみすぼらしい雰囲気。このときは、試合で死亡させてしまった対戦相手の娘を引き取って育てている人物を演じた。
余談ですが、「あいくるしい」は名作です。11歳の神木隆之介の演技が光っており、またその役「真柴幌」のキャラクターがすばらしい。ぜひご視聴を。これもhuluで配信されています(2025年7月時点)。