ねことんぼプロムナード

新しいルネサンスの小径

あなたはそのままでいい〜プロフェッショナル渡辺万由美〜

2019年11月5日NHK総合

「プロフェッショナル」で

芸能プロダクション「トップコート」の社長、渡辺万由美

を観た。

渡辺?もしかしてナベプロの?

そうだった。渡辺晋・美佐の次女だ。

 

所属タレントは25人。

菅田将暉松坂桃李、今をときめく中村倫也など、才能豊かな売れっ子たちがいる。

6000人もタレントを抱える事務所があるなか、少数精鋭。

社長の「目の届く範囲」を越えるアーティストは抱えない主義。チーフマネージャーが抱えるタレントも5人まで。確か6000人を抱える事務所は、10人以上もひとりのマネージャーが抱えていると、様々問題になったときに言っていた。

 

渡辺万由美は、両親とは違う道を選んだ。が、30歳を過ぎたころ、友人から女優をやりたいという大学生を紹介され、プロデューサーに紹介したらすぐに仕事が決まり、ギャラを受け取るためにプロダクションが必要になり設立した。その女優は、木村佳乃

森田健作とサン・ミュージックの関係とすこし似ているな、と思った。

木村佳乃のマネージャーとして、走り回る渡辺。苦にならなかったと言う。

だが、恥ずかしがりやなのでこの仕事は天職ではない、と語る。誰かのために、という気持ちに突き動かされるということだが、素人から見ると、どうみても天職だ。

 

なぜ、私はこの記事を書いているのか。

アーティストを見い出して育てる、芸能界の華やかな世界で奮闘する女性社長に感動したとかそういうことではない。

この渡辺万由美が語ること、信条としていることが、ごく普通の質素な世界に生きる人々にも、まこと適合する内容だと感じたからだ。

つまり渡辺万由美が実践していることを、親や学校の先生が実践したら、世の中の娘息子、教え子の個性と能力は巧みに見極められて、引き出されるのではないかと思ったからだ。また、彼女のような心構えを持って生きることは、私の占いのコンセプトでもある「本当の自分を生きる」に近いと思ったからだ。

 

自分が信頼できる人物がそばにいてくれることが、本当は人間誰しもにとってとても大事なことなのだ。

なのに、ひとりでやれとか、ひとりで考えろとか、甘えるなとか、偉そうに言う人は、家庭にも学校にも会社にも大勢いる。そのくせ、自分の言うことだけは理不尽に聞かせようとするので始末に負えない。教えられない、能力を引き出すこともできない無能な人間たちの態度である。それどころか、なぜか才能や能力、可能性を潰しにかかる人たちさえいる(これは内田樹の著書に詳しい)。親でも教師でも師匠でも。友人なら嫉妬から。

 

渡辺自身のモットーとしては、自分ができることは限らているのだから「背伸びしない」。

この姿勢が、俳優たちを発掘するとき、育てていくときにも役立っているのではないだろうか。

ひとりひとりの個性を大切にする。けっして慌てない。

 

人を見極めるときに渡辺が大切にしていることは、「努力できる才能」だ。

「芝居は上手いけど努力しない人と、芝居は下手だけど努力し続けられる人」だったら、後者のほうが良いと話す。

 

中村倫也は花開くまでに15年かかった。

普通だったら契約を切られてもおかしくない赤字つづきの年月を過ごした。

「あなたはそのままでいい」と中村は言われたそうだ。

「数字とかはもちろん大事だけど、気にしすぎてもね」と。

渡辺は、世間がいつ中村の魅力に気づくか楽しみだったそうだ。

確かに、中村の芝居はうまい。役によってまったく彼だと気づかないこともある。これはうまい役者の証拠だとドラマ好きの私は思っている。何をやっても同じ、という俳優、タレントも多いなか。最近はのほほんとした役柄が多いが、ぜひ幅広い役を演じてほしい。「全力!脱力タイムズ(フジテレビ)」での中川家礼二とのやり取りも機転がきいていてうまかった。とても愉快だったので、こういったコントもぜひまた観たい。 

「育つのに必要な年月というのは人それぞれ」だ、と渡辺は言う。「桃栗3年柿8年」。

 

また渡辺は、「事務所は実家のようでありたい」と話す。

渡辺が言うところの「実家」とは、

「平常心に戻れる場所」

「あなたのことをすごく認めています、ということを感じられる場所」だ。

これはすごい。

実家というのはそういうものだろうと、何気に流してしまいそうなセリフかもしれない。芸能界は過酷な世界だからそうなんだろうなと遠い事のように思うかもしれないが、ごく普通の生活だって同じだ。

人々は、学校や会社、満員電車で一日の大半を過ごしてストレスフルな状態で帰宅する。そんななかでさえ、家に帰りたくないと言う人がどれほど世間にいることか。家が渡辺の言うような実家の役割を果たしていないのだ。

娘や息子の場合は、家の居心地が良すぎていつまでも独立せずに居つかれてしまうのも困りものだが。それでも人間の心の安定のためには、一日も早く出て行きたい家や、二度と帰りたくない家、よりはいいような気がするが。

 

2年前、渡辺は私財を投じて財団を設立。

プロデューサー、マネージャーなどエンタメ界の裏方を担う人材を育成している。

渡辺は受講者を前にこう言った。

ぜひ今一度、何のためにここに来ているのかを

もう一回確認していただけますか。

自分のキャリアアップとか、人生を豊かにするためにエンターテインメントのことを学びたいという目的でしたら、多分この場はふさわしくないと思うんです。

世の中に自分をどういうふうに役立てたいのかっていうイメージをしっかり常にもちながら関わっていく、そこが本当に大事。

 

俳優をプロデュースするにあたって、渡辺は次のようにも語っていた。

「自分らしさって何?をちゃんと認識してもらう」

「自分が主語になって主体性をもって人に伝えることができることが大事」

「その人にしかない人生をその人らしく」 

「誰にでも個性はある。どの部分を磨いて引っ張り出すか、大切にするかということを、既定路線にこだわらずに開拓できるかどうかに尽きる」

 

渡辺にとってプロフェッショナルとは?

自分は何者であるのかを分かっている人。

他人と較べてできないことはする必要もないし。

何ができて何が得意なのか。まず自分を知ることがプロフェッショナルへの第一歩だと思ってます。

 

渡辺万由美がいかほどの人物であるのか、その本当のところは私には知り得ないが、このドキュメンタリー番組のなかで語られたいくつかのフレーズは、人々が心安らかに生きていくためにも十分に役立つキーワードだと思った。

 

「人生のプロフェッショナル箴言」としてまとめておく。

 

自分にしかない人生を「自分らしく」

背伸びをしない

育つのに必要な年月は人それぞれ

個性は誰にでもある

そのままでいい

これを実践するためには

「自分は何者かを自分で知っている」

つまり「嘘のない自分」「ありのままの自分」を認識している、ということがベースに必要だ。

誰かと較べて一喜一憂したり、世間やメディアの情報に振り回されたりしない自分。

自分の好きなこと嫌いなこと、得意なこと不得意なこと、これを認識していることはとても大切だ。

そして何よりも大事なのは、

あなたのことをすごく認めていますという人がいる

ということだ。

親兄弟姉妹、祖父母、親類、友人、先生、近所の人……誰でもいい。

そしてこれについては、自分が「認められる側」であるときと、誰かを「認めてあげる立場」になるときとがある、ということを心得ておきたいと思う。

つまり、「あなたのことをすごく認めています」と言ってくれる人は、あなたにとってどうしても必要な存在であり、同時にあなたは、「あなたのことをすごく認めています」と誰かに言ってあげることのできる存在である、ということだ。

 

渡辺からの箴言は、私自身が占いの仕事を通じて常に助言させていただいている内容とほぼ一致していた。

 

木村佳乃が渡辺のことをこう言っていた。

たとえ全員が自分に背を向けたとしても、この人だけは自分を信じてくれる、そう思える人だ、と。

自分自身にもそういう人がいてほしいし、また自分も誰かのそういう人になりたいものだ。

「今だけ金だけ自分だけ」が蔓延するこの世知辛い世の中にあって、これはヒューマニティの基本なのではないか、とすら思う。

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楽しかった中川家礼二中村倫也の共演 @kinirobotti

 

 「自分らしく」「自分らしさ」については

こちらの記事もご参考にしてください。 

risakoyu.hatenablog.com