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「G線上のあなたと私」第7話〜必要な時間 無駄な時間 人間愛〜

どうなるんですか、あなたたちは。

 

「G線上のあなたと私」TBS火曜夜10時

波瑠/松下由樹中川大志

 

今話のキーワードのひとつは「時間」。

 

まずは、幸恵(松下由樹)に「暇な時間」ができてよかった。

義母も娘も、ある意味独り立ちしてくれた。義母も、多くのことが自分できるようになると、手助けが邪魔になる。幸恵は娘のことを反抗期と言っているが、彼女としては実は、自分を押し殺して家族のために立ち回っている母への思いもある。

 

也映子(波瑠)は再就職が決まった。1年半かかったが、それはそれで自分にとって「必要な時間」だったのだ、と言う。

 

理人(中川大志)は、同級生の清水結愛(小西はる)からはっきりと告白される。が、

清水はオレじゃなくて別の人と時間を使ったほうがいい。そのほうがきっと楽しい。前にもオレもそう言われて、実際そうだったから分かる。ごめん。

と話す。

 

眞於(桜井ユキ)先生は、手の具合がよくなってきたと、演奏会に出るが、上手く弾くことができなかった。幸恵が偶然その演奏会を聴いていた。

也映子には、演奏家に戻るから自分の使っていたバイオリンを譲ると言っていた。

3人で眞於の家へ行こうとするが、今は理人がひとりで行くべきだ、と言う也映子。

たぶん今先生に必要なのは、なんにもなくなっちゃった自分の、なくしちゃった過去のことも、今のことも全部知っててくれて、受けとめてくれる人だと思う。それはあなただと思う。あなたしかいないと思う。

眞於と理人には、共有していた時間がある。

理人には、眞於を想い続けていた時間がある。

そして、理人は、何より眞於の時間経過を知っている。

 

自分が今ひとりで行ったら別の意味がうまれちゃうでしょう、と言う理人に向かってさらに也映子は言う。

全部、人間愛だよ。恋とか愛とかばっかりじゃないよ。あたしたちの間にあるものって。あたしたちって、この3人だけじゃない、眞於先生もふくめてだよ。

ここは人間愛でつながってんの。

 眞於を助けに行ってあげてほしい、と。

 

「時間」は大事だ。

Time Is Money「時は金なり」とは昭和に盛んに言われていたが、おそらくこれは「金儲け」の意味合いで使われていたように思う。時間は金を生む、と。ゆえに長時間労働、丁寧よりも迅速、即戦力が尊ばれてきた。

本来の意味は「時間は金銭と同じように貴重なものなので浪費せずに大切に使いましょう」という箴言だ、と思う。

根底にある価値観で受けとめ方はずいぶんと違ったものになるのかもしれない。

 

私の仕事はタロット占い師だが、No14「節制」のカードの意味をお伝えするとき、「無駄遣いに注意してください」と話す。するとまずほとんどの相談者さんが「お金の無駄遣い」を思い浮かべるようで、「時間の無駄遣いもありますよ」と伝えると、「ああ、そうかなるほど」とちょっと驚いたように頷く人が多い。

 

眞於は理人に「自分のことを想い続けていた時間」のことを無駄だったと少し前に言っていた。ゆえに、理人は、同級生の清水にも同じこと言った。そして、有意義な時間を過ごしてほしい、と。 

也映子は、再就職までの時間を自分にとって「必要な時間だった」と、ポジティブに解釈して受けとめた。これが正解だろう。その人の居場所にたどり着くまでに要する時間の長さ、というのは人それぞれで違うが、必要な時間は必ずある。

実は何が無駄だったのは分からない。もっと言えば、人生に無駄なことはない。理人だって眞於のことを想い続けていた時間、その間に心に去来したであろう様々な事々、感情、思索は、必ずや血肉となっているはすだ。

とはいえ、ネガティブに魂を吸い取られるような(「悪魔カード」に象徴される)時間を過ごしたり、怠惰、自堕落に過ごす時間は、確かに無駄と言えるだろう。恨み辛み、悪事を思ったりやったりしている時間が何であるかは明らかだ。

 

幸恵も、義母、娘の世話、夫への違和感など、家庭のことでいっぱいいっぱいの時を過ごしてきたが、必要な時間を経て、そして家族の理解も得て、自分だけの自由な時間がやって来た。

子育て中や介護中の人たちが、彼らの手が離れたとき、ふっと「あれ?暇だ」と思う気持ち、幸恵に共感した視聴者は多かったのでは?

松下由樹の演技が、とてもリアルでよかった。

 

さて、互いの愛に気づきはじめた也映子と理人。

「人間愛」と也映子は熱弁していたが、果たしてどうなるのかな?

私は「人間愛」を貫いてほしいのだが……。

やっぱりそれなりでないと視聴者は満足しないのだろうか。

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