なんだなんだこのセリフは。
「G線上のあなたと私」TBS火曜夜10時
この人、ちょっと前にも、え?ってなセリフを確か言っていた記憶がある。
バイオリン講師の久住眞於(桜井ユキ)。
気丈な女性像的なものを描いているつもりなのか?
私には、けっこう意地悪に聞こえる。
誕生日が近い眞於と也映子(波瑠)。プレゼントやおめでとうメールを複数受け取っている眞於を見て、星座も血液型も同じなのに全然違うと也映子は自己卑下に陥る。
私、眞於先生にはクラスの最上位女子の匂いを感じています。
何なんですかね。何が違うんですかね。
っていうか、この違いって、社会人になっても、たぶんもっと年取っても、変わらないんでしょうね。
眞於先生は一生、周りの人から「ほっとけない」って言われる人種です。いいですよね、ほっとけないって。めちゃくちゃ言われたいワードですよね。だって、それってもう、愛、じゃないですか、完全に。眞於先生は、理人くんからもお兄さんからも愛されてる。なんかもっとこう根源的なところで。
一方私はすっごく普通で。でも、キミはほっといてもだいじょぶそうとか言われるほどキャラも濃くない。なのに、わりとひどいことをさらっと言われる人種です。(略)
へこむことはへこんでるんですよ。なのに婚約破棄されても案外はやく立ち直っちゃう。だから周りも、さほど心配もしない。でも、誰からも気にしてもらえないって、キツイです。
それを聞いた眞於はこう言い放つ。
だったらそう言えばいいじゃないですか。気にしてもらいたいのなら、待ってるだけじゃなくて、誰かのスペシャルになる努力をしなきゃだめじゃないですか。自分からは何もアピールしないのに、察してくれって。そのほうがわがままな気がしますけど。
年齢も血液型も星座も同じですけど、ほんと私たち、全然違いますね。
おそらくこれは、眞於自身が自分自身のことを正直に理人の兄(鈴木伸之)に言わなかったこともあって振られてしまったという後悔からの自分自身への戒めの言葉でもあるのだろう。
ひと呼吸おいてもう一度このシーンを見れば、そのように受け止めることはできる。
だが、へこんでいる人間が誇張して発している愚痴への返答としては、なんて冷たい言葉だろう、とゾッとした。
この人、いわゆる女子力アピールで私だって努力してんのよ的なマウントしてんのか?と感じたほどだ。
何気に也映子を見る演技の目も怖い。
本当にへこんでウツ状態になっている人にこんな風に言ったら、アウトだ。ものすごく鋭いヤイバとなってしまう。
一方で、眞於は也映子の理人への気持ちに気づいているがゆえに、理人にかまってもらいたいならそういう態度を示したほうがいいよ、という厳しい助言であり、励ましでもあるのだろう、とは推測できるのだが……。
でもなんとなくこの眞於という人物は、つかみどころがない。得体が知れないというか。どういった立ち位置の人物として描いているのだろう。読みきれない私の鈍さか?
也映子のセリフにあるような人種は実際いる。
眞於の言うように努力が足りないとかいうレベルではないと思われる。
也映子の言うような人種が、眞於の助言を真に受けて努力したら、いや、努力しても、おそらくはうまくいかない。むしろ、良くない雰囲気にすらなる。
要するに、也映子は一匹狼的人種なのだ。そういう人は、それを自認して生きていくしかない。
ほっとけない雰囲気ゆえにかまってもらえる、というのは楽だったり嬉しかったりするかもしれないがそれが策略の結果だとすれば、そんな人生でいいのか?という疑問も残る。
このシーンだけ見たら、眞於という女性は、女性からすればイヤな女だ。思いやりのないセリフだ。
とはいえ、ウジウジとしている人を見続けていれば、一喝したくなるのも人間の常である。
私も、弱っているときにこんなこと言われたくもないが、一方で、也映子のような人を見たら苛ついてしまうかもしれない。
いずれにしても眞於の、かわいらしい笑顔と、也映子を見る冷酷な表情、桜井ユキの演技の勝利か?
最終シーンで理人(中川大志)が、也映子に誕生日プレゼントくれる。松ヤニ。
もうすぐなくなりそうだったから、と。
これって、見てくれてる、ってことだ。也映子は嬉しい。
眞於のことが好きな理人は、果たして也映子に惹かれているのか、それともただの人たらしなのか。
好きでもないのにこんなことをしたら、相手は誤解する。誤解されることをする男というのは実際いる。也映子も、理人の大学の同級生(理人のことが好きな女性)への態度には疑問を持っている。
人って、誰かに気にしてもらっている、誰かから見られている、誰かが見てくれている、に弱い。
someone to watch over me
その手法を巧みに使ってくるヤカラがいるので、世の女性たちはちょっと注意したほうがいい。
そのヤカラ(男)は、意識している場合と、無意識な場合とある。
意識的行為は詐欺に近い。
そんなつもりじゃなかった、は許されるのではなく、逆に詐欺よりも罪は深い、と私は思っている。無意識だからこそ、反省も罪悪感も芽生えることがないからだ。
私は恋よりも、3人の稀有な友情に心を寄せたいのだが。
さて、次回は……。
幸恵に相談する也映子。
缶コーヒーで手を温めながらバス停で話す二人。
学生時代みたい、とワクワクする幸恵。