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本当に怖いNo15「悪魔」カード「熱狂」①~アイドルにご用心~虚像と熱狂と自己喪失~モーゼ十戒「偶像崇拝をしてはいけません」~

2019年7月、ジャニーズ事務所ジャニー喜多川社長がお亡くなりになりました。多くの「アイドル(グループ)」を育て、世に送り出した人です。

この報道を機に、「アイドル」ということについて考えていました。

ちょうど「悪魔カード」と「サタニック・テンプル」についてあれこれ思いを致しているときで、モーゼの十戒に「偶像崇拝禁止」というのがあったなぁと思考を巡らせていたところ、そういえば「“偶像”って“アイドル”だよね」と思い至ったのです。

 

ジャニー社長の入院については、スクープ的にツィートしている記者がいましたが、テレビなどで正式には全く報道されないので、報道規制がかかっているのか、フェイクか誤報なのか、まあどちらかなのだろうなと思っていましたが、どうやら前者でした。嵐のメンバーが緊急搬送からしばらくしてようやくはじめてイベントでの会見のなかで明らかにし、あ、やっぱり本当だったのか、と思い、すばらしい報道規制だな、とある意味感心しました。一方で、これだけのことが一斉にメディアにできるということの恐ろしさも感じました。

間もなく死亡の報道があり、それからというもの、ニュース番組からワイドショーまで、「それ」一色になっていきました。

ジャニーズ事務所といえば、幼児、児童、少女から老女まで、グループや個人の誰かしらを知っているでしょうし、昭和から平成にかけての映像を懐かしく眺める人々もいることでしょう。下衆な事を言えば、このあとジャニーズ事務所はどうなるんだろう、のほうに興味関心を持つ人も意外と多いのかもしれません。純粋に心配するファン心情から批判、好奇心まで、様々でしょう。SMAPTOKIO、嵐…いろいろありましたし。

私からひとつだけこれらの報道について苦言を呈しますと、確かに才能あふれる素晴らしい人なのだと思いますが、けれどもこれほどまでに偉大な人物だと持ち上げるほどなのだろうかということは、私自身もファンだったグループもあるなかで、正直思わざるを得ません。良いことばかりではなかったはずですし、かなり厳しいことを言わせていただければ、私は、ジャニーズ事務所のタレントを「使わせられる」TVドラマというものが、日本のドラマの質を下げていった平成時代だったように考えています(日本のドラマは欧米に比べると明らかにレベルが低いです。予算のせいばかりではないと思います)。ジャニーズだけではありません。いわゆる「アイドル」を使って客寄せをするTVドラマや映画というもの(その主たるものが恋愛と病気もの)が、脚本家や演出家をはじめとする制作者たちのレベルを下げていっていると私は感じています。ちなみに欧米のドラマを観続けていると、日本のドラマが幼稚で観れなくなります。同様のことを言っている評論家たちもけっこういますので、個人的感想の域は越えていると思います(ドラマや映画、歌などについては別の記事に書いています)。

 

上にも書きましたが、ジャニーズ事務所のタレントたちを何と呼びますか?

「アイドル」です。

アイドルは、日本のテレビ放送が開始されてエンターテインメント番組が制作されるなかでつくられていきました。日本の場合、アイドルはアイドル歌手と言い換えてもよいのではないかと思ます。山口百恵天地真理キャンディーズ新御三家田原俊彦などの当時はまだ「アイドル歌手=スター」の要素が多分にあったように思いますが、最近では全く様相が変わって「私アイドルやってます」という若い子があちらこちらにいます。私の占いでも、「アイドルやってるんですけど…」とおっしゃる相談者さんに何人か遭遇しました。

私の昭和的通念のなかでは、アイドルというのはテレビなどに毎日のように出ている世間的な人気者、でした。今のアイドルは、昔のスターとは違って、実際に手が届くところにいるというのが特徴のようです。それゆえに起きてしまう痛ましい事件なども報道されて記憶に新しいところです(もちろん有名な大スターでも、ファンなどによる不法な事件は何十年も前からあります)。今は「アイドル」と言いますと、ジャニーズ、AKBから地元アイドルやいわゆる地下アイドルまで、多種多様です。

 

男女問わず昔のスター的アイドル歌手も昨今の地元や地下アイドルも、ファンを夢中にさせる存在であることに変わりありません。

以前の記事で「本当は怖くない悪魔カード」について書きましたが、本来的には、「悪魔カード」の「怖い側面」はいくつもあります。

今回はそのなかの「熱狂」ということについて考える良い機会を得ました。

 

古代ローマ時代の歴史を学んだとき「パンとサーカス」という言葉を聞いたことがあると思います。これは古代ローマの詩人ユウェナリスが、当時の世相を揶揄して書いた詩のなかに出てくる文言です。愚民化政策とも言われていますが、市民を操るにはパン(飲食)とサーカス(娯楽)に熱中させておけばいい、ということです。

今で言えば「グルメと芸能」でしょうか。古代ローマの娯楽は闘技場で開催される剣闘士の試合やスポーツ観戦です。剣闘士のなかには、現代のジャニーズ、アイドルのように、ご婦人方の気を惹く大スターがいたようです。

日本のニュース番組は、報道バラエティーと化していて、グルメと芸能娯楽スポーツ情報で溢れかえっています。まさしく「パンとサーカス」をうまいこと与えられてしまっているようです。それこそジャニーズ事務所のタレントの情報は毎日必ずと言っていいほど登場します。宣伝費が支払われているのでしょうか?それとも本当に大人気なので、シリアやイスラエル空爆、政治批評よりも比重の高い世間にお知らせしなければならないニュースなのでしょうか?日本のニュース番組だけを見ていると、芸能と流行りものばかりをいやでも教えてくれますが、世界で何が起きているのか分からなくなります。海外の人から、日本は芸能ニュースばっかりやってるよね、と指摘されてしまうのも反論の余地がありません。

 

女の子たちは小中学生にもなればいつの間にか、ジャニーズのどのグループの誰それが好きと疑似恋愛のように言い始めます。もう夢中です。そのことで張り合ったりもします。男の子たちもAKBだのなんだのに入れ込みます。もちろん、そうでない人たちもいます。藤井聡太棋士は、テレビは見ないと言います。

話はずれますが、昔はNHKしか見せないという厳しい家庭があったものですが、今ではNHKしか見ていないと、偏った情報に洗脳されていく恐れがあるような報道ぶりとなっています。

もとい、贔屓の俳優や歌手、タレント、スポーツ選手などがいることは決して悪いことではありません。気持ちが落ち込んでいた人が、そうした存在によって気力を取り戻して、明るく幸せに人生を送ることができる、ということだってあります。

 

しかし悪魔カードが示している「熱狂」は、そうした健康的な類いのものではありません。何かに「熱狂する」「夢中になる」ということは、「自分自身を見失っている」状態、「魂を奪われている」状態です。

「悪魔カード」が教えてくれているのは、「熱狂」ということの恐ろしさです。

自分自身が何かに夢中になってしまっているときのことを思い起こしてみれば体感的に分かると思います。「寝ても覚めても」そのことばかり、という心の状態になったことがありませんか?

分かりやすいのは「恋愛」です。恋は盲目とはよく言ったもので、先の記事に書きました「ソード8」もまさしく「それ」です。文字通り、このカードのキャラクターは目隠しをされています。そしてがんじがらめになっています。「虜(とりこ)になる」そのような状態です。

「悪魔カード」では、どんどん心を侵食されて、理性も常識もへったくれもなくなっていきます。夢中になる、虜になっている状態は、骨抜きにされる状態です。「熱狂」している人はしばしば理性から遠ざかって、「悪魔カード」の図像にあるように熱狂の対象に鎖でつながれた囚われ人になっています。自発的、かつ無自覚です。実はこの状態はとても危険です。自分自身で考えること、批判することができなくなってしまうからです。そして、自身を捕まえているカリスマによって操られていきます。

 

=====②へつづく

 

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