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「いつか、無重力の宙で」〜大人になるにつれ、この世界の重力は大きくなるけど、夢のつづきをはじめることはできる

 すてきな物語です

 

「いつか、無重力の宙(そら)で」2025年9〜10月 NHK夜ドラ

脚本/武田雄樹

出演/木竜麻生 森田望智 片山友希 伊藤万理華

   田牧そら 上坂樹里 白倉碧空 山下桐里(高校時代 回想)

   奥平大兼 鈴木杏 生瀬勝久 

 

 こういう平和なドラマは、民放ではつくれないのだろうか…だろうね。

 宇宙を見上げるドラマ、天文部のドラマは、この2025年にもうひとつあった。「僕達はまだその星の校則を知らない」(カンテレ 出演/磯村勇斗 堀田真由 他)である。夏ドラマだったので、9月に「いつか、無重力の宙で」と放送が重なっていた。民放ではつくれない、と今嘆いたが、「ぼくほし」は平和(さまざま問題は起きるが)で静かなドラマだった。できるじゃん。

 

 大阪の広告代理店に務める望月飛鳥(30歳)(木竜麻生)。マルチタスクに仕事ができるがゆえに、かつ、なんでも引き受けてしまう性格ゆえに、上司からも頼られ過ぎて大忙し。

 そんなに日々を過ごすなかで、ちょっと心乱れてしまったある夜、高校の同級生だった日比野ひかり(森田望智)と再会する。

 二人は高校時代、天文部を立ち上げた同士。いつか宇宙へ行きたいと語り合う。

 ひかりは宇宙飛行士になりたいという夢を追いかけ続けていたが、実は病気で断念せざるを得なくなっていた。

 すっかり忘れていた宇宙への憧れを思い出した飛鳥。二人で超小型人工衛星を打ち上げようという話で盛り上がる。

 ここから、夢の続きの物語がはじまる。

 かつての天文部メンバー仲良し4人組でどうしてもこの夢を実現したいと思った飛鳥は、水原周(片山友希)と木内晴子(伊藤万理華)に声を掛ける。ものすごく久しぶりである。それぞれの生活で忙しくてそれどころではないと断られるが、諦めずに話を持ちかける飛鳥。なんとか了解を得て、2年後の人工衛星打ち上げへ向けて動き出す。

 

 こういうことが素人でもできるのですね。JAXAで打ち上げるロケットに乗せてもらう。ただし、お金がものすごくかかる。2000万くらい?このドラマではクラウドファンディングなどを活用してなんとか集金できたみたいだ。お金にものすごく苦戦したというシーンは描かれていなかった。実際にはそこが一番のハードルになりそうだが…。

 ドラマではむしろ、超小型の人工衛星を組み立てるのが、ものすごく大変。大学教授(鈴木杏)や大学生たちの力を借りながら進めていく。

 その大学生のなかに、いささかぶっきらぼうで人付き合いの苦手な金沢くんがいる。次第に心を開いて、仲間に加わってくれた。優秀な学生。奥平大兼が演じている。

 奥平と言えば、「御上先生」(2025年TBS日曜劇場 主演/松坂桃李)の生徒役が記憶に新しく、また印象的だった。注目若手俳優だな、と思っていたら、やっぱり、という感じ。「御上先生」のとき同様、いい味出してました。

 

 このドラマは、現在と高校時代を行ったり来たりする。こういうのって、女性が多いような気がするが、私が他を見ていないだけ、か。

 最近では、「ブラッシュアップライフ」(2023年日本テレビ 主演/安藤サクラ)、「照子と瑠衣」(2025年NHK)、「アイミタガイ」(映画 2024年日本)など。

 小学校、中学校あるいは高校時代に仲良しだった2人、4人。そのままずっと友人関係だったり、いっとき離れたりはあるが、当時、互いに助けられたり、助けたりというある意味で深い仲だったこの人物たち。現在と過去の交錯がノスタルジックに視聴者の心に浸透してきて、人生のなんたるかを問い掛けてくる映像。そう、すなわち、年を重ねた人間なら誰しもが感じ、持っている時間の流れを追体験させられるような構成。

 それは、「いつか、無重力の宙で」のテーマでもある、かつての夢、やりたかったこと、途中で終わってしまっていること、諦めてしまったこと、などなどを思い出すのに十分なシナリオとなっている。ゆえに、いささかどこか懐かしくもあり、心地よくもあるのであろう、と思われる。

 

 このナレーションに象徴される。

 主人公の飛鳥について。

この仕事だってやりたくて選んだはずだった。けれど、誰かがやらなきゃいけない仕事を拾ううちに、自分がほんとうにやりたいことがよく分からなくなっている。

 

大人になるにつれ、この世界の重力は少しずつ大きくなっている、気がする。

(ナレーション/柄本佑)

 この表現いいですね。「大人になるつれ、重力が大きくなる」って。本当にその通りだと思うし、おそらく誰もが感じているのではないだろうか。

「今やっていることだってやりたかった仕事のはずだけど、慌ただしく過ごしていくうちに、自分のほんとうが分からなくなっていく」んだよね。そんなとき、何かをきっかけに、ふと子供のころや学生時代の夢を思い出す。誰にでもあることだ。

 そこで、そちらへ向かって思いっきり方向転換する人もいるだろうし、いやいや無理、生活もある、子育てもある、ローンもある、介護もある…と現状維持を選ぶ人もいる。後者のほうが大抵でしょうか。

 

 途中で友人を失うが、ミッションは成功。そして、飛鳥はある場所へと羽ばたいていったのでした。

 

「大人になるにつれ、この世界の重力は少しずつ大きくなっている、気がする」

 だからこそ、タイトルは「無重力」なのだ。

 世間の重石、世間が引っ張ってくる重力から解き放たれて飛び立つことは、実は私たち誰でも、いつでもできるのだ。どうしてやらないの?と視聴者に問いかけてくるドラマだった。

 ノスタルジーをドリームに変えて。

「いつか、無重力の宙で」 
タクシー運転手役は4人を応援する生瀬勝久 
©2025kinirobotti

 

追記

 このドラマ、内容も魅力的だったうえに、演者も魅力的だった。

 飛鳥役の木竜麻生については実は全く知らなかった。このドラマで認知しました。

 ひかり役の森田望智は、「虎に翼」(2024年NHK朝ドラ 主演/伊藤沙莉)その他で、すでに実力派俳優。大好きな俳優です。2027年前期の朝ドラ(バカリズム脚本)の主演も決まっている。楽しみだな。前期の現代ものはポシャることが多いけど、バカリズムと森田なら大丈夫でしょう。

 周役の片山友希は「ムチャブリ! わたしが社長になるなんて」(2022年日本テレビ 主演/高畑充希)のときから、あ、うまいなぁこの人と注目していた。「嘘解きレトリック」(2024年フジテレビ 主演/鈴鹿央士 松本穂香)では、コメディタッチの演技が秀逸だった。こちらも大好きな俳優です。

 晴子役の伊藤万理華については、ほとんどまったく知らなかったのだが、乃木坂46の元メンバーだそうで。乃木坂の人たちは演技がうまいなぁ、と感心。山下美月、生田絵梨花、白石麻衣などなど。この度の伊藤万理華も大変よかった。これから注目ですね。

 それぞれの高校時代を演じた面々も、適役だったと思います。

 白倉碧空(周)は、「宙わたる教室」「御上先生」映画「カーリングの神様」にも出演していて、私としては馴染みある俳優だったはずが、ちょっと記憶に残っていなかった。が、これから注目します。

 山下桐里(晴子)はちょっと情報がわかりません。けど、よかった。

 田牧そら(飛鳥)は、どこかで見たことあるなぁと思っていたら、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」(2019年〜NHK教養バラエティ)のアシスタントの子なんですね。なんと、あの子か。加えて、「PICU 小児集中治療室」(2022年フジテレビ 主演/吉沢亮)にも出演していたようなので、見覚えがあったのでしょう。

 ひかりの高校時代を演じた上坂樹里は、2026年の朝ドラ「風、薫る」で見上愛とW主演ということで、楽しみですね。