ねことんぼプロムナード

タロット占い師のetc

占いのつかみ「五分五分の原理」〜理系でしょう?〜

興味深いツィートを読みました。

昔、某ブランドのパーティーに占いの方が来られていて、私も占ってもらうことになった。冒頭から「理系のご職業ですか?」と訊かれたので、「違うんですが、多分一般的には理系とイメージされることが多いと思います…」とお答えした。あれ以上に人の面目を潰すまいと気を利かせた瞬間はない。

同志社大学(社会運動研究者)の富永京子准教授。

 

私も、同様の経験があります。特に霊能系の人などに、いかにも透視しています的な眼差しで「○年前に〇〇なことがありましたね?」などと言われて、ちょっと考えて、実はそのようなことは思い当たらないので、いやぁ特にぃ〜と多少の抵抗を試みながら、人生何事もないという年はないので、前後して似つかわしい状況があったなぁと心のなかで無理やりこじつけてから「ああ、はい。あれかなぁ」みたいな曖昧さを残しつつ肯定した、という経験をしたことがあります。

とある占いサロンで机を並べて占いをしていた先輩占い師に私の家族構成について訊かれたとき、「ちょっと待って、当てるから」と言われて色々提示されたのですが、全く当たらなかったということもありました。

 

私は占い師(タロット)なのですが、私について誰かが「当て物」をしたときに当ててもらったことが、悲しいかな、まずほとんどありません。

そもそも、どの程度のことをもって「当たった」と言うのか、という観点もあります。

例えば、来年お金が入ってきますよと言われたとしても、相談者のほうがどのくらいの金額をもって「お金が入ってきた」と思うかどうかは微妙です。大金なのか、いつもよりも多め、なのか。少なくとも収入が滞ったり貯金が減ったりすれば、お金が出ていくということになるのでしょうが、あるいはその前にお金が溜まっていたので大きな買い物をして貯金が減る、ということもあります。でもその場合は、大きな出費がある、という方に占いの焦点があたるかもしれません。

いずれにしても、人生や生活のあれこれは、物理的にも精神的にも複雑に絡み合っています。

 

それでも長い目で見たときに、そういえばあのときこんなことを言われたけど確かにそうなってるなぁ、なんてことはあります。私も実は、2人ほどそのような占い師と出会っています。

どのような占術でも、人生を長いスパンで捉えたときの解釈は、いわゆる「当て物」とは少し違うように思います。もともと持って生まれた星に基づく性質的解釈だったり、人生相談的な意味合いが大きい場合もあるでしょう。

兄弟姉妹が何人いるとか、祖父がいつ死んだとか、理系か文系かとか……。なかには当てる人もいるのでしょうが、そんなことを当てられてもなぁ…というのが正直なところです。

けれどもたぶん、それは相手を引きつけるための手段のひとつでもあります。富永准教授の例で言えば「社会の何か…を研究されている大学の先生ですね?」などと、口ごもりながら(何かははっきり分からないけれど)も言われれば、「え?なんで分かるの?」思ったりします。その途端にその占い師への評価が上がり、占い師は信頼を得ます。そしてその後に言われることは、良くも悪くも、すっかり信じ込んでしまうかもしれません。

もちろん、相談者にとっても占い師にとっても信じてもらうことは悪いことではありません。占いに限らず、信頼関係のないところでは非生産的になりますので。

しかしそれが高じると、いわゆる「洗脳」がはじまります。先回りして何かを言い当てるという行為は、カルト教団の(教組の)常套手段でもあるのです。宗教や団体ではなくても、小さな組織でも、一対一の関係性のなかでも、あらゆる場所にそれは潜んでいます。地下鉄サリン事件からママ友事件まで、これまでに数多く報道されてきました。いわゆるセールス(営業)のノウハウなるものを読んだり聞いたりしますと、これって宗教のお誘いと同じ原理だなと感じます。広告も同様です。言ってみれば洗脳させて、ときに恐怖心すら植え付けて購買欲を煽ります。

 

占い師も様々で、そうと分かっていてその手法を使う人もいるでしょうし、無意識に単純にやっている人もいるでしょう。占い師の私がこんなことを言ってはなんですが、当たるか当たらないかは五分五分で、男の子が生まれるか女の子が生まれるかの予想と同じと言えます(テレビドラマ「トリック」でもそのようなシーンがありました)。

富永准教授が出会った占い師も彼女については外しましたが、他の人では「当たった」という人がいるはずです。しかもこの占い師の場合、職業名を言っていません。教師、医師、看護師、研究者、会社経営者、IT企業、エンジニアなどなど。「理系のご職業」これはまさしく五分五分の原理。理系か文系か、男か女かです。どっちか言っておけば、どっちかなんです。確かに富永准教授は頭の回転が速くて喋り口調もハキハキとして論理的ですから、理系に見えますよね。

 

私は訊いちゃいます。占い時間は(ストリートですと20分、30分を選択する人が多い)短いのでできるだけはやく悩みの本質に近づいて、ご本人にも気づきを得てもらいたいので、表層的な当て物をエンタメ的にする時間はもったいないですし、そこじゃないでしょ、ということもあります。けれども悩み相談ではなく、どのくらい当たるかなというエンタメ心の方もおいでになるでしょうから、そんなときはズバズバ当ててくれたら楽しいでしょうね。

私の場合にはそのような相談者さんは、ストリートでもほとんどいませんでした。それが引き寄せ法則なのか、話しているうちに相談者さんが真剣に自分と向き合ってしまうのか、そもそも私が物理的な当て物をしないからなのか……分かりませんが。

 

そういえば当て物好きの先輩占い師は、そういったパーティー会場でのイベントに誘われることが多かったようです。まあ、そんなところで真剣な悩み相談をする人もいないでしょうから、招待客に楽しんでもらうための余興ということでしょう。占い師にとっては顔つなぎだったり、宣伝の場になったりするわけですので、ありがたい仕事なのだと思います。ゆえに「つかみ」が重要、ですね。またの機会にどこかに呼んでもらえるかもしれませんし、職業を当てられた人がその占い師を気に入ってくれて、直接占いを申し込んでくるかもしれません。

 

いずれにせよ、占いをしてもらう側のリスク管理としては、最初のつかみ、的中誘導スタイルは冷静に受けとめるのが無難です、ということは総じて言えるのではないでしょうか。私としては占い師として、洗脳的にならないように注意しています(つもりです)。

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