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映画「アイミタガイ」〜悲しくて温かくて優しい〜偶然 必然 運命〜ペイフォワード

 温かい物語。

 人生はシンクロニシティでできている。

 

「アイミタガイ」2024年日本

監督/草野翔吾 脚本/市井昌秀 佐々部清 草野翔吾 原作/中條てい 

製作総指揮/堤天心

出演/黒木華 中村蒼 藤間爽子 安藤玉恵 西田尚美 田口トモロヲ 風吹ジュン 草笛光子 他

 

 カメラマンの叶海(かなみ/藤間爽子)が取材先の事故で亡くなった。叶海は梓(黒木華)の親友。この話を軸に、その周辺が絡み合って物語が進んでいく。

 

 映画がはじまると、細切れに様々な人物、場面が映し出されていくので、いささか戸惑う。え?何?誰?別の話?

 

 すごく簡単にまとめて言ってしまうと、それらの人々と行為がすべてつながっていた、という話。

 いや、つながっていました、ではなく、こうやって人生というのは流れていく、進んでいくのです、ということを、悲しさと優しさのなかで教えてくれる物語。

 

 なんていうのかな、いわゆるシンクロニシティ。バタフライエフェクト、マイノリティ・リポート的な。偶然と必然、そして運命。

 人の運命の糸は、あらゆる方向に細かく張り巡らされている。それが重なり合って、また別のところで重なり合って……。

 

 時系列で言うと、梓の中学時代からはじまるこの「アイミタガイ」の物語は、梓と澄人(中村蒼)の結婚までの物語でもある。親の離婚をみてきた梓は結婚を考えていなかった。その梓が、結婚へと導かれていくそこまでの過程のなかに「アイミタガイ」がある。それを鑑賞者は、この悲しくも優しい物語のなかで見せられていく。

 

 ところで「アイミタガイ」ってどういう意味?

「相身互い」

同じ境遇にある者どうしが同情し、助け合うこと。また、その間柄。

(コトバンク)

「アイミタガイ」とは、「相身互い」と書き、同じ境遇の人々が互いに助け合い、支え合うことを意味します。誰かを助けようと行った行動が、巡り巡って、見知らぬ誰かを救い、やがて自分の元に返ってくるというニュアンスも含まれます。

(AIによる概要)

 

 梓の祖母(風吹ジュン)は「アイミタガイ」を、「世の中持ちつ持たれつお互い様」「貸し借りみたいな恩を売るようなあさましい言葉ではない」と話す。

「それだと、お人好しすぎると助けてばかりになっちゃわない?」と梓が尋ねると、

「誰からも何もしてもらってない人はいない。気づいてないだけで、いろんな思いが巡って自分のところに届いている、きっと」と祖母は静かに語った。

 

 梓と澄人も言ってたけど、「相身互い」という言葉、私も初めて聞いた。

 この物語を見たあとで、シンクロニシティとペイ・フォワードが混じったような意味合いを秘めていると私には思えた。

「ペイ・フォワード(Pay It Forward)」とは、日本で言うところの「恩送り」。誰かから貰った善を別の誰かに渡す、ということ。次々と善が渡されて、幸せが世界中に広がっていく。

 

 叶海が関わっていた児童養護施設を訪れて、叶海の両親が施設長に寄付をする。それは叶海の死亡保険金。そのとき父(田口トモロヲ)がこう話す。

仕事柄、本を読むことが多いんですけどね、今まで、良い人間しか出てこない小説は嘘くさいって思ってたんです。でも今はそういうものを信じたい。叶海のおかげですかね。これも。

 叶海の父親は図書館勤務だ。

 良い人間しか出てこない小説があるのかないのか、実際のところ私には分からない。ドラマでも悪人は必ず出てくる。そしてなぜか悪のほうが強くて善が負ける、そういうドラマはけっこう多い。私は苦手だ。

 ところが最近は、それこそ良い人ばかり、というか、極悪な存在がほぼいない(現実世界ではいるのだが)というドラマが増えて、おかげさまでストレスが減った。

 この映画には、それこそ悪人は出てこない。

「今はそういうものを信じたい」という叶海の父。

 この映画は、映画を観たあとにこの父親と同じ気分になるように仕掛けられているのかもしれない。それこそ「アイミタガイ」で。

 

 最後に、梓が「I meet a guy」(アイ ミート ア ガイ=アイミタガイ)と言う。

 さて、なぜ?

 梓が澄人と出会って、結婚することになったから、ですね。

 

 中学生時代の梓と叶海、制服姿のその思い出のシーンが良い。ちょうど先日終了したテレビドラマ「照子と瑠衣」(NHK2025)の思い出シーンと重なる。仲良しの二人が手を繋いで走る様子。互いに思いやり合っているということの象徴。

 

 これ以上は詳しい内容を述べません(とはいえ、かなりネタバレですが)。

 ぜひ、物語の神秘的な流れを新鮮に味わって、悲しくも温かくて優しいこの映画をご堪能ください。

 

「悲しくて温かくて優しい」と私は書きましたが、人生って、そういうものなのかもしれませんね。

「アイミタガイ」 ©2025kinirobotti

追記

 黒木華がvery goodなのは当然として、

 叶海を演じた藤間爽子(さわこ)という俳優、最近よく見かける。なんとなくイイ感じだな、と思っていた。

 検索したら、なんと「三代目 藤間紫」だそうで。日本舞踊紫派藤間流家元。そんなお家柄の人だったのですね。なんというか、やっぱりと言っていいのか、居るだけで独特の雰囲気が香ってくる。