私、波瑠ファンなので…
「アイシー〜瞬間記憶捜査・柊班」 フジテレビ 火曜夜9時
脚本/高橋悠也
出演/波瑠 山本耕史 森本慎太郎 倉悠貴 柏木悠 えなりかずき 石黒賢 他
いつもの波瑠と違う。声を低く太くして、大きな声を張り上げる。
波瑠が演じる柊氷月は、幼いころに、父親が母親を殺害する現場を目撃して以来、トラウマを抱えている。
警視庁捜査一課第3強行犯第1係「柊班」主任。
「瞬間記憶能力"カメラアイ"」の持ち主。一度見た物は忘れない。
犯人への過剰な処罰感情が湧いてきてしまうゆえに、柊が犯人に対して何かしでかしてしまうのではないか、と監察官から監視されている。
1話、あるいは2話完結で、それぞれの事件が解決されていく。どれも柊の記憶のなかにある映像を手繰っていくことで、真実を見極めて犯人逮捕に至る。
第7,8話の、ライバー殺人事件は、現実におきた、ライバー女性が高田馬場路上でライブ配信中に刺殺された事件と重なり、私の頭のなかで実際交錯してしまった。この人(ドラマの犯人)800万円貸してるんだよね、などと言ってしまう始末。
私としては、波瑠のいつもと違う演技を見ることができて、興味深かった。
特殊能力を持った刑事が活躍する刑事ものとして、それなりに楽しめました。
ひと言だけ言わせていただければ、こういった場合、すなわち家族が殺人犯だったりする捜査員や軍人、アメリカのテレビドラマ「クリミナル・マインド」にも出てきたが、このドラマのような感じで監視されたりはしていなかった。むしろ、カウンセリングなどによってケアされているし、加えて、その経験を生かした捜査をさせたりしていた。日本に「ケア」という環境が整っていない証拠か…。
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この気味の悪いホラー感が癖になる…
「秘密〜THE TOP SECRET〜」フジテレビ(カンテレ)月曜夜10時
脚本/佐藤嗣麻子 演出/松本佳奈 他 原作/清水玲子
出演/板垣李光人 中島裕翔 門脇麦 高橋努 國村隼 他
過去に映画になっているということで、そちらを観た。
「秘密 THE TOP SECRET」(2016年日本)
監督/大友啓史 脚本/高橋泉 大友啓史 他 原作/清水玲子
出演/生田斗真 岡田将生 栗山千明 松坂桃李 他
もう10年近く前の作品なのですね。
テレビドラマでは、青木と鈴木がそっくりということで、中島裕翔が二役を演じているが、映画では、なんとなく似てるって感じで、青木を岡田将生、鈴木を松坂桃李が演じている。
映画は、テレビドラマの第1話のエピソードが描かれている。
犯罪者の脳のなかを見る作業(MRI捜査)は精神によろしくない。そして、そんな、すなわちパンドラの箱から飛び出した邪悪ばかりが世の中にはあるかのような印象を捜査員たちに与えていく。映画の鈴木はとくに、そのことを気にしていた。
だが、最後、サイコパスのシリアルキラーに殺された少年(望月歩)のパートナーだった盲導犬(少年は盲目なので脳のなかの映像を解析できない。そこで犬の脳のなかを覗いた)の脳のなかの映像に、草原で戯れて走り回っている犬が見た世界が映し出される。人々も犬と触れ合って嬉しそうだ。そんな幸福な世界があるのだと、薪(生田斗真)が、死んでしまった青木(松坂桃李)に語りかける。これはまさに、パンドラの箱のなかに残されていた「希望」を見つけたかのような瞬間である。
ちなみに、望月歩が少年役(当時まだ16歳くらいか?)だったので、似てるなと思ったが明確に彼だとは判別できなかった。エンドロールを見て、あれ?あ、やっぱりそうか、と認識した次第。
さて、冒頭にも書いたが、犯人や被害者の脳の記憶の映像を見る(MRI捜査)、という作業は、なんとも気味が悪い。
脳内の光景のなかに、空想も混じっているらしい。あるいは、幽霊や悪魔のようなものを見たとすれば、それが実物ではなくても、脳の映像に刻み込まれている。
空想も見られちゃうって……見られたくないなぁ、と誰もが思うのでは?悪いことは考えられない、とはこのことか。
何が気味悪いといって、脳のMRI画像がコンピュータに映し出されるのだが、その映像が気味悪いのだ。なんと言いますか、第三者が撮影するカメラ映像ではなくその人自身の視点ということもあって、アメリカの警察のボディカメラ映像と考えれば健全なのだが、視野の狭い、いささかピントの緩い、独特のぎこちない光景に作り込んであるので、ホラー感が増す。
それがね、ほんとうに不気味なのです。これから殺す、殺されるからという理由ではなく、ただただ薄気味悪いし、息苦しい。
その映像を頼りに、真犯人を割り出していく科学警察研究所法医第九研究室(通称第九)の捜査員たち。犯人と被害者の心の機微も十分に描かれており、人間のなんたるかを問いかけてくる作品となっている。
近未来のSFドラマということだが、私としてはホラードラマとも感じている。気味が悪い(このワードばかり使ってごめんなさい)が、たいへん面白い。
最終話、すなわち物語の締めくくりは、正直なところ映画版のほうが私は好きだ。どうやらテレビドラマのほうがより原作に近い、ということではあるが。いずれにせよ、2時間くらいの映画のなかで原作のすべてを描くのは難しいだろう。
ドラマでは「秘密」ということに焦点があたっている。最終話での、捜査員・岡部(高橋努)のセリフにそれが凝縮されている。
人の脳を見て、個人の秘密を侵害し続けるというこの捜査を、おのれの倫理観や、犯罪者への脳の恐怖や残酷さに押しつぶされそうになりながらも、それでも誇りをもって続けてこれたのは、薪室長だったからです。室長が誰よりも情を重んじる方だったからです。あの人が常に正しい姿を見せてくれたから、我々はやってこれたんです。
映画では、上にも書いたように、犯罪者の脳のなかにある邪悪と、犬の脳のなかに残っていた幸せそうな映像が対比になっており、幸福な世界がラストで示される。
ドラマのラストは、薪と青木の関係性により多くのシーンが使われている。
薪を演じた板垣李光人は、好演だった。見事だったと思う。迫真の演技とはこのことを言うのではないか。これほどの緊張感を維持するのはたいへんだったのでは?と素人ながらに思う。薪(板垣)の華奢な身体から爆発する正義感が、極めて清冽にほとばしる全11話だった。まだ23歳。
中島裕翔は、鈴木と青木の二役をしっかり演じ分けていた。とてもよかったと思う。以前から中島の演技には注目していたが、(「HOPE〜期待ゼロの新入社員〜/2016年フジテレビ/韓国ドラマのリメイク」は特に印象深い)年を重ねて、さらに良くなったのでは?ちょうど同じ冬ドラマの時期に、WOWOWで放送されていた「ゴールドサンセット」にも出演していた。こちらもよかった。そして、こちらも同棲カップルの役だった。所属事務所を移籍すればいいのに、と思う。
捜査員・岡部の役どころがよかった。演者は高橋努。以前からよく見かける俳優だが、ここ最近のテレビでの活躍が目覚ましい。「虎に翼」(NHK朝ドラ2024年前期)の新聞記者・竹中もドラマを盛り上げていた。
原作者の清水玲子(漫画家)は、なんと、ウィキペディアによると、漫画家になるにあたって萩尾望都から影響を受けている、ということ(私は萩尾望都ファン)。
でも、あ、それで、と思ったが、薪と青木(鈴木)の関係性。薪は青木(鈴木)のことが好き、なのかな?それを匂わせるシーンがいくつかあった。
萩尾望都の「トーマの心臓」「ポーの一族」も、少年愛が背景にある。
「ミステリと言う勿れ」の田村由美、「秘密」の清水玲子、この年代は、心理的に、あるいは深層心理的に、深いものの見方と表現力を持っている世代なのか?清水は1962年生まれ、田村は1963年生まれ。ついでながら、小説家の宮部みゆきは1960年生まれ。1960年界隈は、この手の心理的展開を表現する天才が多いのか?
テレビドラマの「秘密」の脚本を手掛けた佐藤嗣麻子。夫は映画監督の山崎貴。山崎といえば、「ゴジラ−1.0」で、2024年3月、第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞した、あの映画監督だ。ちょっとびっくり。
びっくりついでに、佐藤嗣麻子は、「半神 SUZY&LUCY(1989年)」を、ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクール卒業作品として制作している。「半神」は、萩尾望都の短編作品。結合双生児の心の動きが、巧みに、いささかホラーに描かれている。
上に書いたように、清水玲子も萩尾望都の影響を受けている。このシンクロニシティは何でしょう。
清水玲子、佐藤嗣麻子も然ることながら、萩尾望都、恐るべしである。
先日、「萩尾望都という物語〜女子美での講義より2〜」を購入したばかりだった。これもシンクロと言えよう。
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これ、おもしろい!
「問題物件」フジテレビ 水曜夜10時
脚本/松田裕子 原野吉弘 北浦勝大 原作/大倉崇裕
出演/上川隆也 内田理央 宮世琉弥 浜野謙太 本多力 船越英一郎
上川隆也と内田理央の掛け合いが抜群である。
内田理央といえば、私の印象に深く残っている(内田を見るといつも思い出す)のは、「海月姫」(2018年フジテレビ)のまやや役である。これはなかなか強烈な役どころだった。
まややといい、「問題物件」の若宮といい、このようなコメディを違和感なく演じることができるということは、俳優としての能力の高さを伺わせる。
なかなかこういった雰囲気を演じきるのは難しい、と思いますけど(私は俳優ではないので、身勝手なことを言っているかもしれませんが)。
上川もさらに演技の幅を広げたのではないだろうか(大ベテランに失礼かもしれないが)。二枚目俳優がここまではじける、って…。
「大島不動産販売」の「販売特別室」なる部署に配属されてしまった若宮恵美子(内田理央)。そこには、オカルトチックな不動産問題が舞い込んでくる。 それらに対処していくのが若宮の仕事。
室長は大島雅弘(宮世琉弥)。大島不動産販売の現・社長(船越英一郎)の甥。7年前に交通事故で両親(父親が前・社長)を失い、雅弘自身も車椅子生活に。家に引きこもり(そこが販売特別室の事務所になっている)、愛犬の犬太(いぬた)と暮らしている。実は心霊マニアで、問題物件に興味を示すが、決して出向くことはなく、若宮に任せっきり。
若宮が対処しているところへ突然姿を現しては、次から次へと問題を解決していくのが、犬頭光太郎(上川隆也)。そして突然いなくなる。犬太と同じ黄色のコートを着ている。
犬頭と雅弘の関係、犬頭は犬なのか?問題、という謎を抱えつつ、ドラマは1話ずつ進行し、都度、問題は解決していく。
心霊現象と思わせて、起こった謎には然るべき理由、原因があり、犯人がいる、という結末。そこがちょっと残念だ。せめて1話くらい、解決のつかない心霊現象を扱ってほしかった(そこはスピンオフドラマが配信されてはいるのだが、配役が違う)。
物語の最後では、雅弘も外へ出て若宮とともに事件を解決していく。よかった。
犬頭の友人で、事件解決の手伝いをする元・刑事で探偵の有村次郎(浜野謙太)が、愉快すぎる。このコメディアンぶりは最高だ。浜野は、お笑い芸人ではなく、ミュージシャンなのに、こんな愉快な演技ができるってどれほどの才能なんだろう、とけっこう驚愕する。人の才能ってすごいな。
そうそう、結局、犬頭は犬太だったのか?
シーズン2を望む。