ねことんぼプロムナード

タロット占い師のetc

無理の話〜止められない読書と読書の限界

 めまいを発症してから、読書には注意してきた。

 長い時間続けて読まないこと。下を向いて読まないこと。

 30分〜60分に一度は身体を動かすこと。すなわち腕を回して肩甲骨や首をほぐす。

 次から次へと読まないこと。

 

 だが、ずいぶんと具合が良くなってくると、上記注意事項は守っているつもりだが、それでも、身体を動かすことなどついつい忘れてページをどんどん捲ってしまうし、次の本次の本と読んでしまう。

 この所それだった。そのせいなのか、再びめまいが戻ってきた。ぐるぐる巻にはまだなっていないものの、くらつく。ちょっと気持ちが悪くなったりもしたので、これはヤバイと焦った。

 けれども、こんなこと(こんなことではないかもしれないが)で読書を中断することはしないと決めて、読み続けることにした。

 

 そのことを、担当のマッサージ師さんに話すと「それでいいですよ」と言いながら、私の身体をほぐしてくれた。そして「普通はそこでやめちゃいますよ」と言う。つまり、そんなふうに具合が悪くなったら読書をやめる、ということだ。「そうですかね」と私が言うと「そうですよ、そこが〇〇さんらしいんですよ」と。

 やりたいことをやらないと逆にストレスになるしね、と二人で確認しあった。私ももう人生の後半、いや終盤か?ゆえに、具合が悪くなろうがどうしようが、読書はやめない、と決めた。読書だけではなく、好きなことは諦めないと決めている。またあとで、できるときに、なんて言っている時間はないのだから。

 でもねぇ、気持ちが悪くなると何もできなくなるからねぇ。それだけは、どうか来ないでくださいと祈るしかない。そう言えば、大学病院の若い医者が言っていた。めまいはね治ってくれって祈るしかないのよ、と。

 そして施術のあと、首の下のところにまったく指が入らなかったのが柔らかくなりました、と教えてくれたマッサージ師さんは、帰り際、1ページ読むごとに肩を回してください、と言った。え〜、1ページ?ってとのけぞる私。それはさすがに…と二人で笑った。笑って誤魔化したけれど、彼女のアドバイスは冗談ではなく本気だったみたい。

 いやぁ、本当にさすがに1ページごとにストレッチって、絶対無理でしょう。

 

 そのマッサージの日、予約していた本が届いたので図書館から引き取った。ある哲学者の分厚い本だ。私の好きな日本の哲学者が翻訳しているので、読んでみようと思った。

 目次に目を通して、それからちょっと読んでみた。これを根を詰めて読んだらめまいが酷くなりそうだ。どうしよう…。

 いや、それよりも……なんだこれ?

 全体的に何について書いてあるのかは大体把握した(つもり)なのだが、なんていうのか、超専門的というか、なんでこんなにややこしく書いてあるのか(論文とか論考とかはそういうものか?)。そうそう、近頃エッセイを読んでほっこりしていたので、その落差が大きすぎるのかもしれない。とはいえ、他の思想書は普通に読めるのだが。

 〇〇先生はよくこんなもの訳せるな、とまで思ってしまった。さすが学者。

 読みはじめてつまらないなぁと思ったり、どうしても入り込めない本を読まずに返却することはたまにあるが、この本はそういう意味で読みたくないのではない。読みたいと思うのだけれど、読めない。たぶん私には専門的過ぎるのだろう(専門的過ぎても読めちゃうものもある)。

 ……この本、無理。

 そしてこの書籍は、返却期日までしばらく我が家で静かに眠っていた。もしかしたら2週間の間に読みたくなるかもしれないので、すぐに返却はしなかった。

 

 そんななかで、良いこともあった。

 プラトンについて話せる人が現れた。

 プラトンが好きだという話をできる人はめったにいない。そんなこと言ったらひかれてしまう。

 けれども私もこの年令になってようやく、そういう人と出会えたことは本当に嬉しい。出会えず死んでいくよりずっといい。

 いや、正確に言うと、実際に会えるわけではない。ある学者さんが、ネット配信で話してくれている、それを拝聴するだけ。以前から、この人もしかしてプラトン好きなのかな、と思っていたのだが、どうやらそのようだと確信した。やっぱりね。

 その上、なんと言ったらいいかうまく表現できないが、この人のプラトンの受けとめ方が私と近い、と感じている。少し前に、どこかで数名の学者たちと対談しているなかでのちょっとしたひと言にもそれを感じていたのだが、その通りだった。

 こんな感じで、すなわち、親しげに熱心に楽しそうに、ときに批判的見解があることも交えつつ肯定的に語ってくれる学者はたぶん他にいないのではないか、と思ってしまうほどに感激している。その語り口調に深い愛情すら感じる。それは好奇心や興味なのかもしれないが。私も先生の話を聴きながら、面白がったり思わず笑ったりしている。

 

 プラトンは「エルの物語(霊界について書いている)」とか「ティマイオスアトランティスについて書いている)」など不可思議なエピソードも書き残していて、言ってみれば神秘的な人でもある。

 あるYoutuber番組、都市伝説やAI系の話、社会の様相が全く変わってしまうという未来予測の話のなかで、占い師とか霊能者とか今はちょっと馬鹿にされているような職業の人たちが頼られることになるかもしれない、という話を聞いた。

 私の持っている情報(数少ないが)の点と点が結ばれた。そしてふいに、プラトンの復活ではないか、と思わず叫んだ。

 そういえば、15〜16世紀のルネサンスと言われる時代にもプラトンは復活したのだった。現代の社会的状況を鑑みるに、新しいルネサンスの時代かもしれない。

 

 ということで、無理の話を2つ書いた。「読書はやめられない」and「この本は読めない」。正確に言うと「読書はやめられない」but「この本は読めない」かな?

 そしてそんななかで、実は「プラトン全集」を最近手に入れた私は、複数回読んでいる作品も、初めて読む作品も、体調に揺さぶられることなく、しかし体調に留意しつつ(本当に読めなくなったら困るので)読んでいくこととしよう、と思う。

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