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「匂い」の不思議〜コロナ後遺症の嗅覚障害〜認知症〜匂い(臭い)の順番

 コロナ感染の体験談を、先月(2023年1月)こちらで書いた。

 感染途中から現れる症状と後遺症である嗅覚と味覚障害について、私自身が体感した経緯をそこで書き記した。

 特別に観察しようとしていたわけではないが、日々の生活のことなので、いやでも意識せずにはいられない。なにしろ不味くて食べ物が食べられないというのは、本当に辛かった(詳しくはこちらで→記事末にリンク)。

 

 すでに記事にも書いているが、嗅覚については「何もにおわない」という事実に気づいたときには驚愕した。

 私は常日頃「におい」に敏感なタチで、匂いにこだわりすら持つタイプなので、この嗅覚障害については、あえて積極的にさまざまなものの「におい」を頻繁に嗅いで日々の具合を確認するように意識していた。

 周囲が無臭だと気づいたときから数日すると、次第にうっすらとにおってくるようになった。気づいた限りでは、最初の段階で戻ってきたのはアロマや香水だった。

 それからいわゆる消臭芳香剤。これについてはとても興味深い体験をした。

 おそらく部屋というのはさまざまな「におい」が入り混じっているのだろうけれども、それぞれの「におい」について細かくは判別はできないし、なんなら慣れているので「におい」を感じなくなっている。部屋で静かに何か作業しているときに、いちいち「何かのにおい」を感じることはまずない。

 コーヒーを入れればその香りがぷ〜んと香ったり、花瓶の花が匂ったり、お菓子の袋を開ければそれ特有のニオイが鼻をついたり……あるいは、外から何かにおってくる、というようなことはある。が、普段生活しているなかで、24時間何かの香りを感じ続けている、ということはない。たまにものすごくキツイ香りの芳香剤などが頻繁に鼻を刺激してくる、というお宅におじゃましたことはある。あるいは生花も不思議なもので、ものすごく香るときというのがあって、フリージアなどはその典型ではないだろうか。

 消臭芳香剤(私が使用しているもの)は、匂ってくるときとそうでないときがあって、なおかつ、あまり生活の妨げにならないようにつくられているのか、慣れなのか、次第にその匂いを頻繁に感じることは少なくなってくる。ともすれば、まったく感じないかもしれない。そもそも「消臭」なので、部屋の悪臭を吸い取ってくれるのが芳香を放つよりも大きな仕事にちがいないのだが。

 家のなかの「におい」がにおわなくなっていたせいなのか、ある日外出(医者から言われた国指定の療養日数を過ぎています)から帰宅して玄関ドアを開けると消臭芳香剤の匂いだけがすぅっと香ってきた、という体験をした。匂いに敏感なタチの私がそのとき感じたのは、家のなかの他の「におい」がまったくなくなってその芳香剤の匂いだけがそこに存在している、そんな感じだった。目の奥でそれは映像化されたのだが、それを言語化するのは難しい。つぅ〜とその匂いだけが線のようになって漂っている感じ。私はそのとき「他のにおいが消えているからこんなふうに匂うんだ」と思った。「におい」の姿を目撃したような気がした。

 それから私は「におい」の戻ってくる順番を意識しながら生活していた。前の記事にも書いたが、そこで私がたどり着いた結論があった。良い香りから戻ってくる、だった。逆に言うと悪臭、くさいにおいは順番としては後、だった。本当に最後の最後に戻ってきたのは便の臭いだった。それと同時に、近所の家の洗濯洗剤か柔軟剤の臭いが戻ってきた。これは戻ってこなくてもよかったのにと思ったが、常日頃から「くさい!」(正直迷惑)と感じていたその洗剤だか柔軟剤が、この度の体験によって悪臭であることが証明された。

 この体験と検証をちょっと自信ありげに言っているのには理由がある。

 

 私の観察、感覚が、あるテレビ番組のコーナーで確証を得たからだ。これにはかなり驚いた。と同時に、やっぱりそうかと腑に落ちた。

 2023年2月3日金曜日、テレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー」のなかの特集コーナーだった。出掛ける準備をしながら、何気にテレビをつけていた。「嗅覚障害と認知症」について、医師だか学者の人が解説していた。

 嗅覚と認知症は関連していて、嗅覚が衰えてくると認知症が進んでしまう、という話だった。嗅覚というのは五感のなかでも特異な感覚で、とても大切なのだという。

 よかった、嗅覚が戻って、と私はとりあえずほっとした。

 加えて「におい」というのは、悪臭からにおわなくなっていく、と医師だか学者だかの人が言っていた。

 え?それって…。すなわち私の体験、良い匂いから戻ってきて臭いにおいは最後に戻ってきた、という経緯と符号するよね。逆順だけど。

 やっぱりそうだったんだ。この瞬間、私は合点がいき、そして自分自身の感覚にえらく確信と自信を得たのだった。

 

 嗅覚障害が起きているときは、柑橘系のにおいを嗅ぐようにすると良いそうだ。できれば自然の香り。私としてはアロマ、ハーブなんかも良いのでは、と素人ながらそして自分の体験からちょっと思っている。あと、嗅ぎ分けて感覚を研ぎ澄ませる、とか。

 

「におい」と「思い出」の結びつきについても、この番組のおかけで明確になった。

 匂い(臭い)を嗅ぐと、その匂いを嗅いだときの状況が鮮明に浮びあがってくる、という体験のない人はいないだろう。あるいは、思い出とともにそのときの匂いが脳内で香ってくる、なんてこともある。

 それは「嗅覚が記憶をつかさどる海馬と強くつながっている」から、なのだそうだ。

 なるほど、とこれもひどく合点がいった。

 

 朝の匂い、夕刻の匂い、図書館の匂い、博物館の匂い、砂漠の匂い、雨の匂い、おひさまの匂い、幼稚園のときのバスケットの匂い、新しい本の匂い、えんぴつの匂い、包装紙の匂い、人のにおい……。

 

 嗅覚味覚障害の後遺症の間、どちらだったらなくても耐えられるか、と最悪のことを空想した。味覚は食事ができなくなるから、やっぱり味覚のほうが大事かな、などと安易に思ったりしていたが、嗅覚障害が認知症を進めてしまうということなので、それはそれでまた大変なことだとあらためて思った次第。

 味覚障害は日々の食事でその変化に気づきやすいが、嗅覚障害のほうは意識したり、何かきっかけがないと気づきにくいと思う。私は頻繁に匂いを嗅ぐくせがあるし、そもそも匂いに敏感なので匂いわないという現象が起きれば早いうちのどこかで気づくと思うが、そうでない人は、ちょっと意識してみるのもいいのかもしれない。

 でも、悪臭からにおわなくなってくるということなので、そこは死角になる恐れがあるかもしれない。例えばあえて下駄箱のにおいとかを意識するといいかもしれない。便のにおいは毎日のことなので、意識しやすいかな。

 

 そういえば、ここ3年間はマスク生活だったけれど、マスクを外したときの外のにおいが新鮮だったりした。

 「におう」って精神衛生的にも大事なのだと思う。

花を香るツトム

余談

 そういば安住アナウンサーも、いつも間にか普通の声に戻っていた。

(この感想の元ネタは下の記事にあります)

 

risakoyu.hatenablog.com