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「家庭教師のトラコ」「初恋の悪魔」〜ユニークさが光る〜視聴率爆死?でも良いドラマだ〜2022夏ドラマ終②

 7月の時点では、今シーズンは面白そうなドラマが多いなとワクワクしたが、見始めると「あれ?」って感じにならないでもなかった。

 

「家庭教師のトラコ」日本テレビ 水曜夜10時

脚本/遊川和彦

出演/橋本愛 中村蒼 鈴木保奈美 板谷由夏 美村里江

 このドラマもまさにそれだった。

 2話目を観て、実は視聴中止しようかと本気で思っていた。ゆえに、録画はしているが観てない、という状態が2〜3週ほど続いた(同じように思った視聴者も多かったようで、視聴率が低迷していようだ。「となりのチカラ」に続いて爆死、と書いている記事もあったが「となりのチカラ」もたいへん良いドラマだった、と私は思っている)。

 ところが、やっぱり観ておかないとドラマエッセイを「書けない」な、遊川作品でもあるしと思い、観た。

 観つづけたらはまった。面白かった。

 お金の正しい使い方を生徒とその家族に教えていくその過程が、犯罪スレスレの行動を取りつつも、すべて核心を突いており、さすが遊川和彦の社会派ドラマ!と見直した。犯罪スレスレと書いたが、いや、いくら気づかせるためとはいえ、明らかな犯罪もいくつかあった。

 最後の最後に、銀行の頭取(生徒の父親)から恐喝して取り上げた10億円は、この頭取が寄付したというアナウンスとともに、寄付される。これがトラコのやり方だ。これは良いやり方だ。お金をぶんどられた側は、マスコミの取材に「寄付したのは自分ではない」と言っても信じてくれないし、だからといって、真実を話すわけにもいかない。実はきれいなお金ではないからだ。本人に恨みは残るだろうが、世間的には良い人という評価になるだろう。

 

 2話あたりで観れなくなった理由が、最終話が近づくとともに分かってきた。すなわち、トラコの生い立ちと怨念である。その気持ちが、世の中を良くしたい、世の中のお金の使い方を改革したいという熱情の根元にもなっているわけだが、それがあまりにも切迫していて痛かったのだと思う。

 そういったネガティブな背景と感情が遊川作品の真骨頂でもあるし、そこが魅力なのではあるが(「女王の教室」「家政婦のミタ」「ハケン占い師アタル」「純と愛」etc)、今回は妙に引っかかっていた。橋本愛の演技がうまいからなのか、問題の解決方法(トラコから生徒に出される質問)が無機質で不親切だからなのか(本質は愛に満ちた答えなのだが)。それを言ったら「女王の教室」の阿久津真矢先生だって相当な手練手管だったけど。

 

 けれども、「痛い」ままで終わらなくてよかった。「純と愛」という前例もあるので(朝ドラにもかかわらず悲劇で終わった)、もしや、と思ったりして、トラコが黙って姿を消して行方知れずという最終話すら予想していたが、予想は裏切られた。

 幼い頃に母に捨てられて辛い思いをしてきたトラコは、今や3人もの母の愛情に包まれている。キャラを演じることなく、素の自分で生徒たちに勉強と人生を教え、助けることができる。

 

 観るをのやめないでよかった。

 とても良いドラマだった。橋本愛も好演だった。

 

「初恋の悪魔」日本テレビ 土曜夜10時

脚本/坂元裕二

林遣都 仲野太賀 松岡茉優 柄本佑

 犯罪ミステリー。

 こちらも視聴率が低迷してしまったようだ。前作の「大豆田とわ子と三人の元夫」もやはり視聴率が低かったらしい。面白かったのに。

 坂元裕二遊川和彦の作品は、実は良質なのだが(私はそう思っている)、このところ視聴率が取れていない、という共通点に見舞われているようだ。

 

 上の4人(二人警察官で二人警察署職員)がユニークな捜査方法で事件を解決していく、という展開が前代未聞だった。

 もうひとつ大きなテーマがあって、仲野太賀演じる警察職員の兄で殉職した刑事がかかわっていた事件の解決(兄を殺した犯人探し含む)。

 さらにそこに絡みつつ流れる松岡茉優演じる警察官の二重人格問題。

 幾重にも重なっていく怪しい人々が登場する物語だった。最後はすっきりと解決へ向かったが、一方で切なさも多少残る。

 人が罪を犯すその背景の意味とサイコパスシリアルキラー

 闊達な性格と穏やかな性格。

 二項対立。

 「初恋の悪魔」というタイトルから、恋愛ドラマなのか?と疑いつつ観ていたが、恋愛要素はあれど決してうるさくも安っぽくもなく、そちらがメインでも視聴者誘引でもなかった。

 ユニークな性質で孤立することの多かった人生を送ってきた警察署の4人が、事件を通してさまざま体験するなかで、自分自身を取り戻していく物語でもあったのかもしれない。

 

 坂元裕二遊川和彦、来年もまた唯一無二で、考えさせられる、そして痛快な物語を期待している。

 視聴率と質の高さは比例しないことが明確に証明された2作品だった。

「家庭教師のトラコ」a la TsuTom ©2022kinirobotti