ねことんぼプロムナード

タロット占い師のetc

スピリチュアルとお金〜どう考える?

 スピリチュアルとお金の問題は、繊細でややこしい。

 

 ナオキマンショーというYoutubeを発信しているナオキマンが、自身の運営するサロンで、お金の問題についての戸惑いを語っていた。たいへん誠実な語りだった。

 ナオキマンショーは、スピリチュアル動画というよりも都市伝説、陰謀論、オカルト、ホラーなどが中心だ。だが、シンクロニシティ引き寄せの法則、宇宙(人)の話題なども取り上げており、都市伝説系は自ずとスピリチュアルに寄っていく。何よりご本人の意識がとてもユマニスムだ(私にはそう見える)。

 

 私もかつて、スピリチュアルリテラシーについて私なりに真剣に発信していた。私自身の経験、体験を踏まえて、スピリチュアルの危険な側面にも注目していただきたいという気持ちがあった。ゆえに、ナオキマンの語りに再びインスパイアされた。

 宗教カルト団体も含めてスピリチュアルの世界は魑魅魍魎で、実際のところその真偽は誰にも分からないし、いわゆる科学的エビデンスというものはない。ゆえに宗教以外でも、参加者や利用者は信者と呼ばれたりもする。信じるか信じないかはあなた次第です、の世界だ。

 

 その真偽があいまいであるとはいえ、明らかにインチキな類いはあるし、個人だけではなく宗教法人であっても詐欺まがいなものもある。

 誠実かどうかの見分け方のひとつに「お金」がある。

 あまりにも高額なお布施、販売品や祈祷料、セミナー料金などなどがあれば、立ち止まって考えてみたほうがよい。それだけの経済力がなければ諦める人もいるだろうが、借金までして注ぎ込んでしまう人もいる。お金がないから無理、払えない、買えない、という現状はある意味私たちを守ってくれる。もうひとつは、教祖や、例えば情報発信者の持ち物や生活態度。必要以上に派手(になっていく)なら疑ってみることをおすすめする。もちろん、自分はそれを楽しんでいるだ、心の支えなのだ、というのであればそれはそれで誰も止めない。

 

 さて、スピリチュアルなことでお金を取っていいのかどうなのかという疑問を、自身に、そして視聴者に語りかけていたナオキマン。これは一般公開されている動画ではなく、いわゆるサロンという有料コンテンツゆえの悩みでもあるのだろう。けれども、まずこういったことで深く考える人というのは、それほど多くはいないだろうと私は思う。金儲け主義の人々、あるいはごく一般的な人たちは、とにかくうまいこと金を得ることしか考えていない、得られればそれでOK。儲かっているのは自分が有能だからだ、と満足して。こんなことで金取って、などと言ったりするのは客側だ。

 ゆえに私のリテラシー的には、ナオキマンは良識ある人の部類に入る。今のところは、という但し書きつきでだが。なぜなら、人は変わってしまうことがあるから。ゆえに私は、応援している人がいる場合、その言動には常に注意を払っていくようにしている。Youtuberでも、学者でも、作家でも、政治家でも。

 

 では、スピリチュアルに適正な料金、というものはあるのだろうか。スピリチュアルの世界にもある程度の相場はある。占いでも、お店によって料金の開きはひどく大きくはないはずだ(だいたい周辺を見回すと、占いの場合はマッサージ店とほぼ似たような料金設定ではないだろうか)。それでも、60分5千円なのか1万円なのかくらいの差は一般的にある(店の賃貸料の差もあるかも)。個人だともっと高い人もいる。テレビで活躍していた占い師に100万円とか平気で払っている人もいた。

 いわゆる霊能者(チャネラー)となると、料金は格段に高くなる。20分2万とか3万とか、もっと高いものもある。

 

 私などは、こんなにお安くていいんですか?と相談者さんから尋ねられることもあるくらいだ(良いか悪いかは別として)。高額占いに慣れている人はそう感じるのだろう。一方で、3千円でも5千円でも高く感じる人もいる。それには2種類の人がいる。占いを訪れながら占いを低く見ている人、どうしても占ってもらいたいけれど十分な金銭的余裕のない人、である。後者の方々には心苦しいが、そこは割り切らないとこの仕事はできない。

 

 私の知り合いだったある老人は、霊能者だった(現在は交流なし。もうご存命ではないかもしれない)。これまで自分の霊能力を使って多くの人たちを助けてきた、と話していた。その人は、こういう仕事はお金を取ってはいけない、と言っていた。特殊な能力であり、不可思議な状況を生み出すものでもある。なにより危険もつきまとうゆえ、こんなもので金儲けをすればろくなことにはならない、ということもあるのだろう。この世では、そうした能力の真偽は証明できないことも理由のひとつにあるかもしれないが、本人にとっては真実以外の何ものでもないだろうから、これは私の所感である。

 私のタロットの師匠(ヨーロッパ人)は、私がタロット占いをはじめるとき、この霊能者の老人とは全く違うことを言った。すなわち、ちゃんとお金を取りなさい、と。

 でも、そんなことを言うということは、やっぱり無償で占いや霊能の仕事をする人がいるからなのだろう。あるいは、師匠自身も、お金を取ることへの躊躇をかつて感じたことがあるのかもしれない。なにしろこの仕事には「謙虚」の精神が大切だからだ。謙虚な心の態度はあらゆる危険から身を守ることができる。悪霊がつけ込むスキは、傲慢だったり貪欲だったりするわけで。

 そして師匠は、勉強にお金をかけてきたのだから、と理由を続けた。それは、私をとても納得させてくれた。お金を堂々と受け取っていいんだ、と賃金を対価として得ることの道理を示してくれた。

 今の地球では、人間はお金がなければ生きていくとができない。もちろん、生活費は別の仕事で得て、無償で占いや霊能をやっている人もいるだろう。実は私自身はそっちのほうが気が楽だったりする。が、気質的に競争社会に苦痛を感じてしまうので、できれば好きな仕事、やってて楽しい仕事をして生きていきたいと思った。とは言えどっぷりつかれば、占いの世界も競争社会、なんだったら普通の世界よりももっとどろどろしているところもあるかもしれない。それはまた別の機会に。

 

 ナオキマンは、得たお金を還元していきたい、そのための活動を何か考えている、と言っていた。

 還元することは素敵なアイデアだ。大儲けしてブランド品を買い漁ったり、都市伝説系やオカルト系では教祖のようになったりする、ユングが言うところの「自我膨張(ego-inflation)」に陥るYoutouberなどもいることを考えると、ナオキマンは、なんとも謙虚で誠実にみえる。かつてこのような性質の表現者はいただろうか。私には思いつかない。

 ちょっと違うかもしれないが、スーパーボランティアの尾畑さんを思い出す。この人の場合は完璧にボランティア活動をしているわけだけれど(生活費は蓄えと年金だけだと思われる)、うっかりすれば信者(慕う人々)が集まってきて教祖のごとく振る舞うことだってできる、それだけの能力と魅力を持っている。が、尾畑さんは一匹狼だ。淡々と人助けをする。現場でリーダーシップを発揮することはあるが、誰かとつるんだり、誰かを従えたりすることはないようだ。

 社長がカリスマになって、その周囲に集まってくる人たちが信者のようにしか見えないビジネスの世界だってあるというのに。

 

 おっしゃるように、入ってきたお金(生活費を除いた)をぜひ善良なことに、あるいは理想の社会と地球実現のために使っていただきたい。一方で、入ってきたお金は、これまでの人生での学び、情報収集、動画作成の労力への対価であるのだから、遠慮なく胸を張って得ていただきたい。

 

 余談になるが、お笑いコンビ「よゐこ」の濱口優の弟である濱口善幸はタロット占い師だ。子どもの頃からいわゆる霊感が強かったらしい。

 兄が有名人であることも考え合わせると、高額の料金を取って占いをやっていても不思議ではない、と一般的には思うのではないだろか。ところが、交通費さえ出してくれればどこへでも行きますというスタンスで、しかも占い料金はものすごく良心的なものだった。

 ゆえに、誠実な占い師だと感じたので、私も占ってもらいたくて、大阪へ行こうかどうしようか迷ったことがあった。羨ましいことに、大阪在住の私の知り合いが彼に占ってもらった(ちょっとくやしかった)。そのときあまりに安いので(たぶん私と同じくらいの設定じゃなかったかな)それについて尋ねたところ、いいんですよ、お金のためにやってないんで、というようなことを言っていたそうだ。これは10年ほど前のことなので現在のことは全く知らないが、当時はそうだった。

 

 本当はスピリチュアルでお金儲けをするのはあまりよくないことなのだと私も思う。自我膨張や勘違いに陥ってしまう可能性が高いし、逆に相談者さんを依存させてしまう恐れも常にあるからだ。

 ただ一方で、占いとか人生相談とか霊能とか、人助けでお金を取るべきではない、という考えもまた違うと思う。

 作家の津村記久子は次のように書いている。

おしゃべりはただだと思われがちですし、わたしもそう考えていましたが、実際は値段が付けられていることが頻繁にあります。(略)

おしゃべりの中でも、一方的な話を聞くということは、忍耐を要するし、相手をあらかじめ受容していなければいけません。そして他人を受容するということは、とても難しいことであると思うのです。そりゃカウンセラーは高いお金を取るわけだと考えます。もちろん、専門的な分析もしてくれるのでしょうけれども。

津村記久子「くよくよマネジメント」P16〜17)

 ナオキマンは以前から悩み相談を受けることが多かったそうだ。今もたくさん来るという。Youtuberになっていなかったら、カウンセラーになっていたかもしれない、と。能力は高いと勝手ながら感じている。更に評価を加えるとすれば、彼の動画がすべてある意味カウンセリングの機能を帯びているとすら思えるようなつくりだ。

 確かにカウンセリングって高いよね。ちょっと気軽に相談に行くってわけにはいかないかも。

 

 私はかつて、占いの料金に学割を設けようかと思ったことがあったが、学生でも金銭に余裕のある人もいることを考えると、その設定はなかなか難しいなと考え直した。税金と同じで、余裕のある人がより多くのお金を払ってくれると本当はいいのだけれど。

 良いことを誠実にやっている人たちが対価を得ることに悩み、ろくでもないことをして人心を惑わしている人たちが平然と大金を稼ぐ、というある種の矛盾。これを乗り越えるには、魂と地球のレベルアップが必要なのかもしれない。

 

 ナオキマンは、いまでも宇宙人が迎えに来てくれないかなと思っているそうだが、私も全く同じことをずっと思い、願っている(以前の記事で既述)。この社会の、地球の資本主義や競争主義に辟易とするとき。

 

ナオキマンa la TsuTom ©2022kinirobotti