ねことんぼプロムナード

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感染防止対策への疑問と称賛〜適度な距離感という尊厳〜ようするに上品な生活様式が感染対策なんだ〜

6月下旬、ようやく久しぶりに図書館へ行った。予約を入れた図書を引き取りに。この図書館が所蔵している図書だ。

 

ひとりの高齢男性がいるのが外から見えた。書棚の本を探すのは許されているようだ。椅子が撤去されている机に本を広げて立ったまま読んでいた。これは本当はNGなのかな、でも借りるかどうか決めるのにちょっと読んで確かめたりするしね、などとガラスの向こうの光景を横目に入り口へ。

入り口では、飛沫防止透明シートのカーテンに囲まれて、ひとり司書さんが仕事をしていた。なんとなく物々しい。手前にアルコール消毒のポンプが置いてあり、消毒してください、と言われた。

貸し出しカウンターへ行く。ここでも飛沫防止透明シートがカーテンのように吊るしてある。その下からカードを提示して予約していた本を受け取った。

司書さんたちは徹底されているようで、私のカードを手に持たない。カウンターの上に置いたままバーコードを読み取る。なるほど。

周囲を見渡すといつもとまるで違う。この図書館に通い始めてからすでに20年以上になるが、初めて見る風景だ。

椅子やソファーは取り除かれているか、テープがはられて使用不可の状態にしてある。映画などを観るコーナーも、いつもなら中年や高齢の人々で満席だが、椅子もなくモニターもテープで使用禁止をアピール。

誰もいない図書館。

ちょっと怖い。

怖いのは、人がいないことではなく実は、感染防止対策だ。

この飛沫防止透明シートで一定の場所を囲うというのは、なんとなく不気味だ。ホラーやパニック映画で見たことがある映像だからかもしれないが、人間として本能的な違和感を感じるのではないだろうか、とすら思う。

 

飛沫防止透明シートと言えば、コンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケットなどたいていのレジがそれで仕切られている。飲食をする店内が隣席との間をアクリルのパーテーションで区切っていたり、手作り風の透明カバーで生徒たちが各自の机を囲って授業を受ける教室の様子をニュースで見たりする昨今。新しい生活様式、日常風景になるのだろうか。

 

けれども、このシートやアクリル、時間を決めて消毒しているのだろうか。透明シートやアクリルパーテーションが飛沫防止、感染防止の良策であるということなのだろうが私などはむしろ、これ自体が汚れているのではないか、と想像してしまう。唾液もウイルスもバイキンもホコリもそこに付着している可能性はおおいにある。

 

もうひとつ非常に気になることがある。レジの人の手袋だ。

この手袋、清潔なのかな?次から次へと沢山の商品と支払いをさばく。しかもいわゆるエコバックに詰めてくれるようになったのはいいのだが、Aさんのエコバッグを触った手袋でBさんのエコバッグを触り、さらにCさんDさんと続く。先日ニュース番組でも検証していたが、Aさんのエコバッグにウイルスがついていた場合、店員の手袋にはもちろんウイルスが移る。そして次にその店員の手袋からBさんのエコバックに移っていく。

ということは店員さんたちのこの手袋は明らかに清潔ではない。おそらく感染防止のためのシートも手袋も、まずは感染リスクの高い仕事をしている店員さんたちを守るための店側の対策なのだ。

ウイルスが付着するのがエコバックだけならいいが(よくはないが)、会計する商品もその手袋で掴むのだから、買ってきた商品まで消毒するほど神経質になる必要もないでしょうと専門家たちはニュース番組で話していたが、そうでもなさそうだ。

陳列棚の商品は一度触ったら元に戻さず買ってくれと放送しているのに。レジで汚染される可能がある。客の手は入店前にアルコール消毒されているので、使い回された店員の手袋よりもどちらかと言えば清潔なはずだ。

なので、あのレジの人たちの手袋の意味がよくわからない。

医者が次の患者のを診察する前に手を洗ったり消毒液につけたりしていると思うのだが、店員さんも手袋ではなく、ひとり対応したあとに手のアルコール消毒を繰り返す、というのは不可能なのだろうか?手が荒れる?時間がかかる?いや、この際だから時間がかかるのはやむを得ない。手が荒れるのは困るが、でもそのほうが清潔なような気がする、たぶん手袋より。

そう考えると、より清潔なリスク回避の方法は、セルフレジなのかもしれない。コンビニは分からないが、大型スーパーだと係りの人が近くにいて(トラブルやお酒対応など)、ひとり使用したあとに消毒していたりするし。

 

さらにレジと言えば、並ぶときの床に貼られた距離確保誘導シール、これは良い。

常日頃私はレジ並びの混雑が気持ち悪かった。ぴったりくっついてくる人がいるからだ。ちょっとでも前にひっついていたほうが早く順番が回ってくるとでも思っているのか、割り込みされないようにしているのか、煽っているのか。確かに距離を取って並んでいると人が入ってくることはあるが。車の走行でも同じ経験をした人はいるのでは?

それにしても、すでにレジスターの真ん前で料金を支払っているときに、お財布のなかを覗き込んでいるのではないかくらいの勢いでぴったりくっついてくる人がけっこういるので、本気で気味が悪い。グスグスするなよ、早く払えよ、という圧力なのかな、財布の中身への単なる好奇心なのか、はたまた無意識なのか。いや本当に、出したお金とかお釣りとかをひったくろうとしているんじゃないかと恐れたこともありました。

これがなくなったのは本当に良かった。これは新しい生活感覚としてずっと定着してほしい。上品な生活様式だと思う。

 

心身ともに「適度な距離感」というのは、実のところ「尊厳ある社会」には必要なマナーなのだと思う。私たちはそれを忘れかけていた、のか、そこまでまだ心が育っていなかったのか。いわゆる「欲望の資本主義」社会は、混雑した野蛮な社会なのだと思う。それを活気、と呼んでいた。

 

さらに、電車の吊り革。私は元来できる限り吊り革には触らないようにしているのだが、それでもどうしてもつかまらないと倒れてしまうこともあるので、そのときにはつかまる。

コロナ禍で、電車の吊り革に手袋でつかまるとか、なにか道具を使ってつかまるとかいう情報がたくさん流れてくるが、私などはむしろ以前から、冬に手袋をしたまま吊り革につかまってしまったときには「しまった!」と思ったものだ。何かを介して吊り革なりに触ってしまったら、その介した物にウイルスやバイキンが付着するので、その介在物を消毒しなければならないはずだ。吊り革と手の間に何か介在させるのなら、その場限りの使い捨ての物が最適だろうと思う。

私は、素手でつかんで、そして絶対に顔を触らないようにして(幸い今はマスクをしている)、手を洗うかアルコールスプレーなどで消毒するようにしている。今はたいてい空いてる電車に座るようにしているので、幸いそのような機会はほとんどないが。

ある医師もテレビの情報番組内で同じことを話していたので、お墨付きを得た気分になっている。

 

上記の店舗内の感染対策についての疑問も、「病気は社会が引き起こす」の著書である医師の木村知が同様のことをツィートしているのを見つけた。

コロナ以降、色んな"感染対策"されてるが、やらない方がむしろマシだ。例えばスーパー。レジに垂れ下がるビニールシート、換気を妨げているし表面はかなり汚い。店員さんの手袋、汚染されたまま何人にも接客。カゴに何か液体噴霧し拭いてる布は使い回し。残念ながら「やってる感」以上に「不潔感」だ。

何か物を設置すれば、物を介せば、その物は必ず汚れる。

 

物理的にも精神的にも、人間には適度な距離感が必要なのだろう。ハラスメントやイジメもそうだ。近すぎるがゆえの弊害的閉鎖社会だったのかもしれない。

 

COVID19は、様々なジレンマやパラドックスを人間と社会に提示してくる。が、その一方で、お陰様と言ってはなんだが、自分自身や人生のあり方、社会の慣習を見直す機会となっているようだ。

 

そう言えば各種商業施設の消毒を今ことさらにやっているが、カラオケ店などはとくに、今まで消毒作業やってなかったのか?と思ってしまった。それから、木村医師の言うように、店員たちのいい加減な消毒ではなく、やるなら心して、消毒とはなんぞやという意識を持ってやらないと無意味だ。

図書館の本の消毒はやっているところとやっていないところがあるのかもしれないが、ぜひこれは、コロナ禍に限らずやってほしい。私はこれまでも、図書館で借りた本は必ず消毒してから読んでいるし、本を触ったあとは必ず手を洗うようにしてきた。

 

私が通っている図書館は、ソーシャルディスタンシングを保ちつつも、7月から開館時間が従来通りとなったので助かった。他図書館からもまた借りてもらえるようになった。

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TsuTom「感染防止対策」 ©2020kinirobotti