3人の友情が続いてよかった。
「G線上のあなたと私」TBS火曜夜10時
そうか、最後に3人の演奏があったのね。
眞於の結婚披露宴。
そう、眞於先生は、音楽教室のあのマネージャーと結婚することになった。
やっぱり、そうじゃないかと、けっこう早い回から私は予想していた。それっぽい伏線の何気ないシーンがあったので。
家出した幸恵は、家族の気遣いによって事なきを得る。
問題の夫は、サイコパスなのかなんなのか、自分の無感情さに気付いていない様子。母親に「お父さんと同じだ」と厳しく言われて、幸恵を迎えにいくことになる。「自分の妻くらい大事にしろ」と言っていたので、この幸恵の義母も、同様の悩みが自分の夫にあったのだろう。そして、その息子である幸恵の夫。あまり親から大事にされた記憶がないのかもしれない。けれども、娘の力も借りて、なんとか家族についていき、妻への気遣いもがんばろうとする。
それはそれで良かった。
也映子は、理人との関係を友情にもっていこうとする。
その理由は、理人には未来があるから、というものだった。8歳も自分のほうが年上だということがいちばん心にかかっているようだ。
いつか理人は他に好きな人ができて自分の前からいなくなる、と也映子は言う。
元婚約者のトラウマもあるのだろう。
が、也映子は「今を生きて」いないだけだった。
「未来を不安に思いながら生きること」「過去を後悔して生きること」それはいずれも、「今を生きてない」ということだ。
ここで今を生きるというキーワードが登場するとは。「いまを生きる」という映画がある。ロビン・ウィリアムズ演じるキーティング先生が、生徒たちに今を生きることの大切さを切々と激しく個性的に教える。そこに悲劇が訪れてしまうというたいへん重たい物語でもあるのだが、人生のなんたるかを深く問いかけてくる名作だ。
今を生きなきゃ、と思った也映子は理人と付き合うことを決め、二人はめでたく恋人同士になる。
私としては、恋愛よりも、3人の友情物語になってくれたらいいな、と初回から思ってきた。
が、也映子と理人の恋物語が爽やかだったので、恋愛ドラマが苦手な私でも十分に受け止めることができた。
もし3人が会わなくなっても、どこかでつながっている、と幸恵も言っていたが、会わなくなるときがきても、3人はずっとずっとつながっているんだろうな、と予感させてくれる優しい物語だった。
視聴率があがらなかったのは、ゆるすぎる内容だったから、なのだろうか。3人のThis Is Usは、実はそれなりにけっこう深刻な内容にもかかわらず。かといって、コメディーでもない。「すいか(2003年日本テレビ/主演・小林聡美)」の世界観と似ているかもしれない。
幸恵は、私にとって敬愛すべきキャラクターだった。年齢的な共感もあるのだろうが……。「ナースのお仕事」「臨場」など、これまで松下由樹が演じるドラマをいくつか観てきたが、今回のキャラクターは、一番と言っていいくらいの出来栄えだった、と私は感じている。
松下由樹がパンのCMなどに出てくると、「あ、幸恵さんだ」と思わず言ってしまう。
誰かが言っていた。役者をそのドラマのなかの役名で呼ぶようになったらそのドラマは成功している、と。
「G線上」では、私は、このThis Is Usな3人の俳優「波瑠 松下由樹 中川大志」を、3人とも「也映子ちゃん、幸恵さん、理人くん」と呼びたくなっている。ちなみに「也映子ちゃん」は、幸恵さんの呼び方。
静かで穏やかな素敵なドラマでした。
3人のその後も見てみたい気もするが、贅沢は言うまい。
バイバイG線上の3人。お幸せに。