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「同期のサクラ」第4話〜遅咲きの花だっていいじゃないですか〜

先の記事で、現実世界は嘘と我慢――これが大人と権威なのだが――で成りなっている、ということに触れた。

今話では、「嘘をつけない」サクラの様子が面白く描かれていた。

 

「同期のサクラ」日本テレビ水曜夜10時

脚本/遊川和彦

主演/高畑充希

 

冒頭、え?これ「過保護のカホコ(脚本/遊川和彦)」じゃん、というシーンがあった。チェロを背負った糸ちゃん(久保田紗友)と思われる女性とサクラの絡み。

 

第4話でスポットが当たるのは、土井蓮太郎(岡山天音)。

入社4年目の出来事。

設計部で一級建築士を目指してがんばっているが、試験も社内コンペもうまくいかず、先輩からも後輩からもおちょくられている。心を閉ざしている蓮太郎は、部内でどんどん浮いた存在に。

コンペの準備をしていた蓮太郎だったが、部長が時間変更を故意に知らせなかったので蓮太郎はコンペを逃してしまう。

蓮太郎の事情を知ってしまったサクラ。

ある日、自分の噂話に大笑いしている同僚たちを見て、思わずカッターナイフを取り出してしまう蓮太郎。それを止めようとしたサクラの左手にカッターが当たり、5針を縫う怪我を負わせてしまう。

 

サクラは蓮太郎が犯罪者になるのを救った。けれどもサクラが蓮太郎を止めた理由はそれだけではない。彼に会社にいてもらってやりたい仕事をしてほしいから。サクラの行動原理はそこだ。前話までの、百合にも、菊夫にも、そうだった。やめられたら、いなくなってしまったら、困る。生涯信じ合える友と人々を幸せにする建物をつくるという自分の夢が叶わなくなるから。

自己中心的なのか?

いや、サクラの願いは、同時に、普遍的なものにもなっている。自分の幸せは仲間の幸せでもあり、また世間の人々への幸せにもつながる。サクラの純真な思いは、そのまま仲間への応援にもなっている。それをウザいという人も世間にはいるのかもしれないが。

今シーズンのドラマには「まだ結婚できない男(フジテレビ 主演・阿部寛)」など変わり者の主人公が多い、と述べているドラマ批評家もいるが、サクラに関しては私はその類いではないと思う。世知辛い世の中の地獄的世界のなかでは、天国的な存在は奇異に見える、ということだろう。

 

引きこもって会社へは行かないと言う蓮太郎をサクラと仲間で説得して、ようやく会社に戻すまでが今話。 

蓮太郎の弱点はなんだろう?

大学も2浪して入っており、一級建築士の試験にもなかなか受からない。すこし「ゆっくりとした」性質なのかもしれない。

ラーメンが大嫌い。なぜなら家はラーメン屋。一流企業のエリートだった父がやりたいことがあると脱サラして始めたラーメン屋。母親も弟もそれを応援し理解して手伝っている。

ゆえに、会社でも家でも心を閉ざしている蓮太郎。

自分の気持ちと真正面から向き合っていない。

余談だが、蓮太郎の母親役は西尾まり。「過保護のカホコ」で糸ちゃん(今話の冒頭で出てきた通りすがりの女性)の母親役だった。

 

そもそも蓮太郎の頑なな態度も良くはないが、部長の態度は完璧なパワハラ、というより意地悪、イジメだ。

 

自暴自棄になって転職しようかなと暴言をはく蓮太郎に、でも設計が好きなんでしょうと問いかけるサクラ。蓮太郎の長所をあげていく。

そしてサクラは、蓮太郎の部屋の前でドア越しにこう語りかける。

あなたには才能があります。

今は辛いかもしれませんが、諦めないでください。 

伊能忠敬が日本地図をつくりだしたのは、55歳のときです。

やなせたかしさんのアンパンマンの人気が出だしたのも50代後半です。

遅咲きの花だっていいじゃないですか。

いつか花村建設を背負うデザイナーになってください。

お願いします。

部長に自分の気持ちを伝えることができた蓮太郎。

仲間5人は歌い出す。

もし自信をなくてくじけそうになったら

いいことだけいいことだけ思い出せ

アンパンマンより)

 

自分の理解者はいないと、勝手に孤独な世界に入り込んでいた蓮太郎の心が解け、父親のつくるラーメンをはじめて食べる。美味しい。

 

2019年、サクラの病室。

蓮太郎は、一級建築士になっている。

 

第4話の印象は、いさかか分かれるところかもしれない。

つまり、ひょっとすると「理想だけ高いきらめく才能のない鈍臭い人間が、独りよがりで理解者がいないと引きこもっていたが、自分が間違っていたんだと気づいて上司や同僚に謝罪した」という昭和の物語になってしまいはしないか、という点である。

もちろん、自分の弱点を自分で理解して、そして周囲に心を開いていくという態度は大事だ。

だが一方で、この同僚や上司は、明らかに善悪で言ったら悪だ。気に食わないヤツだからといって連絡事項を伝えないとか、あからさまにバカにする、などは人権侵害でしょう?

そうさせてしまったのは蓮太郎の態度だったのかもしれないがそれでも、である。

バランスよく受けとめたい。

 

人が花開く時期は人それぞれ。学習でも、仕事でも、結婚でも……。

大事なのは、相対的に考えないこと。誰かと較べない。常識とか普通という世間的価値観に惑わされて自分を諦めないことだ。

私はそのように受けとめた。 

 

第4話じいちゃんのFAX名言

「辛いときこそ自分を見失うな」

 

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「同期のサクラ」 @kinirobotti