ねことんぼプロムナード

新しいルネサンスの小径

栞の身元~ボストンから愛~

この栞、どこから来たんだろう?

先日、なぜか突然、そう思った栞がありました。

日々の生活のなかで長い年月、ずっとこの栞を目にしていました。そこにあることはずっとずっと意識の底にありました。

ところが、何十年たった今、ふっと思ったのです。

「これ、どこの栞だろう」と。

 

読書のとき私は、栞を使います。しおり紐がついている本でも、それを使うことはまずありません。

ページの間に挟む栞が好きなんです。

どんなものでもそれなりの形状であるなら、栞になります。映画の半券でも、美術館や博物館の入場券でも。

古本を購入したときに、「元の持ち主が栞にしていた」のであろう紙片が挟まれていることがあります。その人物の一端が分かるようなものであると何となく空想が働いて楽しいものです。先日も、町山智浩の映画関係の書物を買ったとき、ある映画の半券が挟み込まれていて、興味深く思いました。ああ、この映画観たんだこの人、と。

図書館で借りた本には、貸し出しレシートが挟まったままのことがあります。日付と貸し出された本のタイトルが印刷されています。それもまた興味深い代物です。利用者の年齢が想像できたり、趣味や傾向がにじみ出ていることもあります。イマジネーションが擽られます。10冊近い貸し出しで、2週間で読みきれるの?と思うこともあったりします。すごい読書家です。研究論文作成中なのかもしれません。

 

さて、ずっとそこにあった私の栞。黄色い栞です。

これは、私の栞コレクションのなかにずっとありました。いや、コレクションとは言い過ぎです。栞として使えそうな紙片を小さな紙袋のなかに入れているのです。ルノアール展やミュシャ展など美術展のものから、書泉グランデの栞、などなど。いずれも学生時代に手に入れたものばかりです。ですから大昔のものばかりです。ちょっと新しいもので「相棒」グッズもあります。

最近はネットで書籍を購入することが多く、栞のついていない本の場合は、なかに挟まれたままのスリップを栞として使ってしまうことが多いので、わざわざ栞を取り出して使うことはめっきり少なくなりました。図書館で借りた本にはそれ用の栞を用意してあります。

 

その黄色の栞は、古いものだからと捨てられることもなく、ずっとずっと長い年月、そこにあり続けたのです。

私はぼんやりと、書泉の栞かな、くらいの意識で今の今までいたのです。それが、2019年の10月になって、ようやく「どこから来た栞?」という疑問を持ったのでした。なぜ突然そんな思いがよぎったのかは分かりません。特別なきっかけがあったわけでもありません。いつものように、使う栞を選んでいたときのことでした。

 

その黄色い栞には、「bookends」「...where the boos never end」という文字が印刷されています。書店名など手掛かりになりそうな文字が見当たりません。

じっと眺めていると、ものすごく小さな文字があるのを発見しました。虫眼鏡で見てみました。若かったら肉眼で見えたのでしょうか。それにしてもひどく細かい点のような文字です。

「○○ shopping center ○○」と書いてあります。

なんだこれは?

便利な時代です。すかさずネット検索してみました。

なんと、ありました。

日本ではありません。

アメリカのボストン、セイラムの近くじゃないですか。

大学生のとき、ボストンでホームステイをして、その家のお母さんにセイラム観光に連れて行ってもらいました。大きなショッピングセンターへ行ったことは覚えています。真夏なのに、手袋など防寒用品が売っているのに驚いていたら、ここはすぐに寒くなるから、と教えてもらったシーンは浮かんでくるのですが、本屋へ行っただろうか、何の本を買ったんだろう?はっきりと思い出せません。

当時、アメリカから買ってきた本は「大草原の小さな家」だけなので、たぶん、そこで買ったのでしょう、と記憶を繋げました。

だとしたら、この栞はその書店で手に入れたに違いありません。だって、そこのお店の名前と地名が書いてあるのですから。

栞をどのように手に入れたのかについては、全く記憶にありません。店員さんが入れてくれたのでしょうか……。

 

とにもかくにも、この黄色い栞は、アメリカから来たんだという意外な事実が、このネット時代だからこそ分かりました。

そして、あの大きなショッピングセンターは今でもあるんだ、と何気に懐かしく思いを馳せました。

 

ずっとずっと手元にあった出どころ不明の栞の身元が判明して、なんだか様々な気分が心をよぎったのでした。

 

こんなことって、あるんですね。 

 

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