ねことんぼプロムナード

新しいルネサンスの小径

「Heaven?~ご苦楽レストラン~」〜ナンセンスが描く良識~2019夏ドラマ終〜

バカバカしすぎて面白かった。

映像が安っぽすぎるのが残念でならない。シットコムとして観れば単調な画の明るさも気にならないのかもしれないが、セリフのセット内の反響も気になる。良いドラマだけに。

 

「Heaven?ご苦楽レストラン」TBS火曜夜10時

石原さとみ福士蒼汰/志尊淳/岸部一徳勝村政信段田安則

 

日本ドラマの悪口ばかり言ってきた近頃だったが、本当に今シーズンは、その私の評価、日本ドラマへの諦念を覆してくれるいくつかのドラマと出会えた(この言い訳を2019夏ドラマのいくつかの論評で都度書くことになるのか)。

 

レストランあるいはホテルもの、だめだめレストラン、だめだめホテルを建て直す物語、そこを訪れる客の人生物語、ヒューマンドラマは、枚挙に暇がない。コメディからシリアスまで。

このドラマの真骨頂は、まことさっぱりしているところだろう。大胆不敵な女性オーナーが自分の意志(好き)を貫き通し続けるコメディであり、お気楽で深刻さが皆無というコンセプトに徹していてぶれない。登場人物全員が、悩んだり考え込んだりはするけれど、それが決してジメジメすることがない。際立つ個性が爽快だ。

 

特別に取り上げるような感動的名場面はない。

でも、面白かったと言わざるを得ない。

 

志尊淳演じる川合と、福士蒼汰演じる伊賀くんのほんのりふんわりとした関係性が非常に心地よい。癒しさえ感じる。対照的な二人を敵対的に描くのでも、威圧的に描くのでもなく、互いを認め合い、補完的に描く。21世紀に求められていた人間関係である。現実世界では、その逆になっているところが悲しい。 

 

ドラマには、時代を先取りしたり、新しい社会的方向性を提示して見せるという使命があると思う。2019春ドラマ「私定時で帰ります」が、まさにそれであった。

そこから、言葉や生活様式、社会性が変化していく、ということはあるのだろうと思う。

例えば最近は、タバコを吸う場面はほとんど見かけなくなったし、男尊女卑やセクハラ表現も少なくなった。昔はそんなのばっかりだった。女性はセクハラに耐え、男性はパワハラに耐える。つまりおとなになったらなくなると思っていた「いじめ」が、よりひどくなったそんな社会に耐えることが当たり前のように描かれていた。「おとなになれよ」は「我慢しろよ」「長いものに巻かれよ」「イエスマンになれよ」の代名詞だった。最近は、描かれることがあってもダークサイドとして登場する方が多い。

古い価値観を払拭する意識がドラマという物語と画面を通して視聴者に広がり、染み込んでいくことは、死ぬほど大事とは言わないが、ドラマの存在意義のひとつと言っても過言ではないと私は考えている。

 

というわけで、面白いと同時に、心が安心するドラマでもあった。 

 

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「Heaven?ご苦楽レストラン」 ©2019kinirobotti

川合に慕われる伊賀くんは、このドラマの語り手(舘ひろし)だった。何十年後かの川合は、どうなっているんだろう?伊賀くんといっしょに働いているのか?