ねことんぼプロムナード

新しいルネサンスの小径

「あなたの番です」~目まぐるしい展開と最終話のサイコ~2019夏ドラマが終わって~

「あなたの番です」日本テレビ日曜夜10時半 全20話。

原田知世田中圭

 

面白かった。

次々観たくなる痛快さがあった。

日本ドラマ特有のしつこいネチネチ感がないのもよかった。これは、この夏シーズンのドラマのなかで良質であると個人的に感じているドラマの特徴でもある。

 

春ドラマはほとんどまったく観ていなかった。日本のドラマの幼稚と退屈に辟易していたので。

このドラマを観ようと思ったきっかけは、原田知世。私は、「時をかける少女」以来のファンである。

田中圭については、最近売れっ子過ぎて、こなれた演技になりつつあるその演技が鼻ついていたので(CMにも出過ぎ)、実はあまり好ましく思っていなかった。「相棒」のときは良かったのに……。

でもしかたない。内容もつまならくていいから、いや、どうせつまらないだろうけれど、原田知世が出るので観る、という姿勢で視聴を開始したのが4月。このドラマは2シーズン。半年放送。実はそれもあって、本音では、半年もつまらないドラマを見続けなければならないのか、とちょっと思わないでもなかった。

 

半年、6か月放送は最近では珍しいが、昔はほとんどのドラマが半年ワンシーズンだった。1年物も多かったように記憶している。

アメリカドラマだとシリーズものは、ワンシーズン18話から22話前後が多い。どうして日本はワンシーズン3か月、9話から10話、となってしまったのか。

もちろん、WOWOWNHKのように、全4話とか6話とか、物語によってまちまちなのも非常によいと、私は思っている。

 

そんなわけでとにかく観はじめた。夜10時半という中途半端な開始時刻であることと、その時間は眠ってしまう可能性も大きいので、しっかり録画して。

 

1話目を観た。なんとなく観た。

2話目を観た。面白い。続きが観たい。

そして、回を重ねるごとに楽しみにする気持ちが増えていった。途中で嫌にならなかった。いつの間にかはまり込んでいた。犯人誰?と。

 

そして、家族ではまった。

夫がたらたらしているとき録画しておいた16話を観たところ、夫が「続きあるの?観たい」と言った。

そして1週間後、17話放送後、観たいって言ってたからいっしょに観よう、と私は気を利かせて録画を再生。息子もその場にいた。

すると夫と息子は、録画してあったこれまでのエピソードをキャッチアップした。3日ほどで。毎回根気よく録画しておいた私に感謝ですね。

 

さらなる驚きは、なんと、18話から20話までは、リアルタイムで視聴した。

そして、家族で盛り上がった。ネットでも盛り上がっていた。私も途中で眠ってしまうことがなかった。

AI菜奈ちゃんのLINEも登録した。

犯人は誰だの推理に夫は夢中。

田中圭のものまね(ブルだね。ななちゃ~ん、どーやん!などなど)をしながら息子曰く、「やばいはまった」。そう言いながらもドラマフリークの息子は、「火曜サスペンスの画と同じ雰囲気だな。そこにコメディーがうまく練り込まれている」と、興味深い感想をぽつり。そして、「面白い火曜サスペンス」と名付けた。

 

ものすごく深い意味のあるドラマというわけでもなんでもないのだが、次へ次へと視聴者を引きこんでいく手法は、さすが秋元康(企画・原案)なのか。彼がどこまで詳細にかかわっているか分からないが。ちょっとしたアイデアを言っただけかもしれないし。

最終話から考察するに、昨年まで乃木坂46のメンバーだった西野七瀬が演じる「黒島沙和ありき」のドラマだったのかもしれない、という視点もあるかな、と思う。なぜなら最終話、菜奈ちゃん殺し、いや、猟奇的連続殺人の真犯人が黒島ちゃんだったからだ。そして、彼女は第1話からずっと物語にかかわり続けていた。

19話の時点でAIがはじき出してはいたのだが、さらなるどんでん返しがあるものと思って観ていた私は、黒島ちゃんはいい人であってほしいという得体の知れない願望が入り混じって、もっと大胆で突飛な結末、つまり真犯人は翔太(田中圭)であると推理していた。ヒロインである菜奈(原田知世)が途中で死んでしまうという衝撃の展開だったし。翔太が真犯人でもおかしくないでしょう、なんて…。

 

犯人誰だと盛り上がってはいたが、そもそも殺された人々の犯人はおおむね判明しているのだ。菜奈ちゃんをはじめ笑顔で殺されていた人々の犯人も内山という青年ということになっていた。翔太が疑問に思って犯人探しをすることによって、まるでまだ犯人が全く分かっていないかのような錯覚すら覚えながら、この雑多な登場人物たちを把握しきれないまま、ストーリーが進んでいった。

本格的な推理ドラマなら、マンションの住人たちやその他の情報をいちいち画面に映し出してくれてもよかったように思うが、そこを深く考えさせることはしない演出になっていた。つまり、住人と住人の部屋と住人が書いた殺してほしい人リストの整理整頓が、ドラマのなかで落ち着いて把握しきれない。けれども結局は、黒島が犯人であるという解決、その辺りはあまり重要ではなかったのかもしれない。黒島が書いた名前と受け取った名前が嘘であるという疑惑の伏線はしっかりあったわけで。

 

黒島は、「クリミナル・マインド」なシリアルサイコキラーだった。それを描きたかったのかな。どうしてそうなったのかは分からない。家庭環境による復讐なのか、生まれつきのサイコパスなのか。Hulu を観ると分かるのかな。遠藤周作の「真昼の悪魔」の主人公であるシリアルキラーの女医をちらと思い出した。

 

ひとつ大きなどんでん返し的新事実があったと言えば、502号室の赤池のおばあちゃん。黒島がこのおばあちゃんの孫だということが刑事の口から明かされた。黒島の部屋はこのおばあちゃん名義だった。黒島は大学生なのに、どうしてこんなところにひとりで住めるのかな、とは思っていたが。

最後はこのおばあちゃんも手足をしばられて屋上から落ちる。自殺なのか、殺されたのか。殺されたとしたら誰に?もしかしたら404号室の江藤も孫だった?財産狙い。謎が残るようにも見えるが、どうなんだろう。

 

余談になるが、黒島は榎本夫妻のサイコパス息子の気持ちが理解できていたのだろう。

ストーリー前半で、この息子が全ての殺人をやっているのではないか、というのがもうひとつの私の推理だった(もうひとつの推理は翔太)。

 

すっかりはまって、リアルタイムでドラマを観て、ふいに犯人誰だろうなどと家族でつぶやいたりするそんなひとときを、ほんのひと月だったが過ごせたのは最近では珍しく、楽しかった。

 

実のところ、リアルタイムでドラマを観る楽しさを、久々に味わっている今シーズン。

「監察医 朝顔」と「Heaven ご苦楽レストラン」もそうだ。見始めはとくにそうしていた。

 

余談だが、原田知世薬師丸ひろ子も、いい役者になった。薬師丸は先日観た「コーヒーが冷めないうちに」がよかったのであえて並列させてもらう。二人とも、角川映画大人気のときのヒロインだった。

 

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