ねことんぼプロムナード

新しいルネサンスの小径

「生涯現役」「増税還元」のイリュージョン~縁側のおばあさん~

「生涯現役時代」だそうです。

 

私は、中学生のとき、どこからきた何のためのものだったのかは覚えていませんが、なにやらアンケートに答えさせられました。

そのなかのひとつの質問が「あなたにとって青春とはいつですか?」というようなものでした。私は「一生青春」と回答したことをなぜかとても明確に記憶しているのです。

「青春」人生の春にたとえられる若い時代。青年期。(明鏡国語辞典

という辞書の意味からしますと、まったく間違った答えになってしまいます。

なぜそう思ったのか、書いたのかを思い返してみますに、おそらく、死ぬまで好きな事をやっていたい、そんな気持ちだったのではないかな、と思います。「生涯現役」ってことか?と言われればそうかもしれませんが、一番大事なところが違うように思います。国が言うところの「現役」とは「労働」ということだと感じるからです。「生涯現役」という言葉をネガで見てみると「死ぬまで働いて税金を納めろ」と書いてあります。

 

安倍晋三首相(自民党総裁)は3日、日本経済新聞のインタビューで「働き方改革の第2弾として生涯現役時代の雇用改革を断行したい」と述べた。自民党総裁選(7日告示―20日投開票)で勝てば任期は2021年9月まで3年延びる。最初の1年で生涯現役時代にふさわしい雇用制度を構築し「次の2年で医療・年金など社会保障制度全般にわたる改革を進める」と強調した。(2018/9/4 2:00日本経済新聞 電子版)

 

 

2つの書籍「1日3時間しか働かない国」「失業しても幸せでいられる国」について、前2回の記事で書いてきました。これらの書物に書かれていることは、人間がストレスフリーで幸福に生きていくための社会的制度です。精神論ではありません。この世に生きている限り、物理的余裕のほうが精神的余裕よりも先にこなくてはなりません。

どんな過酷な状況も思い方次第でポジティブに変化できるというのは精神論であって、確かにその通りであり、苦難困難を乗り切る素晴らしい方法です。が、それはまた別の論、視点であって、そもそもそんな精神論をいつも使わなければならない社会は、幸福そうではありません。

 

働きたい人にとっては、年齢を理由に解雇されたり、職に就けなかったり、ということがなくなるのは良いことだと思います。

それでも、「労働」ならば、できるだけ早く引退したいものです。つまり、生活費のためだけに、税金を払うためだけに働くことからの引退です。この場合、たいていは好きな事をしてないからです。そしてそれは不幸です。

国が「生涯現役」を進めようとしている理由は、医療・年金の財源不足に加えて、人手不足、ということからなのでしょう。「社会保障制度全般わたる改革」とは、財源の確保、つまり税の徴収を増やすことと、社会保障費の削減、のことなのだと想像できます。たくさん取って、ほとんど返さない仕組み。少子化だし、国にお金ないんだからしょうがないじゃんと国民にも思わせているので、すでに成功しています。

 

こんなツィートがありました。

mold@lautream
「70才すぎても働ける社会」ではなく「70才すぎたら働かなくても生活できる社会」を作るのが政府の役割じゃないのかな。その上で生きがいとして働くことが選択できるべきで。70才まで働かないと生活できないのもしんどいけど。 

全く同感です。

「失業しても幸せでいられる国」のなかにもこうありました。

 社会保障っていうのは「働かなくても食べられる権利」です。

 

もうひとつ疑問に思うことがあります。

消費税を10%にあげるにあたっての還元手段です。低所得者向けに「プレミアム商品券」なるものを販売するということ。

国会では、参議院で代表質問が行われました。公明党の山口代表は、来年10月の消費税率引き上げの際、所得の低い人への支援措置として、購入した金額よりも高い金額で買い物ができる「プレミアム付き商品券」などを検討するよう求めたのに対し、安倍総理は具体的な内容を検討していく考えを示しました。(TBSNEWS)

商品券購入料金プラス5000円を検討しているとか。

5000円多く買い物ができるなら、と一瞬飛びつきそうですが、いや、たぶん飛びつくと思います。

ですが、低所得者の人たちがプラス5000円のためにそんな商品券を買えるのでしょうか。400万から500万円までという年収制限も設けるそうなので、買える人たちは制限ぎりぎりの人たちでしょう。半年以内という使用期限もあるらしいですから、ある意味、消費を煽る作戦なのかな、と思いました。消費税増税後の買い控え対策。うっかりすると必要のないものまで買ってしまうかもしれません。いや、買わせる思惑。結局、低所得者から多くを吸い上げる仕組みになっていると言っても過言ではないように思ってしまいます。カードで支払うとポイントで還元、という方法も、むしろ別のところの利益を目論んでいるのであろうと想像できます。さらにポイント目当ての消費欲を搔きたてようという策略もあるでしょう。本末転倒のレトリックに引っかかってしまうのが人間の愚かさ。「失業しても幸せでいられる国」によりますと、フランスではそのようなやり方はしないようです。

いつもいつも小手先の小細工とイリュージョンで国民の不満をいっとき凌ぐという手法。そして国民はバカだからすぐ忘れる、でしたっけ?

 

高校の国語の授業で、友人が「皺」という小説を書きました。縁側に座っている老母のことを書いたそうです。病気で死んでしまう女の子の物語とか、スポーツ根性ものとか、恋愛ものとか、少女漫画のような世界を書いている生徒が多いなか、どちらかと言えば珍しいテーマです。

なんでこういうものを書いたの?と尋ねると彼女は言いました。

「自分も早くおばあさんになりたいから」彼女はそう答えました。

おばあさんていいなぁ、って思うの。何もしなくてのんびり過ごせて。

 

縁側にのんびり座って幸福な時を過ごすことのできるおばあさんは、これからどれだけ減っていくのでしょうか?そもそも縁側もなくなりつつありますけど。

 

エデンの園を追放された人間が罰として課された「労働」をしなければならないのであれば、せめて天国へ帰る前には労働から解放されて、ゆったりとした心地で好きな事をしたいものです。

それより更に良いのは、「働かなくても生活できる権利」という社会保障があることと、「労働」でははく「仕事」を選べてストレスフリーでいられる社会であること、なのではないか、と思っています。