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テレビドラマ「スーツ」からみえる人材流出~人材探しのCM~履歴書と年齢を考える~優秀ってなんだ~

流れてくるととても気分が悪くなる人材探し、人材募集のCMがあります。ちょっと検索してみたところ、同様の感想を持つ人たちが意外といることを知りました。

 

「いい人がいない」とか「優秀な人」とか「キラッキラ」とか「有望な」とか。

これはどちらへ向けてのアピール、CMなのだろう。

ホームページによると「挑戦する20代の転職サイト」。

自分に合った仕事が見つかる、という謳い文句はいいとしても…。

 

上記のCMは、会社内で20代の働き手を探している、というシーン。

このCMを流している会社は、仕事、転職先を探している優秀な20代と優秀な20代を探している会社の橋渡しをする会社、ということのようです。

 

仕事を探している、転職を考えている20代人で、すでにキラッキラの経歴を持っている人は、自分を探し出してくれそうだ、と登録するのかな?

一方であらゆる会社、仕事場が、いわゆる「優秀な人」を求めていることは確かだろうから、ここで探せば見つかるかな、と思う。

 

私の相談者さんなのですが、40代の女性が先日ぽろっと言っていました。ハローワークから来る人はバカにされるんだ、と。

いやいや、そんなことないでしょう、だってその会社、ハローワークに募集出してたんですよね?

彼女、正社員なのですが、社内事情のいろいろがあって、問題はそこだけではないのでしょうが、それでも、ハローワークだから、みたいな感想が漏れるって、としばし考えてしまいました。

 

2018年10月21日毎日新聞松尾貴史のちょっと違和感」

「消費税増税 困窮者を助ける発想ないのか」に次のようにありました。

法人税所得税を上げると、企業や富裕層が日本から流出してしまうのではないかと恐れる向きもあるが、本当にそうだろうか。

「給料を下げると優秀な人材が来なくなる」と、よく政治家が言っています。

これらが真実かどうかは別として、また確かにいわゆる能力の高い人はそれに見合った収入があってしかるべきであるとは思いますが、何をもって「優秀」とか「いい人」とか言って価値づけをしているのだろう。もちろん、分かっていますが……。

 

2018年10月16日LINEBLOG茂木健一郎

「履歴書に穴が開くって、なんですか?」

日本には良いところもいろいろあるが、どうしようもないこともたくさんあるとして、直した方がよいそのひとつを次のように論じています。

「履歴書に穴が開く」というわけのわからない価値観で、昔赤塚不二夫の漫画で、飼い犬が野良犬にぼくだって自由になりたいとか言っていて、首輪がはずれるとあわてて自分でつけるのがあったが、同じことが日本では起こっている。誰も疑問を持たない。

そもそも大学在学中に就活して、3月に卒業して4月から「切れ目なく」「組織から組織に申し送りで」人生が移っていくのが当たり前でそこから外れた人は異常だとしている感性の方が異常である。

 医学部入試の多浪差別につていも、次のように述べています。

大学関係者のアタマは、絶望的なほど貧弱だと断言してよいだろう。

高校を出て、何年か働いて、あるいはふらふらして、あるいはバンド活動をして、あるいはボランディアをして、あるいは何もしなくて、N年目に大学に入る気になったって全然良いし、それはN浪では断然ないし、単に人生の多様性であり、それを想定できない人は単にアタマが貧弱なだけだ。

(略)

 一番意味がわからないことの一つは、新聞やテレビなどのレガシーメディアが、新卒一括採用や多浪生差別のことを報じるときに、そもそも前提がおかしいということを指摘しないでその前提を共有していることで、メディア関係者のアタマが貧弱なのだろうと推定せざるを得ない。

 

若い世代に強く訴えたいことは、「履歴書に穴が開く」という貧弱な大人たちの価値観はガン無視していいから、自分たちの好きなことを自由に追及して欲しいということ。それで人生を成立させている人なんてたくさんいるし、そういう人が出ないと、日本は発展できない。履歴書に大いに穴を開けよう。(略)

 

「 履歴書に穴が開いている人」は、あのCMの会社の人たちが探している「いい人」でも「優秀な人」でも「キラッキラの人」でも「有望な人材」でもないのでしょう。

私も複数の相談者さんから聞いたことがあります。履歴書に穴を開けたくない、とか、転職ばかりの履歴書になってしまうと不利になる、とか。本人もそうですが、ご両親も同様の心配をしています。

 

就職、転職、ということを考えるとき、年齢もネックになります。 

2018年10月20日LINEBLOG茂木健一郎

「エイジズムのくだらなさ」

日本では、報道されるとき「(年齢)」が表示される。そんな情報になんの意味があるのか、と茂木は叫んでいます(乱暴な文体なので、叫んでいるように見える)。

(略)惰性でやっているのだろうが、日本のメディアの質の低さ象徴していて笑ってしまうしかない。

 

現役、二浪、三浪というのも一種のエイジズムで、つまり人生にはいろいろあって、多様な道筋があるということを想像できないし、許容できない、あほらしさが、自分たちは何か意味のあることを考えていると思っているからバカらしさも救いようがないレベルである。

一番笑ってしまうのは、30歳になったからどうだとか言う人たちって、それって、単に10進法で表記しているからだろうと心の中でつっこみを入れる。自然数Nが、10進法だから特別なふうに見えたとしても、それて何の本質的な意味もない。それくらいのことも気づかない。

(略)北米で問題にされているエイジズムよりもはるかに幼稚で愚劣なエイジズムが、日本では行われていて、新聞テレビも無自覚な愚鈍で加担している。

補足。女性のことを、年齢であれこれと決めつけるおやじは最悪。その最悪なおやじの言動と同じことをメディアもやっている。大いに反省したらいい。

 

冒頭で取り上げたCMの会社は20代の転職を応援するというもともと限定されたものなので、エイジズム的論評からは外れるとは思います。

とはいえ、CMというメディアを通じて一定の偏った価値観を喧伝している、いや、それになっている、茂木が言うところの「無自覚の加担」であるように思ってしまいます。 

パワハラやそれに伴う「うつ」「PTSD」などで、自分自身と向き合っている最中の人たちは、たまにしかテレビを見ない人でもその耳目に飛び込んでくるほど年がら年中流されているCMですから(ハズキルーペみたいに)、何気に心に刺さってくることでしょう。

それを自業自得的意味合いの自己責任論で片づける人もいるでしょう。

 

優秀とは何でしょう。

先日モーニングクロスで(話題に取り上げている内容は忘れてしまいましたが)、正能茉優という20代の女性コメンテーターが「東大に受かるということはやっぱり優秀なんだと思う」と発言すると、ジャーナリストの鳥越俊太郎が「人というのは成長する時間が違う」というように言っていました。そもそも試験に受かる人は、試験問題への回答の仕方が上手だったり得意なだけで(だけで、とあえて申します)、それはAIのほうが優秀に決まっている領域だと思ます。世間的にはそれをもって優秀と言うのでしょうし、鳥後の言うところの優秀さは、人文的観点なのでしょう。

 

得意と不得意、適正と不適正、という尺度は、優秀という基準よりもより良いかもしれません。が、一方で、

適性だけで判断していたら、人間の可能性はしぼんでしまうよ。

とフランス語講師の國枝孝弘はツィートしています。

こういうことは、その人の人生の時と場合によるのだろう、と私は思っています。

その時と場合ということを考慮できる社会というのが「寛容で自由な社会」なのかもしれません。

 

そもそも「人材」とは何でしょう。最近は「人財」とも言うようですが、

「人材」 才能ある人物。役に立つ人物、人才。(広辞苑

普通に使ってましたが、使い方によってはいや~な言葉だったのですね。

アベ総理が、所信表明演説で「外国人材」と言っていました。これはまた別の論点になりますが、今日本がしようとしていることは、安い賃金で働かせる外国人労働者という100年以上前の奴隷制度的感覚のにおいがしています。私は思います。偉そうにしている間に、貨幣価値といいますか労働対価は近い将来日本の方が低くなると。

 

最近思うんですよ。

入学試験も入社試験も、性別も年齢も人種も分からないように審査するどこぞのコンクールのようにすればいいのでは?と。大学の場合は、ヨーロッパやアメリカにならって、卒業を厳しくするほうが学びたい人にも学校運営にとっても利益があると思いますけど。日本の場合はまずは基本的な発想の転換が超絶必要です。受験者も学校も、雇う方も雇われる方も、意識改革が必要。 

何歳だっていいじゃないか!

履歴書が穴だらけだっていいじゃないか!

 

「企業や富裕層や優秀な人材が海外へ出て行ってしまう」ということで、税の面などで優遇する政策を為政者はしているようですが、若い人たちが日本を見限るのは、そこではないように感じます。 

「スーツ」というリーガルドラマがあります。アメリカドラマのリメイクです。

その第1話。AIビジネスで成功した若手社長ダイス・スズキ(清原翔。でっちあげられたスキャンダルで告発されそうに。それを差し止めることに成功した甲斐弁護士(織田裕二)に、ダイスはシンガポールへ旅立つときこう言っていました。

シンガポールに戻りますよ。

向こうで永住権を取るつもりです。

スキャンダルひとつで全人格否定されるような風潮には正直うんざりなんで。

スポーツ選手などで日本に帰って来ない人もいますが、それも似たようなことがあるような気がしないでもありません。邪推ですが。

もちろん海外で暮らすことは、それはそれで大変なこともたくさんあるでしょうが、とりあえず日本的な「窮屈さ」を感じないで済むのかもしれません。

学者もそうですよね。研究費が違いすぎますから。研究者への尊重もない国です。

さらに加えて、組織構造のパワハラ的不健全さも、日本離れの一因と言えましょう。

日本の「どうしようもないところ」「うんざり」 は、様々ありそうです。

 

俳優の小栗旬がハリウッドへ行く、という週刊誌報道がありました。この記事が本当なら、なんともがっかりです。いや、ハリウッドで活躍してくれるのならそれは素晴らしいことなので応援したいのですが、彼は確かアメリカの俳優協会のような組織を日本につくるというような発言をしていたと記憶しています。

 

何度も登場していただいて申し訳ないのですが。

茂木健一郎@kenichiromogi
日本の、ドラマ、映画関係者にお願いしたいのは、きちんともっとオーディションをしましょう、ということ。事務所や、既成の知名度に関係なく、ほんとうにその役にふさわしい役者さんを見つけること。有名無名に関係なく。そうでないと、作品の質が最適化されず、なれ合いは結局みんなが不幸になる。

茂木健一郎@kenichiromogi
こういうニュースの前提となっている世界観、トーンがきらいです。なぜ、アーティストの個性を尊重せずに、事務所という組織や、業界という同化圧力のかたまりの側に立った記事を書くのでしょう。のんさん、がんばれ!

のん(能年玲奈)やSMAPの事務所問題は、記憶に新しいところです。

テレビドラマも、事務所の意向が働いているとしか思えない主役、配役が目立ちます。

 

日本の俳優や歌手は、政治、社会、環境問題的発言が許されない風潮です。不自由です。なぜか非難されます。干されます。干されて国会議員になった山本太郎。その山本太郎を応援に行った沢田研二石田純一は、近頃また講演活動など復活されているようでよかったです。

 

出て行けるのなら出て行きたいと考えている20代は意外と多いようです。遊び感覚ではなく、真剣に。「窮屈」「閉塞」「圧迫」感を感じているのでしょう。この国で生き延びるには「バカ」になるしかない。本当の意味で賢い人は流出してしまうのかも。

そう考えますと、「 (バカでない)いいひと」はどんどんいなくなるような……。お金の問題じゃない(そういう人もいるでしょうが)。

 

CMといえば、上司がこまったちゃんだから転職しよう的なものが昔あったと思いますが、そのほうがまだよかったように思います。