ねことんぼプロムナード

タロット占い師のetc

「昔話」の呪縛〜正直者とずるい人

精神科医の香山リカのコラムを読んで、なるほど、と考えてしまった。 数年前のこと。不幸な出来事が続いてうつ状態になった男性が香山の診察室にやって来た。「どうしてこんなことになったのでしょう。何も悪いことはしていないのに」とその患者は問いかけて…

映画「1999年の夏休み」〜これは「トーマの心臓」だ〜深津絵里らが演ずる少年たち独特のファンタジー世界

久々に幻想的なファンタジーに閉じ込められてしまった。 「1999年の夏休み」1988年日本 監督 金子修介/脚本 岸田理生/原作 萩尾望都「トーマの心臓」 出演/宮島依里 大寶智子 中野みゆき 水原里絵(現・深津絵里) こんな映画があったのか。知らなかった…

映画「川っぺりムコリッタ」〜生と死〜遺骨と葬儀とお墓〜そして食生活

荻上直子のファンなんだけど…この映画については何も書かないかなぁ… 「川っぺりムコリッタ」2022年日本 監督・脚本・原作/荻上直子 出演/松山ケンイチ ムロツヨシ 満島ひかり 吉岡秀隆 他 「かもめ食堂(2006年)」とか「めがね(2007年)」とか、最近で…

2023年春ドラマについて〜ドラマのみで生くるものにあらず〜退屈と向き合うための文化

コロナが5類になったからなのか、ドラマの数が多すぎる。 緊急事態が出た年はドラマの撮影ができなくて大変だった。各局工夫してドラマをつくっていた。それもすでに懐かしい記憶か。 にしてもこんなにたくさんつくらなくていいのに、と思っていたら、同様…

ドラマ「日曜の夜ぐらいは…」〜幸せになっていいんだよ〜幸せになろうよ

久々に岡田作品を堪能できた。 「日曜の夜ぐらいは…」テレビ朝日 2023年4〜6月 日曜夜10時 脚本/岡田惠和 出演/清野菜名 岸井ゆきの 生見愛瑠 岡山天音 川村壱馬 和久井映見 宮本信子 生田智子 エレキコミック 他 和久井映見、宮本信子、岡山天音、生田智…

ドラマ「波よ聞いてくれ」〜ミナレは正義の味方だ〜「マーベラス・ミセス・メイゼル」のラジオパーソナリティバーション

おもしろいコメディドラマだった。 「波よ聞いてくれ」2023年4〜6月テレビ朝日 金曜夜11時15分 原作/沙村広明 脚本/古家和尚 出演/小芝風花 北村一輝 片寄涼太 平野綾 原菜乃華 小市慢太郎 他 おもしろかったとはいえ、実はちょっと疲れた。 若い年齢では…

「ペンディングトレイン」〜ネガティブ・ケイパビリティでよかったのに〜私のイチオシは大西礼芳

う〜ん、全体的に残念だった。 「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」 2023年4〜6月TBS 金曜夜10時 脚本/金子ありさ 出演/赤楚衛二 山田裕貴 上白石萌歌 井之脇海 古川琴音 大西礼芳 松雪泰子 杉本哲太 他 登場人物たちが電車に乗っていたところ、…

ドラマ「ラストマン-全盲の捜査官-」〜こんな壮大な人間ドラマの警察ドラマがあるとは…〜福山雅治と大泉洋がグッドバディ

めずらしくちょっといわゆる感動してしまった刑事ドラマだった。 (ネタバレしないように気をつけて書いていますが、純粋に感動を味わっていただきたいので、まだ観ていない方はドラマを観てから読んでください) 「ラストマン-全盲の捜査官-」TBS日曜夜9時 …

ドラマ「わたしのお嫁くん」〜威張っている人、意地悪な人がいない世界を哲学してみた

い〜いドラマだったぁ〜。 「わたしのお嫁くん」2023年4〜6月フジテレビ 水曜夜10時 原作/柴なつみ 脚本/橋本夏 出演/波瑠 高杉真宙 竹財輝之助 古川雄大 仁村紗和 前田拳太郎 中村蒼 ヒコロヒー 他 なんというか、これまでのどのドラマよりも平和でフラ…

「余命18日をどう生きるか」田村恵子著〜自分の死と向き合うということ

津村記久子著「枕元の本棚」(実業之日本社文庫)のなかで紹介されていたので、図書館で借りて読んだ。「枕元の本棚」を読むまで、この本の存在を知らなかった。 「余命18日をどう生きるか」 田村恵子著 朝日新聞出版 「君は永遠にそいつらより若い」を映画…

映画シャーロック「バスカヴィル家の犬」〜何が悪かったのか…

う〜ん、なんだろう。 「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」2022年日本 監督 西谷弘/脚本 東山狭 原作 アーサー・コナン・ドイル「バスカヴィル家の犬」 出演/ディーン・フジオカ 岩田剛典 新木優子 広末涼子 他 原作を読んだことがないので、あれや…

映画「神は見返りを求める」〜善意の罠

あまり気持ちの良い映画ではなかった。 「神は見返りを求める」2022年日本 監督・脚本/𠮷田恵輔 出演/ムロツヨシ 岸井ゆきの 他 私は岸井ゆきのという俳優のファンである。ムロツヨシも好きな役者だ。この映画を観た一番の大きな理由はそれ。 この二人の俳…

「ベニスに死す」の「世界で一番美しい少年」③〜「ベニスに死す」数十年ぶりの再読〜そしてビョルン・アンドレセンについてあれこれ勝手に思った

もうほんとうに私は、トーマス・マンの「ベニスに死す」をこうしてこのときに再読することになろうとは、思ってもみなかった。 思ってもみなかったことは、歳を取ってくるとしばしば起こるようになる。すなわち、人生の回収のためのような機会に突如として、…

「ベニスに死す」の「世界で一番美しい少年」②〜人生の選択と運命と薄命

「美人薄命」 容姿が美しく生まれついた人は、とかく幸せ薄かったり、短命であったりすること。 (コトバンク) 「ミッドサマー」にビョルン・アンドレセンが出演した、という情報が入ってきたとき「あの人、生きてたんだ」と失礼ながら私は思った。 あんな…

「ベニスに死す」の「世界で一番美しい少年」①〜ビョルン・アンドレセンの過去と現在と日本

「世界で一番美しい少年」(2021年スウェーデン) というドキュメンタリー映画を観た。 世界で一番美しい少年?それは誰だ? ビョルン・アンドレセン。「ベニスに死す」のタッジオ役だった人物。 「ベニスに死す」(1971年イタリア フランス アメリカ) は、…

映画「妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪」〜ツルツル化と欲望について考えた

なんとも単純でばかばかしいドラマ、楽しければそれでいいか的なコメディドラマかと思いきや、いやいや、これが意外と社会派ドラマだったのだ。 映画「妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪」2022年日本 監督 豊島圭介/脚本 西荻弓絵 出演/小芝風花 …

無理の話〜止められない読書と読書の限界

めまいを発症してから、読書には注意してきた。 長い時間続けて読まないこと。下を向いて読まないこと。 30分〜60分に一度は身体を動かすこと。すなわち腕を回して肩甲骨や首をほぐす。 次から次へと読まないこと。 だが、ずいぶんと具合が良くなってくると…

映画「PLAN75」〜高齢者の命の選択〜倍賞千恵子の透明感

これは、倍賞千恵子の柔らかいイメージとちがって、まったくもって恐ろしい映画だった。 「PLAN75」(2022年日本 フランス フィリピン カタール) 監督 脚本/早川千絵 出演/倍賞千恵子 磯村勇斗 他 この映画の宣伝だったと思うのだが、倍賞千恵子が歌をう…

栗山監督の確信〜できるかなぁ、できないかなぁ、ではない〜覚悟を決める〜物語の結末が見える

スポーツ選手というのは、勝負師だ。 卓球の水谷隼が、あちこちのテレビで話しているのを見ていると、この人ほんとに勝負師なんだな、と感じることがしばしばある。しかもじゃんけんに強いという。相手が何を出すかだいたい予想できるというのだ。あるテレビ…

本当にやりたかったことを思い出そう!「スタンドUPスタート」視聴率低かったけど面白かった!〜「罠の戦争」納得の最終話〜占い師サリーが語る2023冬ドラマ終③

「罠の戦争」月曜夜10時フジテレビ(カンテレ) 脚本/後藤法子 出演/草彅剛 井川遥 宮澤エマ他 なるほど、そういう終わり方ですか。 途中からその線もありかな、とは思って観てはいましたが。 すなわち、鷲巣(草彅剛)の妻である可南子(井川遥)が国会議…

占い師サリーが語る2023冬ドラマ終②〜「舞いあがれ」はいったい何だったんだろう…

「舞いあがれ!」NHK連続テレビ小説 出演/福原遥 赤楚衛二 永作博美 高畑淳子 他 これは、どう評したものか……。 ひと言で言うと、つまらなかった。途中から視聴をやめようかとすら思った。 朝ドラは好きなドラマ枠ではあるが、それでもほぼ最初から観なかっ…

WBCという「運命の輪」を回した監督と選手たち〜ヌートバーの夢語りプレリュードから大谷vsトラウトのフィナーレへ

「運命」というものがあって私たちの人生の全てが決まっているとしたら……ならば、私たちが日々為(成す)ことは無意味なんだろうかという疑問が、おそらく大多数の人々の心に湧くだろう。 これは何という言葉で表現したらよいのか。―2023WBC(ワールド・ベー…

占い師サリーが語る2023年冬ドラマ終①〜「女神の教室」「忍者に結婚は難しい」「100万回言えばよかった」「リエゾン」「Get Ready」〜

「女神(テミス)の教室〜リーガル青春白書〜」月曜夜9時フジテレビ 出演/北川景子 山田裕貴 及川光博他 終わってみれば、まあまあ面白いドラマだった、と言えるかな。 ドラマスタート時点でも書いたが、前半は学生たちの雰囲気が妙に鬱陶しかった。中盤か…

本棚をつくりたい〜再び「お片づけ&処分」

本のいっぱいある壁が憧れだ。 そういう部屋、しかも綺麗に整った部屋を死ぬまでには手に入れたいとずっと思ってきたが、人生の残り時間が短くなるに連れて、次第にその希望実現の可能性が少なくなってきた。憧れの部屋をつくるためには、おそらく引っ越しが…

三國万里子著「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」〜理想の「おじさん」〜自分自身の人生を編んでいく〜「いつ死んでもいい」のダブルミーニング

著者の繊細さに心が安らぐ本。 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」 三國万里子著/新潮社 著者のことを知らなかった。この本にたどり着いた経緯も覚えていない。たぶん誰かがネットで紹介したのだと思う。 著者は編み物作家。だから「編めば編…

「もうレシピ本はいらない」〜自由を獲得した著者〜タロットカードは「隠者」

心が軽くなった一冊。そして味噌汁をつくろう。 「もうレシピ本はいらない」 稲垣えみ子著/マガジンハウス 稲垣えみ子(1965年生)は朝日新聞の記者だった。2016年に朝日新聞を退社してフリーになった。書籍なども多数あり、なかなかの人気作家だ。 私はTBS…

高齢者集団自決?〜映画の効用〜心のレベルアップを試されている

高齢化社会の問題解決のために、高齢者の集団自決を提案する成田某にも驚いたが、それを受けて、おそらく中学生と思われる生徒が「成田さんは老人は自害しろとか言ってる。(ぼくも)老人は退散したほうがいいと思う。老人が自動的にいなくなるシステムをつ…

「匂い」の不思議〜コロナ後遺症の嗅覚障害〜認知症〜匂い(臭い)の順番

コロナ感染の体験談を、先月(2023年1月)こちらで書いた。 感染途中から現れる症状と後遺症である嗅覚と味覚障害について、私自身が体感した経緯をそこで書き記した。 特別に観察しようとしていたわけではないが、日々の生活のことなので、いやでも意識せず…

精神科医と占い師〜誰が悩みに答える?

「鬱屈精神科医、占いにすがる」という本を読んでいたら、たいへん興味深いシーンが出てきた。 筆者の春日武彦は精神科医なのだが、劣等感、敗北感、無力感に苛まれてどうしようもないので、占い師のもとを訪れることにした。 興味深いシーンは、最初にみて…

命の選択〜才能か命か〜「Get Ready!」〜美村里江好演

この回はたいへん意義深い物語だった。 「Get Ready!」日曜夜9時TBS 第4話 出演/妻夫木聡 藤原竜也 松下奈緒 ゲスト/美村里江 天才彫刻家の古賀洋子(美村里江)は、脳腫瘍を患っている。大学病院では、腫瘍摘出は不可能で余命は半年と告げられる。 仮面ド…