思っていたのと違った。
「おカネの切れ目が恋のはじまり」
シナリオブック 角川書店
脚本/大島里美
三浦春馬の死によって、全8話だったドラマが4話で最終回となった。
3話まで収録済みだったということで、4話には三浦演じる慶太は思い出のシーンでのみの登場だった。
1話目を観たとき、お金にまつわる現代的視点、社会性があり、タイトルから想像するよりも中身のあるドラマのようだと私のなかでは評価が高かった。
欲望の資本主義の時代に、さらにCOVID19の感染拡大によるロックダウンで人々が動かず、経済も動かないなかで見えてきたものがあり、生活や人生、働き方、仕事について否が応でも考えざるを得ない現況で、お金という視座から物事を観ていくストーリーは、まさに時事ネタであると思い、最後まで観たかったなぁと、ドラマの中断をひどく残念に思ったのだった。
ゆえに全4話についてこちらで書いたとき、お金にまつわる深い内容でさらに物語が展開してゆくのだろうと、願望的空想すらした。
そして、シナリオブックが出るというので、これはぜひとも読まねば、どんなことが書いてあるのか、例えばひかりと父親の関係はどのように描かれているのだろう、などと好都合な期待を抱きながらページを捲った。
私はあの第4話は、本当は最終話だったのではないかと予想した。2020年10月6日の放送では、玲子は純(ガッキー)と父親に会いに行ったが、本当は慶太と行くはずだったのだろうということは視聴者の誰もが思っただろうし、実際シナリオブックでも玲子の横にいるのは慶太だった。これは当たり前な正解だった。
だが、もうひとつの私の想像は見事に外れた。これは本当に第4話だった。
え〜そうなの?ちょっと拍子抜け。
けれども、シナリオを最後まで読むと、第4話で明かされる玲子の父親の真相以上に、実は重大な事件がおもちゃ会社モンキーパスには潜んでいたので、これは至極当然の流れだ。が、1話から3話までには、その重大事件の明確な伏線はなかったように思う。
5話から第2章というか後半がはじまる形式で、民法テレビ局のつくるドラマ、すなわちハラハラドキドキ感を盛るストーリーとしては正当な姿なのだろう。
社会性があったのは、第1話、第2話まで(第3話も入れていいいかな)。
第4話からは、本気で玲子と慶太+早乙女+純の、ひたすら恋愛劇だった。そこにモンキーパスの秘密、大事件が、少しずつ顔を覗かせてくる。
玲子の父と慶太の祖父と父の犯した罪。結局のところ言い方は味気ないかもしれないが、両家は似たもの同士だったということになる。
そして、言ってみれば、私が称賛した1話から3話までは、玲子を取り巻く3人の男たちの紹介だった、という位置づけになってしまうようだ。
恋愛ドラマとはいえ(基本、私はただの恋愛ドラマが苦手なのである)、玲子のきっぱりとしてぶれのない態度は好感がもてた。
いずれにせよ「恋のはじまり」を描きつつも、1話から3話までの現代社会を映し出す哲学的テイストを展開していくこともできたような気がする。いや、まこと身勝手な素人感想であり、それは脚本家の意図とは全く違うことなのだということは十分に分かっていてあえて言っている。
ただ、放送されるはずだった全話をシナリオブックで読んだいち視聴者のひとつの感想として言わせていただくならば、「こういう話だったのか……」というため息混じりのつぶやきが出てしまうのは否めない。
純がお金に疲れてしまう第1話
「私たちは日々、お金に振り回されている」と、
これまで投資してきた男から離れられない第2話のまりあのエピソード
「その恋、投資する価値アリですか?」は、
私のなかのドラマ傑作集に留めておきたいと思う。
そういう類いのドラマは他にもある。
第1話(ゲスト/大原櫻子)
「心美人お迎えに参りました!あなたの命はあと3日 最後は僕が傍にいる」
が傑作だった(だけ、と言ってもいい)。
「フラジャイル(2016年フジテレビ 主演/長瀬智也)」
第5話(ゲスト/安田章大)
「余命1年の宣告通知 難病の青年の夢よ叶え 命を諦めない診断」
がとても良い話だった。
「おカネの切れ目が恋のはじまり」、未撮影のエピソードも、映像で観ればまた雰囲気も変わるのかもしれない。
最近騒動に巻き込まれ続きの北村匠海も「良き」でした。
余談だが、北村匠海は「隣の家族は青く見える」(2018年フジテレビ 主演/深田恭子)でも、いい役をもらっていて、ナイスなセリフがあった。